江戸高名会亭尽 雑司ケ谷之図
狂句合
茗荷の すひ口に 野暮からぬ
田舎味噌 錦糸
※ 「すひ口」は、吸い口。汁物で、お椀をあけたときに香りのアクセントになるもの。柚子、木の芽、葱、茗荷、すだち、粉山椒、生姜など。
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絵を詳しくみていくと … 👀
お母さんに手をつながれた子供が、肩におもちゃを担いでいます。これは「すすきみみずく」という、すすきの穂で作ったみみずくの人形で、雑司ヶ谷 鬼子母神 を 参詣したお土産 です。
こちらの男の子は脇差をしています。手をひく女性が持っているのは、一般的な「すすきみみずく」とは少し違って、着物を着ています。
また、手前の女性は刀を肩にかけていますが、さすがに本物とは思われないので、男の子のおもちゃの本差でしょうか。
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この絵には、ふたつの看板が描かれています。
ひとつは「御料理 めうがや」
茗荷屋沖右衛門が雑司ヶ谷で営んでいた御用宿です。茗荷をかたどった紋がお洒落ですね。
もうひとつは「仙女香 坂本氏」。
これは、当時評判の白粉「仙女香」の看板で、坂本氏が販売していました。
『江戸買物独案内』の紹介文を読んでみると …
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御かほの妙薬 美艶 仙女香 一包 四十八銅
此 仙女香は、常に用て、いろを白くし、きめをこまかにす。はたけ、そばかすに吉。できものの跡をよく治す。其外、功能多し。くわしくは、包紙に記す。
右之薬十包以上御求ら○ら御方えは、江戸三芝居紋者認候自筆之扇一本○○上仕候。趣は三芝居、座頭御弘め御披露申上候義に御座候。
京橋南伝馬町三丁目 いなり新道 いなり社東となり
本家 坂本氏製
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仙女香を十包以上買うと、人気役者のサイン入りの扇がもらえるそうです。
もしかすると、振袖姿の女性が手にする扇は、サイン入りなのかもしれませんね。
筆者注 ○は解読できなかった文字を意味しています。
新しく解読できた文字や誤字・誤読に気づいたときは適宜更新します。詳しくは「自己紹介/免責事項」をお読みください。📖