好みのコーヒー豆を見つけよう! その8
前回の記事まで、コーヒー豆の精製方法のうち、代表的なもの(ウォッシュド、ナチュラル、ハニーとスマトラ式)を取り上げました。
その中で、コーヒー豆の精製には実は「発酵」が大切な役割を担っていて、どのような発酵をさせるかが、コーヒーの風味に大きな影響を与える、ということを書いてきました。
つまり、コーヒーは「発酵食品」で、精製段階の様子を見るとチーズの製法に近いものだということですね。
大きく分ければ
・ウォッシュド … 乳酸菌
・ナチュラル … 酵素・酵母・カビ
・ハニー … 乳酸菌・酵素・酵母
・スマトラ式 … 乳酸菌・カビ
という感じで、精製方法によって発酵の仕方が異なるのです。
さて、今回は精製の最終回。最もマニアックな所に行きたいと思います。
まずは、私が最近一番ハマっている
ワイニープロセス
についてです。
行きつけのコーヒーショップのオーナーが色々な地域のワイニーを集めてて、飲み比べているうちにすっかり虜になってしまいました。
実は、ワイニーの精製方法自体はナチュラルと同じです。
コーヒーチェリーをそのまま乾燥する
↓
寝かせて熟成
↓
脱殻機にかける
という工程をとります。
また、果皮・果肉・ミューシレージがずっと残った状態なので、独特の甘み風味が出やすいという特性もナチュラルと同じです。
発酵の主体は酵素・酵母・カビです。
さて、では普通のナチュラルと何が異なるのでしょうか。
それは、収穫する果実(コーヒーチェリー)にあります。
ワイニー最大の特徴は、「完熟したコーヒーチェリーのみを使う」という点です。
コーヒーチェリーの成熟過程を見ると、
このように緑から赤に変化していきます。
さらに完熟すると、黒みがかってきます。
この完熟のタイミングを狙って収穫したものが、ワイニーのためのコーヒーチェリーになります。
実っているチェリーの中でも完熟したもののみをピンポイントで収穫しているわけですから、それだけでも熟練の職人技が必要です。
さて、完熟している…ということなのですが、果実は収穫した後も熟していきます(追熟)。
(例えばバナナは、まだ青いうちに収穫して、輸送過程で追熟するものもあります)
熟しすぎれば、果実が傷む(そして腐敗する)リスクも上がります。
ナチュラルは果実のまま天日乾燥ですから、乾燥に比較的時間がかかります。
追熟で傷み(腐敗し)やすい果実を、時間をかけて天日乾燥する
という高難易度のプロセスを行うのがワイニーなのです。
この工程も、熟練の職人によるきめ細かい管理が必須です。
難易度が高いため一部の産地でのみ取り入れられている方法で、流通量もまだまだ少ない状況です。
では、その味はどんなものか?というと…
(あくまでも個人的な見解です)
・最初に感じる、非常に鮮烈な、フルーティさ(香りと酸味)
・口の中で転がすと現れる、赤ワインのような強いボディ
・最後に残る、ドライフルーツのように濃厚な、しかし切れの良い甘み
しかも、香味は産地によって(ナチュラル以上に)異なるため、産地ごとの飲み比べも面白いのです。
…ちょっと褒めすぎでしょうか。
欠点を挙げるとすれば、多く流通しているコーヒーと根本的に香味の傾向が違うので、「これはコーヒーじゃない!」と思う方もいらっしゃるかも。
「コーヒー」というより、「ワイニー」という飲み物だと思ってトライしてみることをお勧めします💦
ちなみに、ワイニーの特徴である酸味を感じやすいのは浅めの焙煎です。
できれば浅煎りを味わっていただくと良いかな?と思います。
番外編
動物が関わるもの
とても高価で希少な豆なのですが、動物が関わっているものものあります。
例としては
・コピルアク
・ジャクーバード
などです。
例えばコピルアク。
2006年公開の「かもめ食堂」
をご覧になった方は、聞いたことがある名前ではないかと…。
コピルアクは、ジャコウネコ
が食べたコーヒーチェリーから、未消化のコーヒー豆を回収したもの…です。
ん?どうやって回収したの?と思うのですが…。
お察しの通り、「糞」からです。
…え?糞??衛生的に大丈夫なの?という方、ご安心ください!
もちろん、出荷時には完璧に洗浄してありますし、焙煎時に高温を10分以上加えますので殺菌もバッチリです!!
…そういう問題ではないですか??💦
ちなみに、ジャクーバードもジャク―(キジの仲間)
から、同様のプロセスを経て得られたものです。
ところで、なぜこのコーヒーが美味しい、と言われるのか。
それは、
・動物は、完熟した果実のみを狙って食べる
からです。
その点を見れば、ワイニープロセスと話は同じですね。
さらに付け加えるなら、体内で独特の発酵をするから、動物の種類ごとに独特の風味が…という点もありますが、まあそこは深く追求するのはやめましょう💦
いずれにしても、きちんとしたプロセスを経たコピルアクやジャクーバードは、やはりワイニーのような独特の香味があり、とても美味しいのです。
価格は高価で、100gで5000円オーバー、というケースもあります。
また、見かけることもとても少ないですが、チャレンジャーの方は是非!
ところで、「きちんとしたプロセスを経た」という意味ですが、最近コピルアクなどの中でも妙に安価なものが出回っています。
これは、ジャコウネコなどに、無理やり大量のコーヒーチェリーを食べさせて作ったコピルアクです。
品質的な点で期待できない部分はもちろん(動物が完熟豆を選んで食べているわけではない)、何より動物虐待です。
そんなプロセスを経て作られたコーヒーを飲むというのはどうかと思いますので、買わないことをお勧めします。
安価とはいえ、ワイニーを購入して十分お釣りが来る価格ですので、それなら是非ワイニーを買いましょう!
ちなみに私は、似たような理由から、できるだけフェアトレードや、農園から直接買い付けているものを買うようにしています。
誰かの犠牲の上にあぐらをかいてコーヒーを味わうのは、何か違う気がするのです。
実際、力が弱いコーヒー農家は、非常に安価で買い叩かれて生活に困窮するケースも少なくありません。
正当な対価を払い、生産者も消費者も幸せになることが、あるべき姿だと思っています。
この辺りのお話はまたいずれ…。
今回はちょっと変わり種のコーヒーをご紹介しました。
「コーヒーらしくないコーヒー」を味わいたい方、是非お試しください!
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
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