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海嘯(著:田中芳樹)【天地に読書紹介あり、古の道、顔色を照らす(途中、ぜんぶ飛ばすな!)】

中国史及び人類史最大のイベント。
モンゴル帝国による世界文明の崩壊イベントがやってまいりました。

南宋がついにモンゴルに追いつめられる中、
文天祥と呼ばれる文人が、最後に気骨を魅せます。

モンゴル皇帝クビライは文天祥をどうにかして、
帰順させたいのですが、彼は名節を守って餓死する構えです。
いかんともしがたい。

文天祥と言えば、国が滅びて祖国に殉じた人。
のイメージです。
日本の軍人も亡国の際には、文天祥の名前を出して自決していました。
この辺は中国人も反感を抱かないでしょう。
やはり同じアジアの国なので、教養が同じなのです。

南宋最後の戦いである崖山の戦いは、
この時より100年前の壇ノ浦の戦いを、
規模を1000倍にして焼き直した戦いです。

もちろん国に殉じた者ばかりではなく、
悪く言えば裏切り者、
良く言えば時勢に従った者たちも出てくる。
そうした人たちの目線もあるから、
ドラマは冴える。

***

私としては、
同氏の他の中国歴史小説に比べたら、
いまひとつ筆致は落ちると思った。

まあでもそれは、歴史というよりは、
古典文学とかにより近づけているからだと思う。

戦記として読むには物足りない。
アジアの古典を知る。
これが本書の評価ではないか。

大国が滅亡していく激動の時代。
私たちの極身近でも同じことが繰り返されていると思うと、
いつの時代も、この景色は変わらないのだと思う。

朝焼けを語るものは少ないのに、
夕闇を語る者たちの、なんと多いことか。
これが世界史だ。

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