深淵のガランス(著:北森鴻)【この深みがかった独特の読書紹介が赤い】
発掘小説。
捨てられる前に読んでおく作戦に引っかかった作品。
美術小説なんて、正直、読んだことがなかったけど。
ギャラリーフェイクや、
ブルーピリオドを見ればわかるように、
ネタの宝庫であり、ドラマはいくらでも作れる。
思うに、子どものころは美術をなめていた。
化石とか機械とか、
そういうものには、
なんらかの隠れた神の秩序が埋め込まれているが、
美術は人間が美意識で作ったもの。
そこに世界のルールは入り込んでいない。
だから優先度は低かったわけだが、
最近になって、美術あなどりがたし。
と思うようになった。
考えてみれば、人間の美意識も、想像力も、
極限まで加速された進化生物学の極致に存在する。
ことさら優先度を下げる意味なんてなかった。
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さて今作においては、村山槐多だったかな?
(なんとなくそう覚えているけど、違ってるかも)
ガランスと呼ばれる、深みのある赤を多用する画家。
そして副業で隠れ天才絵画修復師をやっている主人公。
この隠れ副業ってのが、集英社感(文春文庫なんじゃけど?)があるよね。
無名の人物っぽい人が実は最強だったパターン。
いいドラマしてますね。
そして不可能な依頼を受けてしまうまでが鉄板焼きそば。
なんでも、画家が貧乏だったため、
売れなかった作品の上に別の作品を描いてしまったのだ。
しかし塗りつぶされた下の絵が観たい。
どうしても観たい。
しかし、上の絵を剥がせばいいのだが、
そうしたら上の絵が無くなってしまう。
上の絵は上の絵で好きなんだよ。
このジレンマよ。
上の絵を剥がさずに、下の絵を再現してくれ。
なんという無茶ブリコ。
しかし問題ない。
集英社系主人公の手にかかれば(文春なんだってば!)
と、そういう話。
短編集なので、それ以外の話も何本か入ってる。
***
取っておけばよかった。
他人の本なので、捨てるの止めなかったけど、
こっそり保存してたらよかもに。
↑ 以前のバージョン。
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