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母なる夜 猫のゆりかご ガラパゴスの箱舟(著:カートヴォネガットJr)【読書紹介とやらは毎日書くのかね。それとも思いついた時だけ?「時間がとれれば毎日ですね」やはりそうか。私も日課にしないとダメな派だ(とアイヒマンは語った)】

超有名系英米作家カートヴォネガットJrのしっとり終末系の作品群です。
今回は三冊いっぺんにやります。

私がいちばん気に入ったのは、母なる夜

アメリカ人でありながらナチスのメンバーだった男、
ハワードWキャンベルJrの話、実は連合国のスパイだった。
しかし、戦後イスラエルによって捕まり、アイヒマンと同じように刑死する際に、なんとついにそのことを喋らなかった。
結末までは書いていませんけど、
彼にとっては、この世界はもう生きるに値しなかった。
そういうしっとり系です。
そしてこの作者さん特有の、皮肉たっぷりの文体もお馴染みです。
現実そのものがユーモラスな悪夢とでも言わんばかりのシニカリズム。
これは中毒性がありますよ。
私なんかはヴォネガット依存症で久里浜の病院にぶち込まれて、昔迷惑をかけた人に手紙を書きましょう療法で、とあるアイドルを知人という設定にして手紙送りましたもん。
すいません嘘すで。

まあ母なる夜では、終末はナチスドイツと主人公だけのものですが。

次に紹介する猫のゆりかごは、実際に世界が滅亡する話です。

水の9番目の同位体、アイスナイン。
聞いたことがおありでしょうか?
アイスナインは、融点が摂氏60度だっけ。
そしてこれがひとかけらでもあると、周囲の水を同じアイスナインに替えてしまいます。こっちの方が安定性は高いみたい。
とあるマッドサイエンティストが作ってしまいました。
結果、地球はガスコンロで温めないと解けない氷で覆いつくされるというわけ。
アイスナインを一粒でも水域に、
なかんづく海にでも落としてしまえばおしまいです。
さあ、ここまで来たからには、落ちるんですね。これが。

まあこれは単なる道具立てで、本筋は世界への失望をリリカルに謳い上げたところにあります。
ヴォネガットにおいては失望とか絶望はアートです。

最後の鳥を飾る鳥。ラストバード。じゃなくてガラパゴスの箱舟において。
似たような流れで世界が滅亡しますが、今作においては、人類はある形で生き残ります。

ガラパゴスヒトニニタニコゲアシカヒト、というガラパゴス諸島にしかいない希少種という形で。愚かと言えば変わらず愚かですが。
あ、和名は私が考えました。
そう。世界に失望したとて希望はまだ残されていた。
希望はいつだって残されている。
それをこれでもか、と言わんばかりの皮肉さたっぷりの文体で書くのです。

そして最後に引用を。
ベトナム戦争で戦死した高校生の書いたカツオドリの求愛ダンスの詩、という文学内文学。

もちろん君が大好き。
だから子どもを作ろう。
生まれた子どもも僕らにそっくり。
親と同じことを言う。

「もちろん君が大好き。
だから子どもを作ろう。
生まれた子どもも僕らにそっくり。
親と同じことを言う」

「「もちろん君が大好き。
だから子どもを作ろう。
生まれた子どもも僕らにそっくり。
親と同じことを言う」」

以下繰り返し。

作中内文学

失望することもまた、希望の一種だったのだ。
いいね。

あ、ちな毎日は書いてませんので。

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