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あふれる思いに応えるように

夫の在宅期間がようやく終わり、家の中はシーンとする時間が増えた。そうだった、家の中ってこんなに静かな時間があったなぁと思い出した。

私は一人っ子で両親は共働き。核家族なので一人で夜遅くまで留守番をすることもあり、家の中がシーンとしていることは当たり前だと思っていた。結婚しても夫は12時間以上は仕事をしているため、家に居る時間が少ない。私が一人で過ごす時間は、大人になっても変わらなくて、静かな空間にいることに慣れた私にとって、子どもが生まれたことで巻き起こる日々の騒音のすさまじさにはビックリした。

小学生になった子どもたちは学校へ行く時間もあるため、今では聞こえてくるのが犬のイビキぐらい。とても静かだ。ようやくこんな静かな時間が戻ってきたんだな、しかしなんだか淋しいな・・という思いもある。しかしこれが夕方以降は子どもたちの「ねえママ!!」が連呼されて、淋しいと思った気持ちはどこへやら。

これが平和で幸せということなのだろうな、と思っている。一人で過ごす時間はどうしたって必要だとは思うけれど、一人の時間がありすぎるのもまた問題で、適度に一人、適度にみんなと、といった具合に落ち着けば、きっと精神も安定できるのだろうなと思う。難しい日もあるけどさ。

読んでいたのは『ブラック・ジャック創作秘話』

手塚治虫さんのマンガは大好きなのだけど、全部そろえようと思ったら結構な金額が必要で、私が持っているのは『ブラック・ジャック』の文庫版だけ。その『ブラック・ジャック』の創作の話ってどんなだろう?と思いながら本を読んでみたのだけど、思っている以上に手塚治虫さんが変人・・もとい、天才だと言われる意味が分かったような気がした。

月に何本もの締め切りを抱えて、アニメも制作して、といった過密スケジュールが何度も登場するのだけど、それがどれほど大変なことなのかが私には分からない。ただ、きちんと布団で睡眠をとることもせず、移動中でも原稿を描き続けたという手塚さんの状況を思うに、これはただ事じゃないのだろうなとは思った。

原稿を落とせば迷惑をかける人たちも増える。だからといって、手塚さんがイヤイヤ原稿を描いていたようにも思えず、やりたくてたまらない、けれど時間が無い!という状況にあるようで、時間は誰もが平等に与えられているとはいえ、手塚さんにとって、一日に24時間ではきっと足りなかったのだろうなと思いをはせた。

マンガを描きたくて描きたくてたまらない。そんな思いが『ブラック・ジャック創作秘話』からもあふれていて、そんな手塚さんの思いに触れたような気がして、私もまた手塚さんの本をたくさん読みたいと思ってしまった。とりあえず家にある『ブラック・ジャック』の文庫をもう一度、読み返してみよう。

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