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友人と読書会をするためのnote 「第一回:友情 - 武者小路実篤著」_No.2

学生来の友人Aちゃんと読書会をするためのメモ用note記事です。

友人と読書会をするためのnote 「第一回:友情 - 武者小路実篤著」_No.1 では作中の好きな表現をピックアップしましたのでこちらもよければどうぞ!

*本noteにはあらすじ紹介などありませんので、本を手元に読んでいってください。よければ貴方の感想もコメントでシェアしてくれると嬉しいです^ ^

「友情」は名作だ!

公然の事実を改めて叫ぶ必要もないかとは思いますが、どうか言わせてください……
武者小路実篤の「友情」は日本国民必読の名作です!!

さらっと読んでも”若者たちの人間ドラマ”として非常に面白く、読み込んでみても「友情」について、それから野島という一人の人間の成長について深く考えさせられる傑作です。

本文も踏まえつつ、感想を書き連ねていこうと思います。

野島と大宮の「友情」

大宮は殊に彼の作物に厚意を見せ、世間が悪口を云う時は、淋しがる彼を慰めることに骨を折った。野島はそのことを思うと涙ぐみたい気さえした。(17頁13〜15行)

二人はお互いに慰め合い、鼓舞しあった。勿論、ある時は、お互いに手きびしく批評しあって腹を立てあったこともあったが、すぐなおって、返って相手の云うことが尤もだと気がついてあとで心のうちで感謝し、なお友情のますのを覚えた。
(18頁4〜6行)

「友情」武者小路実篤

割と冒頭の方で、野島と大宮の友情について書かれています。
夢を追いかける若者として、励まし合い、慰め合い、時に批判し合いながら、共に歩んでいける関係。

こうした友情のかたちは、漫画でも多くでてきますよね。
e.g. ヒカルの碁のヒカルとアキラ

特に世間から理解の薄い野島にとって、大宮の存在は大きな糧となっているわけです。
そんなこといってくれるのは君だけだよ」と思っていたことでしょう。
嫌なことがあっても、腐り切らず、努力することをよしと出来たのは、大宮からの尊敬の念の為すところが大きかったと思います。

勿論、大宮は単に野島を喜ばせるためだけに彼を誉めていたわけではありません。野島を心から評価しています。
野島の方が大宮より年下ではありますが、大宮は野島に影響を受けることが多かったわけです。
二人は人生について、神について、恋について、あらゆることを語ります。

野島は大宮を感化し、大宮は野島を慰めるのです。

この二人の関係を育み、そして最終的に破壊の原因ともなったのが、杉子という女性の存在でしたね。

厚い友情も恋の前には撃つ手なしか?

読み進めるごとに、読者は杉子と大宮が結ばれる結末に勘付いていきます。
野島も同様に感じてはいるものの、友への”無根拠”な信頼を持ち続けていました。

道徳的潔癖では大宮には敵わないと思った。

114頁16行

現に、大宮自身も野島のこうした期待に応えようと、杉子のことを好きにならないよう、また好きになっても結ばれることのないように努めます。

しかし結果として大宮と杉子は結ばれ、野島は大失恋をしました。
失恋が明らかになった方法も、面白かったですね。

野島の恋は、大宮によって完膚なきまでに粉砕されました。

そして野島は、大宮からもらったベートーヴェンのマスクを叩き割り、二人の友情が崩壊したのを認めるのです。

恋心も友情には負ける?
二人の友情は所詮それだけのものだったのでしょうか?

結果として恋は友情関係を壊しました。
けれど、二人の友情は”所詮”と言い捨てられるほどの貧相なものではありません。

それどころか、友情として最高の実りをもたらしたと思います。

"友情の崩壊"の裏でもたらされた実り

ここで注目したいのは、野島の夢に対する姿勢です。
脚本家の夢はあるものの、「私かに任じる」程度、親友の言葉に慰められることで満足していたとも言えます。

しかし、この失恋で、野島は覚醒しました。

154頁、155頁のラストを是非読み直してみてください。

大宮の「残酷な荒療治」は効果的面、野島は脚本家としての夢に邁進する決意を決めました。

これこそ、「友情」ではないでしょうか。

野島の恋に対する考えにも、この「友情」のあり方が現れています。

女の運命を第一に気にするのが恋で、自分の欲望を満たそうとばかりするのが肉慾だ。

37頁5〜6行

大宮は野島の運命を第一に気にしました。
それは脚本家として、人間として大成する運命です。

野島もその大宮の「友情」を感じ取っていました。

希望と憐憫のラスト

この小説のラストでは、野島がきっと立派な脚本家になってくれること、失恋を経てひとまわり大きい人間になっていくことに希望を持てました。

けれど同時に、野島へ同情せずにはいられなかったと思います。

人生で一番の恋を失い、人生で最良の友を失い、野島は本当に一人になってしまいました。
彼のこれから先の未来に希望があると言えども、本人にとっては辛く寂しい時間が続くのです。

神よ助け給え

これは野島の静かなる叫び声でした。

どうか、この憐れな男に幸多からんことを。

友情は永遠でなくてもいい、本当ならば結実する

武者小路実篤の「友情」は、私たちに友情とは何かの一つの形を見せてくれています。

友情とは、永遠でなくてもいいのです。

何か事件があれば終わってしまうこともあり得るわけです。

たとえ友情が終わっても、その”想い”が本当であれば、お互いにいい影響があるはずです。

親友の運命にとって一番の選択ができるかどうか、どうか貴方も考えてみてください。

そういう友達は、なかなか出来るものではないかもしれません。

野島と大宮の「友情」は、見事に結実していたのです。

終わり

今回は武者小路実篤の「友情」を課題図書とし、読書会用のメモを書き起こしました。
次回はAちゃんの選書ですが、何がくるのか楽しみです。

また次回もよろしくお願いします^ ^ 


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