マガジンのカバー画像

映画めも。

335
観た映画のはなし。 ネタバレするぞー!
運営しているクリエイター

2018年12月の記事一覧

ローマ ROMA/派手さはないけれど滋味深い逸品

ローマ ROMA/派手さはないけれど滋味深い逸品



Netflixで公開されたアルフォンソ・キュアロン監督の新作ROMAを観た。メキシコを舞台にするのは「天国の口、終わりの楽園」以来。メキシコシティにあるローマという場所が舞台で、1970年の8月頃から翌年の8月頃までの1年間が描かれている。丁度ルイス・エチェベリア・アルバレス政権へと移る最中の話でもあり、途中デモや、主人公クレオの地元が政府によって開発の手が入る事が会話からうかがえる。68年に

もっとみる
エヴォリューション Evolution/

エヴォリューション Evolution/



エヴォリューション

フランスの作家ミシェル・ウェルベックの短編にランサローテという作品がある(池澤夏樹監修の世界文学全集短編コレクションIIに収録)。主人公がヴァカンスのため旅行代理店で勧められるがまま選んだシチリア諸島のランサローテに旅行する話。火山の島で溶岩出てきた岩肌など、観光地というにはあまり魅力的には感じられない風景が主人公の視点から描かれている。特に見るべき場所もなく、国立公園に

もっとみる
ヘレディタリー/継承 Hereditary 不穏な家族ドラマ

ヘレディタリー/継承 Hereditary 不穏な家族ドラマ



A24製作によるホラー、アリ・アスター監督ヘレディタリー/継承を観てきた。この映画はA24の中でも最大のヒット作ということ。

驚かせるような演出は無く、じわりじわりとイヤーな雰囲気が少しずつ画面に入り込んでくる。俳優の演技、特に母親がどんどん狂っていく様はキューブリックのシャイニングを想起させた。何かが家の中にいるという気配が終始感じられ、湿り気のないジャパニーズホラーといった感じもあった。

もっとみる
気狂いピエロ Pierrot le fou/アンチアメリカの先に垣間見えるアメリカの憧れ

気狂いピエロ Pierrot le fou/アンチアメリカの先に垣間見えるアメリカの憧れ



今年のカンヌ国際映画祭のヴィジュアルは、気狂いピエロのジャンポール・ベルモントとアンナ・カリーナのキスシーンが用いられていたのが印象的だった。

アンナ・カリーナ本人も来日し、ライブを行ったり今尚健在であり、さらにゴダールの新作も控えている。ヌーヴェルヴァーグから半世紀が過ぎてもなお、影響は滅びず残り続けるほど映画界に大きな足跡を残しているのがよくわかる。

ゴダールは2014年の「さらば、愛

もっとみる
地球に落ちて来た男 The man who felt to earth/ニコラス・ローグとジム・オルークとデヴィッド・ボウイについて

地球に落ちて来た男 The man who felt to earth/ニコラス・ローグとジム・オルークとデヴィッド・ボウイについて



ニコラス・ローグ11月23日にイギリスの映画監督ニコラス・ローグが亡くなった。大ファンという訳ではないのだけれど、ニコラス・ローグの映画で僕が観たのはミック・ジャガー主演のパフォーマンス、アート・ガーファンクル主演のジェラシー(Bad Timing)、オーストラリアの自然が舞台のウォークアバウト、そしてデヴィッド・ボウイ主演の地球に落ちて来た男の四本。あとは撮影で参加したトリュフォーのSF作品

もっとみる