中国企業の不正問題と中国債券投資のリスク
妙佛DeepMaxさんが中国企業の不正や粉飾決算について解説する動画がありました。近年、中国企業でアメリカの株式市場に上場している会社でも不正会計が行われており、世界の投資家が損失を被るケースが増えています。
しかし、これは中国企業だけの問題ではありません。そうした会社を上場させたアメリカの取引所や、上場のお手伝いをしているアメリカの投資銀行、会計監査を担当している監査法人にも責任があります。
債券投資の観点
私は投資銀行で上場のお手伝いをする業務をしているわけではありませんし、取引所の関係者でもありませんが、海外投資家の中国の債券投資は拡大が続いているため、債券投資の分野ではこの問題をどう捉えるべきか説明したいと思います。
法律の影響
中国企業の不正会計はここ数年で多く発生しており、アメリカで上場廃止になった会社もあります。
また、中国政府の支配下にある企業を排除することも目的として、2020年に外国企業説明責任法という法律が制定されました。この法律により、アメリカの市場に上場する会社は他の国の政府の管理下にないことを証明し、米国公開会社監督委員会の監査を受けなければならなくなりました。この法律ができてから、自ら上場廃止にした中国企業もあります。
トランプ政権の時に制定されたこの法律により、現在は中国の企業がアメリカの市場に上場するのに、アメリカの取引所や投資銀行も非常に慎重になっており、上場する中国の企業は減少しています。アメリカ社会も問題意識を持って対応してきた経緯があります。
債券投資家の動向
一方で、債券投資家の世界では、中国の債券投資が最近もますます拡大しています。
中国本土の債券の海外投資家の保有額は、2024年8月末時点で4兆5,200億人民元(約6,300億ドル)に達し、過去最高を更新し続けています。海外投資家の中国債券の投資はどんどん拡大しているのです。
投資の理由
民間の投資家が自己の判断で中国に投資しているため、どこの政府も口出しするのが難しい面があります。そのため、投資がどんどん拡大しているのです。
海外の投資家が中国の債券に投資する理由としては、中国の景気が悪いため金利が低下し、債券価格が上昇する期待があるからです。
投資の多様化と説明責任
中国の国債だけでなく、政府機関債や社債に投資している投資家も多いです。
民間の保険会社、年金基金、資産運用会社も中国の債券に投資しています。中国の債券に投資することについて、保険や年金の契約者、投資信託の受益者に対して説明責任を果たしているかというと、不十分な点があるように感じます。
日本の国民年金を運用するGPIF
日本の国民年金を運用するGPIFは中国の債券には投資していません。
インデックスの影響
機関投資家が中国債券に投資する理由の一つに、主要債券インデックスに中国債券が組み入れられたことがあります。FTSE社が出している「World Government Bond Index(ワールドガバメントボンドインデックス)」というインデックスに、中国国債の組み入れが2022年から開始され、現在は10%を超えています。
インデックスの構成
「World Government Bond Index(ワールドガバメントボンドインデックス)」はロンドン証券取引所参加のFTSEという会社が公表しており、国や銘柄の構成は時価総額などを考慮して決められていますが、詳細な決定方法は明らかにされていません。
中国政府は人民元の国際化を進める中で、人民元建ての債券市場にも外国人投資家を呼び込みたいと考えています。そのため、FTSEが中国にとって都合のいいインデックスを提供していると見ることもできます。
ファンドマネージャーの視点
私の知り合いで現役の債券ファンドマネージャーをしている人で、中国債券に投資している人がいます。なぜ投資しているのか聞くと、インデックスに入っているからだと言います。ファンドマネージャーはインデックスを上回るように運用することだけを任されています。
格付け会社の影響
もう一つは格付け会社です。海外の投資家が中国企業に投資する際、格付け会社が提供する格付けもリスク管理の基準になっています。近年、悪い材料が出るたびに格下げされることもありますが、外国の格付け会社が不正を見抜くのは難しいです。
格付けの限界
中国国内の格付け会社の格付けを参考にするのも難しいため、格付けをチェックしても不正を見抜けない可能性があります。結局、格付けに代わるものがないため、依然としてそれを頼りに投資し続けていますが、大きなリスクがあると考えた方がいいでしょう。
中国債券投資の今後
この問題に対して、インデックスを提供する企業、格付け会社、アセットマネージャーそれぞれに対して監視の目を強化していく必要がありますが、実際にはなかなか進んでいかないでしょう。
世界の投資家の中国への債券投資はこれからも拡大していくことになり、中国企業による不正に巻き込まれる可能性は債券市場でも高まっていると言えるかもしれません。
ご参考
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