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小説詰め合わせ

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#恋愛

海に連れてって。今すぐに

海に連れてって。今すぐに

車は暗闇の前で震えながら停まった。

「ついたよ」

シフトレバーをパーキングに押し込みながら言うと、助手席で眠っていたユリは目をこすって短く息を吐き出した。たぶん笑ったのだと思う。暗くてよく見えなかった。車内のライトをつけると彼女は片目をつぶって眉を寄せた。

「まぶしい」

手足を伸ばしながら言う彼女からは、俺と同じシャンプーの匂いがする。

おとこ物の、清涼感の強いその匂いでさえ、ユリが纏う

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宝石箱の住人

宝石箱の住人

 触れれば簡単に砕けそうな硝子のピアス。

 細かい曲線が連なった金の指輪。

 ぐにゃりと曲がる薄いバングル。

 どれもほんの少しの不注意で壊れてしまいそうなものばかりで、でもカエデさんの周りはそういったもので溢れている。

 「わざと身につけて緊張感を持って生きなきゃ、私はダメになるんだと思う」

 カエデさんが初めて俺の家にやってきたとき、彼女はひどく不安そうな顔をしてそう言った。俺より年

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淡い紫の呪い

淡い紫の呪い

 雪原にほんの一滴、ブドウのジュースをこぼした時のようなはかない淡い紫。その色をミサキはこっそり持っている。きっと誰にも見せてない、でも私は知っている。だって私がつけたんだもの、あの華奢な左の手首に。

 「先輩って、かっこいいよね」ミサキがそう言うのと、私がカメラのシャッターを切ったのはほぼ同時だった。

 「え?先輩??」

 わざと聞き返す。先輩と呼ばれる人物にはあらかた予想がついていた。

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