たべものエッセイvol 1:甘酢餡彼氏
甘酢餡。ああ甘酢餡。
なんて美味しいんだろう。
ケチャップベースの甘じょっぱくて、とろりとした餡は野菜にも肉にもごはんにもよく合う。
甘酢餡を使った料理といえば代表的なものだと酢豚や天津飯。
あとは肉団子。個人的に好きなのは大戸屋の「鳥と野菜の黒酢餡定食」。
あ、これは黒酢餡か。
でもやっぱり定番は酢豚だよね。
口の中に入れると、粘膜はたちまち甘酢一色になり、肉を噛めば旨味、野菜やきのこを噛めばみずみずしさと風味が顏を出し、胃袋へ流れ込む。
茄子が入っているとめちゃくちゃ嬉しい。
油を吸って皮部分はカリっとこんがり、中はとろーりと柔らかく舌でつぶすと油がじゅわわ~と広がる。そこに甘酢餡があると一気に味が締まり、なんとも言えない充実感で心が満たされるのである。
あの充実感は一体何に例えよう。
そうだ。恋人ができはじめた時によく似ている。
まだ”好きな人”だった頃の空気感を残しドキドキさせつつも、この人は今自分と付き合っているのだ!という安心感と温かさ。
甘酢餡は”彼氏”なのである!!!
昔は餡なんてものは自分で作るにはハードルが高かったけれど、どうしても食べたいものがあるときに自分で作りたいという思いからレシピを検索してつくるようになった。
誰かの心を満たしてあげたいとき、寂しいとき、お腹が減っているとき、嫌いじゃなかったら作ってあげたい。
きっとあの味が、1日の全てを「よし」としてくれるような気がするのだ。
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