【お仕事ポートフォリオ】「できる日本語」を使った経験について思いつくままに書いてみる(その3)
仕事から離れて数ヶ月。
どんな授業してたか思い出すシリーズ。
まだまだ続きそうなので、マガジンを作ってみました。
前回までの分はこちらをどうぞ。
前回、できる日本語を使ってよかったことをこのように書きました。
また、場面を絵で見て、音声で会話を聞くスタイルは論理的に考えるのが苦手な学生にも合っていると思いました。
「こういうとき、こう言えばいいんだ!」
という気づきが積み重なっていくのです。
すると、そのうちに
「この場面て、もしかしてあの時のあの言い方が使えるんじゃないかな?」
という応用力が養われていく学生もいました。
今回は上記のような学生の中からある1人の学生を取り上げ、詳しく書いてみようと思います。
1.衝撃の告白
その学生はネパール人の男性。
当時で二十歳前後。
レベルがいちばん下のクラスでさえもついていけない、そんな学生でした。
ある日、初めての面談を行った時のこと。
「先生、勉強のし方がわかりません。」
たぶん、もっともっとたどたどしい言い方でした。
英語も交えながら聞いていくと、クラクラするような事実が…。
✳一応高卒ではあるけれど、今までの人生でまともに机に向かったことはなかった。
✳現地の日本語学校では、名前をカタカナで書くことくらいしか教わらなかった…。
日本へ行けばちょこっと勉強しながらがっぽり稼げるよ~!と上手いこと丸め込まれ、多額の借金を背負って来日してしまった典型的な出稼ぎ留学生でした。
この類の留学生にはたくさん出会ってきましたが、彼ほど勉強についていけない学生は初めてでした。
本人も目の前の現実に頭を抱えていました。
2.必殺!丸暗記!!
私がその学生に指導した勉強方法です😅
おいおい…とお思いでしょう!👊
でも、これが効果てきめんだったんです。
できる日本語は様々な場面の絵を見ながらその場面の会話を聞き、導入していきます。
場面ごとの会話を丸暗記するよう指導しました。
絵があるので、「この時はこう言えばいい」とイメージがわきやすく覚えやすいんです。
彼は「絵を見て覚えることならできる」と一生懸命取り組んでくれました。
3.停滞
丸暗記作戦で徐々に会話もできるようになってきた彼。
しかし、グループワークや作文で何かをゼロから生み出すとか、文法問題、読解などはなかなか伸びません。
グループワークでは同じグループの学生に呆れられたり、ウザがられたりしてしまい、見ていて可哀想な状態でした。
テストの点も相変わらず一発ではとれないため、中級には進級させず、初中級クラスをもう一度受講させることにしました。
本人、渋々下のクラスへ…。
でも、ここから快進撃が始まります!
4.覚醒
もう一度初中級をやることになった彼。
少しずつ少しずつがんばってきたことがここでようやく花開きました。
✳一度やった内容なので、記憶に残っているのか、自ら発言するようになりました。
✳よくノートを執るようになったのもこの頃から。覚えるべきことを授業を聞きながら、判断できるようになってきたのでした。
✳そのおかげか、テストも以前より当てずっぽうな解答が減っていきました。
そして、いつしかクラスを引っ張る存在に。
私も困ったら彼を当てるようになりました。
グループワークでは他の学生をフォローできるまでに成長!
✳✳✳
応用力が身についたなと感じた出来事があるので、記しておきます。
できる日本語の初中級では料理の作り方を習う場面で「まず」、「つぎに」、「さいごに」などの接続詞を導入します。
彼はそれまで、当然作文もろくに書けませんでした。
しかし、これらの接続詞を使えば、段落を構成できるんだということに気づき、その後様々なテーマの作文でこれらの接続詞を多用するようになりました。
そして、彼の作文は何を書きたいのか、順序ができ、内容も伝わりやすい物に変わっていったのです。
(テーマによっては内容と接続詞が全く合ってない物もありましたが😅)
彼は「料理の作り方」という場面から順序よく述べたり、まとめたりする術を身につけたのでした。
5.その後
こうして、2年間で驚くべき成長を遂げ、いよいよ進路を決める時期になりました。
しかし、現実は厳しかった…。
専門学校志望でしたが、筆記で軒並みつまずき、不合格の嵐。
JLPTもN3取れなかったしね…。
初めて見る問題への短時間での対応力がやはりまだまだだったと痛感。
結局、合格したのは願書を出してお金を納めれば入れるけど、授業や学習環境、就職率については評判が最悪の専門学校でした…。
彼は今、どうしているのか、実はわかりません。
産休前に聞いたのは、進学先で出席率も成績も悪いらしいということだけ。
学生数も多く、面倒見のいい専門学校ではないようなので、ついていけなかったのかな?😥
(うちの日本語学校は小規模校でした。あまりにも環境が違いすぎたのかも。)
日本にいるなら、不法滞在にならず、どこかで元気にしててくれることを願うばかりです…。
6.まとめ
「できる日本語」を使用すれば、彼のように勉強への苦手意識がある学生も救うことができる。
「みんなの日本語」で教えていた時のあの学生達も「でき日」ならもっと伸びていたかもしれない。
私は「でき日」を使って、そう感じました。
けれど、そこそこのレベルの専門学校に進学するレベルに達するのは「でき日」を使ったとしても、難しい学生もいるとわかりました。
✳あとがき✳
何だかもやっとする終わり方ですみません…。
教科書から話題からは逸れますが、こうなってくると、留学生のリクルートってほんとに大事だなぁ…‥と思ってしまいます。
それについては以前のnoteにまとめてるのど、よければご覧下さい。
では、今回はこれで。
読んでいただき、ありがとうございました!
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