《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第75話
七月十三日(土)
だが、この線を辿ると、電車が小田原厚木道路と垂直に交差するようになっている。電車と道路が合流したその先には、ブタ川だってある。どうするつもりだろう。
「それは、これから考えるんだ。これからの話だ。
橋だってトンネルだってなんだっていい。
新東名高速道路もカピバラ市の区間でそれをやってのけたんだ。
それを参考にして、自分の考えを持ってこれからのことを考えよう。
シマエナガさんにぶつけてみよう。」
すごい。
ジンベエザメは、室町時代に江戸城を築いたというあの戦国武将オランウータン公かと思う。
冗談で言ったら、「侍は土木技術者でもあったんだ。」と、言ってくれた。
治水をして災害から街を守り、田畑を潤した。
城というランドマークを作った。
未開の山々を切り拓いて街道を通し、交通網を発展させた。
その基盤は江戸時代になり、庶民階級にも文化、芸術、学問の花を開かせた。
その結果が、あの、スケベ実験かと思うとどうかと思うが、今回は許そう。
「そう、そこに住む人たちのために俺たちは作るんだ。
だがな。」
そう言うと、ジンベエザメは一回息を吐き、冷静になってこう言った。
「この計画は、工事金額と工期の上では良い案だが、それに伴い、この計画の沿線のお家なり、暮らしを奪うことになる。
上ヤギ地区と下ヤギ地区の人たちだ。
それが一番難しい。」
イグアナ福祉館の市議会議員の演説を思い出した。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?