《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第22話
四月五日(金)
定食でついてくる味噌汁が一番うまい。酒粕が入っている。
カピバラ市で一番有名な定食屋の売りは味噌汁だと思う。
もちろん揚げ物も炒め物も美味しいし、うっかり大盛りと頼むと日本昔ばなしのような盛り付けで出てくるご飯も甘味が強くて美味しい。
だから、翌日である今日もお腹が張っているような気がする。
学生時代、隣町である厚木市の定食屋にバイトの面接に行ったら、バイソンみたいな店長が現れ、いきなりロースカツ定食を出され感想を求められた。その店も味噌汁がうまかった。それから一年ほど働いたが、閉店してしまった。
理由は、バイソンの父の急逝だった。父親が営んでいたカピバラ駅北口の定食屋をバイソンが継ぐこととなったからである。先代のお店の外観は、とてもボロっちくてなんの店かも分からないものだったので、バイソンはまずお店兼実家を建て替えることから始めた。そのため、このタイミングでバイトをやめたが、今でも付き合いは続いている。
昨日は、今週土曜日に控えるイベントで急遽スタッフが足りなくなったため、手伝いをお願いしたいと連絡があり、その説明を受けにお店に行ってきた。
バイソンは、改築の際に市役所の職員に
「あなたは何も市のために活動していない。そんな一市民の文句に付き合ってられますか。」
と、言われたことをきっかけに、月に一回の頻度でイベントを開催し始め、なんと今年、市長選に立候補した。
来る選挙は対抗馬が出れば数ヶ月後となる見込みだ。
当選すれば市役所職員採用面接で、いきなり何を出題するのだろうか。
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