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テイクアウトでの衛生管理は、これからが正念場

五月になりGWも明け、汗ばむような日もだんだんと多くなってきました。
暖かくなると食品の衛生という面からは、少々厄介なことが起こります。

外出自粛要請から1ヶ月が経ち、テイクアウト商品のオペレーションも徐々に確立されてきたというお店も多いかと思います。

なんとかオペレーションが回り始めたこの時期に、暖かい時期に向けて食品衛生面への対応を再度チェックして事故が起こらないようにしたいものです。

ここでは過去の食中毒事故と規制については触れませんが、一旦事故が起こってしまうと、どこか一部の事業所の不手際であっても、業態全般で規制という事になってしまいます。

今は非常事態ということもあり正直保健所がテイクアウト販売に関してあまり厳しく対応していないという現状です。このような状態のなか皆が不幸になってしまう事故は未然に防ぎたいものです。


テイクアウト商品の衛生管理は何を注意すればいいか?

通常店舗で提供される料理を包装容器に入れて、テイクアウト商品や宅配商品として販売することは、店舗内にて調理後すぐにお客様に喫食される場合に比べ、実際に食べるまでの環境がコントロールできない状態になります。

従来はリスクを避けるために、食べ残しの持ち帰りを一切認めてなかった店舗も多くありました。管理できないとなれば、店舗での提供に比べ出来るだけ安全な状態でお客様に渡すということが重要になります。

今より安全にするには、何を注意すべきかは、衛生管理手法であるHACCPの観点からみると上手く整理できます

最近良く聞くHACCP(ハサップ)とは、そもそも何か?英語の危害要因分析と重要管理点の2つの言葉の頭文字をとったもので、要はあまたある危険な要素を洗い出して、本当に管理すべきポイントを必要最小限で管理するという衛生管理の方法です。

Hazard Analysis   危害要因分析
Critical Control Point   重要管理点 

もともとは1960年代にアメリカで宇宙食を安全に管理するためにNASAによってつくられました(NASAによって開発!)。

実はオリンピックに向けて、今年の6月1日より義務化とされておりました。今は新型コロナウイルスの影響で、それどころではなくなりましたが、このHACCP、渡来のもので何か複雑で大変そうという印象があるかもしれませんが実はそうではありません。

常識的に国内でも通常行われていた衛生管理を整理し効率よく行うための仕組みです。実行が難しい複雑なものであれば、安全を担保する仕組みとしては現場で使えるものではありません。

ここでは詳しいHACCPの内容には触れませんが、ざっくり言うと

口にすると危険な「菌」「異物」「化学物質」が食べ物に無いようにすることです。

ここまで言うと、あら簡単そうと思えてきますよね。その通りですが、今回の新型コロナウイルス感染症でもわかる通り1つ目の「菌(ウイルスを含む)」は少し厄介で、こいつらは生き物(ウイルスは生き物と無生物の中間と言われています)ですので条件が整えば増えます。

条件によって増える。条件によって増える ‥ 今私たちが頑張って、三密を避けたり、手指衛生を行なっているのも、このウィルスにとっての好条件を成立させないために頑張っているという事になります。

食品上で生き物が増えてしまう条件は大抵は似通っていて、単純に言うと温度と時間です。この温度×時間で「菌」は倍々で増えていきます

食品に関わる業種区分で、飲食店と食品製造が明確に別れている理由はこの喫食までの時間が全く違うからです。



温度と時間でどれだけ増えるか?

冒頭で、汗ばむ陽気となりこれからが正念場と言いましたが、ではこの汗ばむような温度になると、食中毒のリスクはどれだけ増えるんだよというのが気になるところです。以下は卵焼きの温度別のサルモネラ菌の増殖数です。

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出典:「主な食中毒起因細菌の食品中における増殖について」伊藤 武  坂井千三  https://www.jstage.jst.go.jp/article/shokueishi1960/30/2/30_2_123/_pdf

なんと10℃では全く増えません。逆に20℃を越えると、指数関数的に倍々で増えます。こうなるとこれからの暖かい季節に特に注意して管理すべき重要管理点(CCP)は以下になります。

・もともとの菌を減らすこと
・その菌が増えない様にすること

この2つを管理するのはどうしたらいいでしょうか。そうです。衛生管理者講習などで繰り返し言われる。食中毒予防の3原則、菌を「つけない」「増やさない」「やっつける」です。
これは、具体的には「洗う」「冷やす」「加熱する」です


詳しい具体的な手法は別の機会に触れたいと思いますが、特に生野菜の洗浄不足と肉魚の加熱時の中心部の温度不足が事故の原因になることが多い様です。

生野菜は酢の物に変更を検討する。肉や魚はしっかりと加熱できるメニューにするなどの対応が必要です。

この安全な調理法で調理する、そしてその上美味しいというのが、最終的に目指すところです。

販売直前まで低温で管理する

また残存する菌を増やさない為に調理後の管理も大切です。

テイクアウトや宅配の場合、例えば調理後3時間ほど経つ品物も含まれてるかもしれません。

このように実際にお客様に商品が渡り食べるまでに時間がかかりますので、調理後できるだけ早く低温(10℃以下)にして販売する直前まで温度管理をすることが必要になります。

冷蔵環境で販売する。クーラーケースや保冷材の利用、日陰での販売等を行うことが有効です。

温かい食事を食べてもらいたい気持ちはやまやまですが、そこは自分たちが作った料理が、このあと不確定な状態に置かれる可能性もあることを認め、安全性を優先させてお客様に食べる直前に温めてもらう方が安全でしょう。


以下は、イラストが不思議という噂の厚生労働省『HACCPの考え方を取り入れた食品衛生管理の手引き【飲食店編】』です。ご参考に
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000158724.pdf


依然として厳しい状況が続きますが、工夫して安全で安心、美味しい食事を提供し、料理のちからでハッピーな時間を提供して行きましょう!

*不適切な表現等ございましたら、修正しますのでご指摘いただけると幸いです。


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