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冷たい指先 #シロクマ文芸部

 布団からはみ出している指先が視界に入った。
 薬指にはめられた指輪が、窓から入る朝日を受けて光っている。

 シンクに寄りかかったままで喉へ流し込んだコーヒーがやけに苦々しい。
 指先から手元のコーヒーへと視線を移して、ぼんやりと思う。
 昨日までと同じはずだ。こんな味だっただろうか。昨夜、妻と喧嘩してしまったせいだろうか。
 昨夜の喧嘩を思い出すと、口内にさらに苦みが広がったような気がする。
 それ以上飲む気がなくなり、一口飲んだだけのそれをシンクの中へ置いた。

 そうして、再び寝室へと視線を移す。
 妻はまだ布団の中にいる。
 そっと近づいていき、その傍らに膝をついた。

 長いまつげは、薬指の指輪と同じようにキラキラとしている。


 どれくらいそうしていただろう。
 そろそろ行かなければ。
 そう思い立ち上がりかけると、はみ出たままの指先がまた視界に入る。
 細いきれいな指に光る指輪。
 やけに冷たそうに見えて、布団の中へ戻そうとする。

 しかし、戻らない。


 ひとつ息を吐いて、立ち上がる。
 そして布団に横たわる妻へ声を掛けた。



「警察へ、行ってくるよ」




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読んでいただきありがとうございます。

2024.01.26 もげら

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