バンドマンのエレジー17

■バンドマン、やはりろくでもない■

お子様にライブハウス、バンドはダメ!だなんて思っておられるお母様方はいらっしゃるだろうか?
もしくはバンドマンと付き合っている友達に対して絶対に辞めておけ!などとおっしゃった経験のある女性は?
手塩にかけて育て上げた娘が連れてきたバンドマンの彼氏を怒鳴り散らして追い返したお父様方は?
約20年ライブハウス界隈で生きてきた筆者から一言言わせてもらおう。アナタは大正解だ、正しい事をしたのである。

あくまでも筆者の経験上の話なのだが、バンドマンとは高確率でちゃらんぽらんなヤツが多いのである。もちろん私も例外ではない。
少し遊ぶ程度ならそこらの売れないお笑い芸人より面白いヤツばかりなので楽しめるかもしれないが、本気でお付き合いと結婚などを考えているなら全くオススメ出来ない。
もちろん自分の子供がギターが欲しいなんて言い出そうモノなら、我が子の悲劇を未然に阻止するために何としても諦めさせるべきだ。我々と同じ過ちを繰り返させてはいけない。躾と教育を徹底してさし上げていただきたい。

まず定職についていない人間があまりにも多い。
もちろんバンド活動を円滑に進めるためにはアルバイトで生計を立てるのが一番手っ取り早いのだが、
出勤時間がもろに収入に直結してくるので、例えばインフルエンザで一週間仕事に出られなくなっただけで翌月の光熱費等が払えなくなる程の貧困具合である。
おまけに好きな時に休みが取りづらいと言いながらシフトに入れてもらえないなんてトンチンカンな文句を言ってすぐにバイトを辞めたり、新しい職場で30過ぎて高校生のアルバイトに良い様に小間使いにされてるヤツも少くない。
貯金なんてあるはずもない。結果パートナーがその尻拭いをするはめになるのだ。

そしてこれは男性だとかバンドマンだとかにあんまり関係ないのかもしれないが、部屋が汚いヤツが多い。
安く手っ取り早く酔っ払えるチューハイのストロング缶がテーブルに山積みになってる様子など何度も見てきたし、そもそもテーブルがあるだけマシなのかもしれない。
部屋はタバコのヤニでまっ茶色だし部屋干しの洗濯物のにおいも気になる。こちらも、洗濯機があるだけまだマシか。

一番ヒドかった例が、筆者が何度か泊めてもらった事のあるとあるバンドマンの部屋だ。
全ての部屋で歩けば足の裏に米粒など何かしらゴミが付くし、トイレの便座はヒビ割れて中は汚れがこびりついた状態。
風呂は「あぁ、ここに立ってシャワー浴びてるんだな」とすぐ分かる場所以外は全て水カビに侵食され、テーブルは飲みかけの缶ジュースや酒がこぼれてタバコの灰でベッタベタ、
その辺の床に放置された衣服は着て良いものなのか今から洗濯するのか判別出来ないし、布団は陰毛だらけであった。
何よりゾッとしたのか炊飯器の蓋を開けた淵のところがえげつない程のカビにまみれていたことだ。風の谷のナウシカよろしく「胞子が残っていたんだ!」状態である。その炊飯器で炊いた米を私に食えというのか?
文句があるなら泊まるなと言われればそうなのだが、極貧ツアーで宿が無かったのだから仕方ない。
ここまでのレベルの部屋に住んでいるヤツはさすがに他に見た事はないが、泊めてもらったバンドマンの部屋は一部例外を除いて大体似たようなもんだった。

他にも例を挙げればキリがない。
税金を払わずに口座を差し押さえられたり、平気で約束の時間に遅れてくる。
挨拶もまともに出来ないヤツもいれば金銭にだらしないヤツもいる。酔っ払って終電で寝過ごすヤツなんて当たり前だし傷害事件を起こすヤツもいるし、家まで帰るのが面倒臭いので路上で寝るヤツなどざらにいる。
友達としては良いかもしれないが、恋人や結婚相手としてはこれほどミスマッチな職業もないであろう、そもそも職業としても社会人としても成立していないヤツらが大多数を占めているのだ。
保護者の皆様やお友達の皆様、バンドマンと友達以上の深い付き合いのある人間全てにストップをかけるべきだ。

にも関わらず、これだけダメな人間が揃っているにも関わらずだ。
彼らの多くは素晴らしい曲を作り、涙無しには聴いていられない歌詞を書く。
何とも小粋なギターソロを考えつくし、ブリブリと踊り続けられるベースを弾いて、目が離せないほど大迫力のドラムを叩く。
楽屋では「今月の家賃払えないって言ったら女が金くれたんで呑みにいきましょうよー」なんてクズみたいな事を言っているヤツがステージに立つとその場にいる女の子全員をうっとりさせるようなラブソングを歌ったりする。なぜか男の筆者も号泣するほどだ。
もちろん礼儀正しい道徳者もいるが、とんでもなく腰が低くて言葉遣いも丁寧な人が激しくシャウトし観客を煽り魅了しているなど信じられないぐらいに様変わりする。
感情的になり涙を流しながら必死で自分のメッセージを訴えてくるアイツの歌に、私の目は釘付けになったしひどく興奮して胸を打たれたものだ。
つまりはそれほどに彼らは自分のステージに全てを注ぎ込んでいるという事だ。

とは言えどれだけ素晴らしいライブをやったところで、彼らの普段のだらしなさや素行の悪さが帳消しになるわけではないのだが、どうかあんなにも一つの事に夢中になっているバンドマン達を責めないでやってほしい。
今さら辞めろと言ったところで聞きゃしないのだ。それ以上に楽しい事をまだ知らないのだから、飽きるまでやらせてやってくれないものか。

もちろん私も自分の娘が大きくなって連れてきた彼氏がギターを背負ったピアスだらけのまっ金々のツンツン頭で見るからにバンドマンであったとしたら、
取り敢えず頭を引っ付かんで引きずり回して口には出せないアレやコレで叩きのめし、二度と思い出したくないような傷を心に深く刻み込んで門前払いすることを約束しよう。
言ってる事が違うだって?それとこれとは別の話である。

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