「バンドマンのエレジー」@エッセイ/小倉北斗著

現在一児の父親として育児に奮闘中の、20年以上のキャリアを持ちながらも何の芽も出ず花も…

「バンドマンのエレジー」@エッセイ/小倉北斗著

現在一児の父親として育児に奮闘中の、20年以上のキャリアを持ちながらも何の芽も出ず花も咲かずの現役バンドマンが放つリアルで滑稽な失笑エッセイ。 ライブハウスの事、過酷なツアーの実態、一銭にもならなかった汗と涙の滲んだトホホ話等。逆説的青春小説と言っても過言では...!過言である。

最近の記事

父ちゃんはバンドマン6

■バンドマン、大人になりなさい■ 子供の頃、大人になればコーラやオレンジジュースは飲まないもんだと思っていた。 子供の頃、大人になればお菓子は食べなくなるし、下ネタを男同士で話したり、ゲームで遊んだりしなくなるもんだとずっと思っていた。 子供の頃、大人になれば悩みなんてもっと難しい、経済や政治の事になると思っていたし、 誰かに何かを言われても傷付かないもんだとばかり思っていた。 ところがどっこい、30も半ばに差し掛かる時に蓋をあけてみれば、 オヤツを食べなきゃやってら

    • 父ちゃんはバンドマン5

      ■バンドマン、子供に教わる■ 愛する妻と結婚出来た事により、妻の家族とも晴れて親戚になった私だが、 それにより義理の母と妹が出来、その息子である小さな命も、私の甥っ子になったわけである。一昨年弟が出来た彼も、今やすっかりお兄ちゃんであると同時に、やはりまだまだ小さな子供であり、まだまだ可愛い盛りなのだ。 私の実の姉二人にも子供がいて、甥っ子が二人に姪っ子が一人いるのだが、もちろんバカみたいに可愛く感じている。 しかしここではあえて、義理の妹の子供である彼に焦点を当ててみよう

      • 父ちゃんはバンドマン4

        ■バンドマン、父親の務め■ こんな見た目をしているが、こう見えて実は、私は結構な子煩悩だったりする。 学生の頃なんかは、実家の近所の子供達と遊んでいて、ウチの母親よりご近所のママさん方との交流が深く、 お宅にお邪魔してオヤツやジュースなどをいただいていた。 ライブハウスに小さな子供を連れた親御さんなんかがいると、知り合いでも赤の他人でも、知らないウチに私が遊び相手になっていたり、 一番最初に産まれた甥っ子など、父親に抱かれても泣きわめくのを止めないのに、私が抱いて寝かし

        • ほっくんのぶっつけ本番2

          ブログスタイルの不定期エッセイ「ほっくんのぶっつけ本番」 前回の更新からどれだけ間が空いただろうか? 確認してみたら実に半年以上空いているではないか。 何を書いたかすら覚えていないのでチラッと読んでみたら、コロナ禍で仕事がなくなり、しばらくお休みしていた頃なのか。 あれからもう半年。慣れないデスクワークもなんとか馴染んできた。 しかし、しかしだ。言い訳はすまいが、もう本当に書く時間が取れない。いや、恐らく取る気がないのだ。 それほどまでに、娘が可愛くてたまらない。 無理して

          父ちゃんはバンドマン3

          ■バンドマン、人間になる■ そもそも私は子供が欲しいと思っていたのか。その前にまず結婚願望などあったのか。答えは両方ともNOだ。 厳密に言うと結婚出来るとも思っていなかったし子供が出来てもまともに育てられるはずがないと思っていた。 そりゃそうだ、毎回毎回色んな土地へ赴きライブツアーを繰り返し毎日のように酒に溺れ、ろくに貯金もないその日暮らしの男に所帯を持つ事など到底夢のまた夢であった。 明日死んだらそれまでよ、そう思っていた男にそんな幸せな未来をリアルに想像することなどとて

          父ちゃんはバンドマン2

          ■バンドマン、喜びの涙■ 2020年へと年を越す元旦の夜の事。 出産のため里帰りしている妻と共にすごすため、私は12月30日から義実家に来ていた。とても良くしてくれて仲もすこぶる良好な義母の料理に舌鼓を打ち久しぶりの休みを満喫しながらゆっくりとこたつに入って日々の疲れをとっていた。 なんだかお尻が痛い、腰痛かな?と言いながらも寝れるうちに寝た方が良いという事で早めに床につく妻。もしかしたら明日には陣痛来るかもしれないねなんて話をしながらおやすみをして、 私は何だか落ち着か

          父ちゃんはバンドマン1

          ■バンドマン、親になる■ 「人生とは何とも不思議なモノだ」 そんなありふれた文章で始まる書物などいくらでもあると思うのだが、 やはり人間不思議な事があるもんだなぁと思ってしまうとそういうセリフしか出てこないモノなので、やはりこの始まり方が妥当なのだろう。人生とは何とも不思議なモノだ。 令和2年1月2日午前3時23分、 元号が変わって初の年越し翌日、 何とも覚えやすい日付と時間に新しい命がこの世に産まれ落ちた。 初産にも関わらず分娩台に座りいきみ始めてからものの2時間足らず

          マジでどうでも良い事つらつら16

          ■バンドマン、○○ペイでお願いします■ 新型コロナウイルスの大流行に伴い、 この日本でもとんでもない不況が訪れていた。 大阪のライブハウスで感染者が観覧していた、というだけで、コロナ発生源だ!などと揶揄され、 人畜無害なバンドマン達、並びにライブハウスが、そりゃあもう理不尽な差別を受けた。 有害なヤツやライブハウスも皆無だとは言わないが、 実際に閉店してしまったライブハウスもたくさんあるし、職場からの理解を獲られなかったりで、ギターを置いてしまったバンドマンなんかもいるので

          バンドマンのエレジー23

          ■バンドマン、嫌われてナンボ■ 筆者が少年時代に主に聴いていた音楽は洋楽であった。 70~80年代のハードロックやへヴィメタルを中心に、ロック好きの姉が日中自室にいない事を良い事に勝手に忍び込み、勝手に拝借しカセットテープやMDに録音したりして狂ったように聴き漁り、夜な夜なひっそりとイヤフォンから聴こえてくる轟音に合わせてギターを弾いていた。 とは言え元々はテレビから流れるJPOPや、父親の影響で昭和のフォークソングなどポピュラーな音楽を聴いて育ってきたので、 中学・高校

          バンドマンのエレジー22

          ■バンドマン、持ちつ持たれつ■ ライブハウスのスタッフでブッキングマネージャー、通称ブッカーという役職がある。 ライブハウスがイベントを開催する際に一から企画を立ち上げてバンドに声をかけ出演者を募り、出演順やチケット代金、日程に開場開演その他諸々全てを調整し、 お客がたくさん来てくれるような一日を作り上げるイベント制作のスペシャリストだ。 店長が同じ役割を兼任する事もあるが、 だいたいのライブハウスに在籍しているなくてはならない役職で、店舗によっては複数名存在している場合も

          バンドマンのエレジー21

          ■バンドマン、ちゃっかり報われない■ このエッセイで散々バンドマンとはーとか、ライブとはーなんて書いているのだから当然と言えば当然なのだが、筆者がライブ活動をする上でステージで演奏してお客に聴いていただく楽曲は全てオリジナル曲だ。 ソロはもちろんの事、バンドの方でも他のメンバーが曲を書いてくる事もあるが、基本的には私が書いている。 このソングライティング、すなわち曲を書くという作業は一言では言い表せないほどに奥深く様々な手法が存在する。基本的には両方自分で作るのだが、人によ

          マジでどうでも良い事つらつら15

          ■バンドマン、乙女じゃなかった■ 至極どうでも良い話なのだが、 筆者は子供の頃、確か小学校3・4年生の頃だったような気がする。 もしかすると自分は女性なのではないか?と思っていた時期があった。 というのもその当時テレビで女性は脂肪がつきやすいというのを見たのがきっかけであった。早い話、男性と女性の肉体的差異の話を番組内でしていたのだ。 何の番組だったのかは忘れたが、聞けば聞く程自分の肉体的な特徴は女性的なのではないか?と不安になっていた。 女性の肉体に対する偏見もあったの

          バンドマンのエレジー20

          ■バンドマン、照れ臭く黄昏■ 前回の続きである。 今回は私のライブにおけるスタイルについてである。 そんなこんなで本格的に歌を歌うと決めた私は、とりあえず大さんと同じスタイルで始めてみようと思い立ち、 父親の持っていたアコースティックギターを手に取った。 いつぞや書いた、いわゆるアコースティックの弾き語りのようなスタイルではなく、静けさなど皆無のいわゆる弾き叫びのスタイルだ。 ギターのストラップを伸ばし腰よりやや下に低く構え、まるで往年のロックスター達がレスポールを構え

          バンドマンのエレジー19

          ■バンドマン、ふと振り返る■ 2008年、私が22歳の年の頃のある日。 専門学校で同期だったドラマーの友人がやっていたジャングルマンというバンドから、「とある弾き語りのアーティストと一緒にツアーを回っている、京都で二組でライブがしたいのでイベントを打ってくれないか」というオファーをもらったのだ。 私は大事な仲間の頼みということもあり2つ返事でオッケーし、すぐにイベントの準備に取りかかった。 知り合いのミュージシャンに声をかけて出演者を集め、 自分は即席のコピーバンドを結成

          バンドマンのエレジー18

          ■バンドマン、個性が命■ 以前アコースティックギターを持ちたった一人でステージに立つ弾き語りという、いわゆるソロアーティストについて書いたのだが、 この弾き語りという形態、別にわざわざ弾かなくても構わないし語らなくても良い。となると弾き語りというカテゴリーには入らなくなってしまうのだが、 早い話が何をやっても構わないのだ。 ステージでオリジナル曲のカラオケを流して歌っても良いし、ソロをずっと弾いているギタリストもいる。 ライブハウスによく来る人やバンドマンでなければその特殊

          マジでどうでも良い事つらつら14

          ■バンドマン、一言多い■ 長い人生なのだから色々な人間と出会う事があるが、この世の中にはムカつくヤツがまぁ多いこと。 電車の中で足を踏まれたとか、ぶつかられたのに謝罪が無いといった小さな事から、よくぞ今までそうやって生きてこれたもんだと感心するほど他人の神経を逆撫でするアホもいる。 筆者自身あまり人の事をとやかく言えた義理ではないのだが、 これでも精一杯他人様に迷惑をかけないように生きているよう心掛けているし、特に見ず知らずの方や大して仲が深まっているわけでもない知人に対し