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アーティゾン美術館が雑誌好きにおすすめな理由。/開館記念展「見えてくる光景 コレクションの現在地」@アーティゾン美術館

雑誌を読むように楽しめる美術館だった。

2020年1月18日、京橋にアーティゾン美術館がオープン。運営するのはブリヂストンでおなじみの石橋財団。かつて同じ場所に存在していた「ブリヂストン美術館」(印象派や日本の近代洋画等を特徴としていた)、2016年に久留米市に返還された「石橋美術館」。この2館が所有していた古代~近代までの作品に、現代アートのコレクションをプラスし、再出発したのがアーティゾン美術館である。
そんなアーティゾン美術館がなぜ雑誌的なのか。私がそう感じる理由は作品の見せ方にある。

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◇充実のコレクション展

日本の美術館の多くは企画展が中心だ。私も今まで美術館に行くのは、ビッグネームの作品が来日した時がほとんど。しかし、アーティゾン美術館は前身のブリヂストン美術館時代から、コレクション展(常設展)を中心にしてきた。今回の開館記念展「見えてくる光景 コレクションの現在地」も、マネやセザンヌ、ピカソ、ポロック、草間彌生、洛中洛外図屛風、クーニング等々、一日本の企業のコレクションとは思えないくらい充実したラインナップ。そうした年代もバラバラな古今東西の作品を、1つの空間で一気に楽しめるところがまず魅力だ。

ちなみにこうしたキュレーション意識は、創業者の石橋正二郎も持っていたようで、青木繁や藤島武二の作品を引き立てるために、彼らに影響を与えた印象派の絵画を購入し、一緒に展示したというから興味深い。

◇アーティゾン美術館が雑誌だとしたら・・・

今回の開館記念展では、「アートをひろげる」と「アートをさぐる」という大きく2つのゾーンに分かれていて、アーティゾン美術館が1冊の雑誌だとしたら、
大特集 「見えてくる光景 コレクションの現在地」
巻頭特集 「アートをひろげる」
第2特集 「アートをさぐる」
という構成だ。

「アートをひろげる」ゾーンは、印象派の画家マネの「自画像」の展示から始まっているところがミソ。美術に限らず、想像的な行為は得てして過去の作品の影響を受けて生まれることが多い。印象派のビッグネームであるマネも、例えばラファエロ原作の版画「パリスの審判」などを参照した「草上の昼食」など、過去の美術を大胆に引用、活用し、そこにオリジナリティを付与することで作品を生み出しきた。このゾーンでは、印象派~抽象画~現代アートと作品を時系列に配置することで、「影響⇒創造」の繰り返しによってアートは生まれてきた、ということが鑑賞者に感じられるようになっている。これは「創造」の体感、というアーティゾン美術館美術館のコンセプトそのものだ。

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続く「アートをさぐる」では、装飾/古典/原始/異界/聖俗/記録/幸福という7つの普遍的テーマに合わせて、新旧、古今東西のアート作品をキュレーションしている。

最初の「装飾」のゾーンでは、紀元前4世紀にイランで作られた幾何学模様の鉢や、16世紀に中国で作られた唐草模様の瓶、20世紀に佐伯祐三の描いた絵画「テラスの広告」(カフェに広告が掲示されている風景を描いたもの)等、パッと見ただけでは時代も国もバラバラな作品の集合体。しかし「装飾」という視点を持つ、なぜ器や絵画に文字や模様があしらわれているのかを読み取ることで見え方が変わってくる。例えば、器に描かれた神話は当時の人々の帰属意識を感じることができるし、唐草模様は繁栄を願う気持ちが込められていることが伝わってくる。

こうした切り口を与えられたことによって、私は「この絵の〇〇にはどういう意図があるのだろう?」と考えながらアート鑑賞できるようになった。新しい切り口を提供することで鑑賞者(読者)の作品の楽しみ方を広げる、という手法は雑誌と重なる。

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このように、アーティゾン美術館はアートを単体ではなく、雑誌のように切り口や文脈で楽しませてくれる美術館だ。開館記念展は3月で終了したものの、今後もコレクションを軸とした展示が予定されている。ぜひぜひ、このコロナ騒動が収束したら訪れてみては!

◇洗練されたデザイン

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アメリカ製の危険物探知ボディスキャナーが設置された、近未来的なエントランス。

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案内サインのピクトグラムもオシャレ。

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ガラス張りで奥まで見通せたり、吹き抜けで下の階をのぞけたり、美術館だけど開放的な雰囲気。


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