見出し画像

動物好きとしてリスペクトする1冊。/『フジモトマサルの仕事』コロナ・ブックス編集部

上野動物園の友の会会員である。それぐらい動物園が好きだ。2カ月に1回ぐらいのペースでどっかの動物園に行く。そりゃ毎日行くような人に比べれば大したことないかもしれないけど、一般的に動物園に行くのなんてデートと家族サービスくらいなんじゃないだろうか。子どもの時行ったきり、なんて人も結構周りにいる。

そんなことはさておき、動物園に行くと、動物好きにしか知られていないような動物がいる。例えばフォッサ、ラーテル、ビントロング、ドール……。いずれも日本の動物園で飼育されている動物だ。だがその姿をパッと思い浮かべれらる人は少ない。増してその絵を描く人はもっと少ない。フジモトマサルさんの絵を見たとき、この人はかなりの動物好きだなと分かった。ヤブイヌ、ツチブタ、イワトビペンギン、マレーバクなどなど、描く動物がマニアックだからだ。一動物好きとしてその姿勢に尊敬の念を抱く。

そんなフジモトさんの仕事についてのインタビューやエッセーが収録された『フジモトマサルの仕事』が今年4月に刊行された。寄稿者は村上春樹、糸井重里、森見登美彦など……めちゃ豪華‼もちろん文字ばかりでなく、フジモトさんのイラストも盛りだくさん。丸目の、なんとも言えないとぼけた感じの動物たちはキュートな一方で、皮肉な発言やブラックなオチなどシニカルな内容もたまらない。

読めば読むほどフジモトさんの虜になっていくのだけれど、同時に悲しくもなってくる。本の中で何回も触れられる通り、フジモトさんは既にお亡くなりになっていて、新作を読むことは叶わないからだ。だから読めば読むほど切なくなってくる。

残念なことにフジモトさんの本では絶版のものも多い。この本が売れて、少しでもフジモト作品復刊の気運が高まらんことを願ってやまない。

最後に帯に記されているフジモトさんの言葉を少し長いけど引用したい。


「子供のころ読んだ絵本の中では、動物たちが喋ったり人間と同じような生活をする物語が、ごく自然なことでした。大人になって現実はそうではないと気づきましたが、まだその現実に対応しきれていません。」

フジモトさん、私もです。

この記事が参加している募集

推薦図書

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?