見出し画像

フラメンコについて その7(パコのその他おススメアルバム)

前回まで6回にわたり、フラメンコギターについて語ってきました。今日は天才ギタリスト「パコ・デ・ルシア」のそのほかのおススメアルバムと、最後の締めくくりとしてフラメンコギターの楽しみ方をザクっとご紹介します。過去の記事は最後にリンクをまとめていますので、そちらをご覧ください。

私のパコのおススメアルバム No1は「二筋の川 / FUENTE Y CAUDAL」です。こちらに関する記事はその4からその6に記しましたので、そちらをご覧ください。これを決める際、いくつか他のアルバムと迷いまして、せっかくなので他のアルバムについても書いておきます。

・次点おススメアルバム1枚目「幻想 / FANTASIA FLAMENCO

こちらパコの2ndアルバムです。1969年作ということのようなので、二筋の川の制作のおよそ3年前。おススメポイントは、パコがまだかなりスタンダードなフラメンコギターを弾いていた時代が聴ける良い意味でオーソドックスな安心感です。オーソドックスと言っても、パコがお手本とした先人の天才達とはプレーのダイナミズムやスケール感は桁違い、明らかに新時代を告げるプレーになっています。4曲目のフラメンコ形式ではない曲でのはつらつとしたプレーや、5曲目のリズムよりはメロディにより力をいれた手拍子や掛け声なしの完全ソロのブレリアス、特に2分50秒以降から繰り出される旋律はコピーしたくなります。全般的に良質な曲が揃っていて完成度が高いです。

が、欠点はこのアルバムがフィジカルで入手しづらくなってしまっているということです(Spotifyにもありません)。あと曲の型でキャッチーなルンバが入っていない点で次点としました。どこかで見かける機会があったら購入を検討してみてください。

初期のプレーという意味では1stアルバムの「天才 / LA FABULOSA GUITARRA DE PACO DE LUCIA 」もいいと思いますし、こちらの方がCDが入手しやすそうです。私は曲的に2ndが好きですが、1stも良いです。古典を尊重しつつパコらしさが出ています。

・次点おススメアルバム2枚目「アルモライマ / ALMORAIMA

ちょっと古典的なプレーからは離れつつあるパコらしさという観点で「アルモライマ / ALMORAIMA 」(1976年作)をおススメします。こちら1曲目のタイトル曲からオリジナリティが炸裂、もやはブレリアスという型はあまり意味をなしていません。この曲のかっこよさはポップスでも売れるんじゃないと思えるほど。

"SEVILLANAS(セビジャーナス)"という型を弾いているのもいいですね。こちらヒターノのフラメンコというよりスペイン南部の春祭りの舞踊曲ですが、踊り手の練習曲として一番最初に習う型だそうです。結構厳密に曲の形式は決められており、何度か繰り返す部分があるのですが、さすがパコです。そもそも曲がかなり速めでかつ繰り返しパートでも同じフレーズを2回と弾きません笑。

そしてパコが好きな(と思います)7曲目のルンバです。こちらのルンバはアル・ディ・メオラとの共演ライブでも披露されている有名な曲ですね。軽やかなメロディとグルーブが良く混ざり合った名曲です。ただ、ここまでダンサンブルになると古くからのフラメンコファンはルンバは邪道というような雰囲気が無きにしも非ずです。が、私は大好きです笑。

1曲目と7曲目のキャッチーさや大胆さもあってこのアルバムも歴史的名盤の部類ですが、その他の曲でフラメンコでポピュラーな型の曲が少なめなことや、フラメンコの母と呼ばれる最重要な型のSOLEA(ソレア)が結構独創的で、初めて聞くソレアにしては新しすぎるかなと思ってしまう部分があり次点としました(それはそれで素晴らしいですが)。が、名盤なのは事実ですし、全体的に肩の力が抜け、競うような緊張感が解けたパコの貫禄すら感じさせるプレーが聴けるアルバムです。時間があればぜひ聴いて欲しい作品です。

最後は、次点というよりフラメンコの主役の一角である歌ものを1枚。パコは伴奏でも凄いんです。

・歌もの伴奏もののおススメの1枚「カンテ・フラメンコの名花 /マリア・バルガスとパコ・デ・ルシア

このアルバムは1972年作のようなので、No1おススメアルバム「二筋の川」の録音時期と同じ時期のものです。私自身、フラメンコの歌ものには詳しくなく、ギターほど聴き分けられないのですが、そんな私でもこのアルバムは分かります。まず、パコの伴奏の圧が半端ないです笑。その正確かつダイナミックかつテクニカルなプレーは、他の歌もののギター伴奏者とは幾重にも違います。

次に、このマリア・バルガスという女性の歌声。どんだけでっかい声が出てるんだろう?と思ってしまうほど、声の大きさとそこへの感情移入が素晴らしい。パコはカマロンというこちらも伝説の歌い手(男性)との録音もあるのですが、そちらよりもこちらの方が録音状態が良く、ボーカルとギターもクリーンに録れており聴きやすい。私的にはこちらがおススメです。

そもそも歌ものというのはフラメンコの型を知る上ではうってつけ。ギターも普通の伴奏者はそこまでオリジナリティを主張してこず、フラメンコのそれぞれの型に特有の定番に近いフレーズやコードワークを展開しますので、ギター的には何がフラメンコなのかはわかりやすいです。ただ、パコはかなりオリジナリティを主張しています。歌い手は正直歌いにくかったかもしれません。

フラメンコの歌もので初めて聴く人がとっつきにくいのは、メロディーラインが結構どの曲も似ていることでしょう。私も歌ものだとこれまでギターに関してしてきた説明レベルでの聴き分けはできません。が、そんな私でもフラメンコの歌ものとして、このアルバムはかなり聴きました。フラメンコの昔の歌ものはもっと録音状態が悪かったり(伝説のブルースマン、ロバートジョンソンのアルバムの様なレベル)、ギターに個性がなさ過ぎて退屈だったりなんですが、このアルバムはそれは無縁。とにかく音は良く、パコもキレッキレフレーズを連発、マリアの歌声もばっちりという長く聴き込めるアルバムです。

無理やり詰め込もうと思いましたが、また今回も最後のまとめ部分が溢れてしまいましたので、次回に持ち越したいと思います。

興味を持っていただいた方は、次回の記事にもおつきあいください。

以下は過去記事のリンクです。

その6

その5

その4

その3

その2

初回(その1)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?