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フラメンコについて その2(フラメンコギター)

先日フラメンコについて書き始めました。その時のリンクはこちらです。

今回はフラメンコギターについて少し書きたいと思います。前回もお話しましたが、フラメンコは大きく、歌(カンテ)・踊り(バイレ)・ギター(トーケ)の3つから成り立っています。逆に言えば、いわゆるバンド的な演奏をするのはギタリストだけです。もちろん、もう少し大きな編成ではカホンやフルートなど他の楽器や演者が含まれたり、歌い手や踊り手が時にそういう楽器を演奏することもありますが、基本的にフラメンコ音楽のコード感やリズム感はギターから生み出されます(リズムだけで言えば手拍子(パルマ)や踊り手の足さばき(サパテアード)も非常に重要です)。

ギターがコード感を生み出すのは分かりますが、リズム感を生み出すというのはどういうことでしょうか。それは、ギターがリズム(フラメンコではコンパスといいます)を意識したコードストロークをすることや、ラスゲアードといわれる拳を握った形から指を一本ずつ伸ばして音を出すラスゲアード、手を扇のように振り回して弦をかき鳴らすアバニコなどで、情熱的かつ素早いリズム感を生み出します。また弦を弾いた後にギターを叩いて音を出す(ゴルペ)でパーカッシブな雰囲気を出したりします(クラシックギターとフラメンコギターの一番大きな違いは、ギターを叩いても傷が付かないように、フラメンコギターにはゴルペ板という板がギターに張ってあります)。

なので、フラメンコギターでは、こちらも前回説明した曲の型が持つリズム(コンパス)を意識してストロークを行うことが重要です。ギタリストのセンスだけでストロークに勝手にシンコペーションを入れたり、3拍子を4拍子に変えたり、小節を付け加えたり削ったりは出来ません。

本来的にはフラメンコは歌と踊りが中心で、ギターはいわば裏方の役割でした。しかし、優れたギタリスト達によってやがてソロ楽器に発展していきます。ソロ楽器としての演奏を始めたのは、録音が残る通説としては「ラモン・モントーヤ」というギタリストです。彼はクラシックギター的な技術をフラメンコギターに取り入れることで、フラメンコギターを伴奏楽器からソロ楽器へ発展させたと言われています。

では、クラシックギターとフラメンコギターの曲の違いはどのようなものでしょうか?クラシックギターでは、皆さんが良くご存じの「禁じられた遊び(これはサントラで使った映画のタイトルで、本当はロマンスという曲名です)」のように、作曲家・ミュージシャンが自分で譜面を書くなりして自由なクリエイティビティで音楽を形にするわけです。

一方のフラメンコギターの曲は実はそこまで自由ではありません。ソレアという曲種には、フラメンコに慣れ親しんだ人達にソレアの型やイメージが存在し、またコンパスというリズムの大枠は決まっていて、これを大きく逸脱することはできません。

ソレアというのは孤独という意味でマイナー調の悲しい曲調が前提ですが、これを思いっきりハッピーなメジャー調で演奏すれば、それはもはやフラメンコギターとは言わないかもしれません。ただし、歴代の天才フラメンコギタリスト達は、こういうしがらみを切り崩してきたという事実はあったりしますので、そのさじ加減や常識を切り崩すやり方ひとつで天才と呼ばれる可能性もあることは否定はできませんが。

話を少し変えますが、クラシックギターを練習した人はフラメンコギターが弾けるでしょうか?弾けなくはないと思いますが、結構難しいと思います。まず、ラスゲアードという拳から一本ずつ指を伸ばして弦をならす奏法など、フラメンコギターが多用する奏法に慣れる必要があります(クラシックギターにもラスゲアードはあるにはありますが、補助的な奏法です)。

次に、フラメンコの曲の型を覚える必要があります。ライブで演奏したければ、特に歌と踊りがある場合、最低でも4種類か5種類ぐらいの曲種は頭と体で操れないと演奏は厳しいと思います。

逆にフラメンコギターを弾ける人はクラシックギターを弾けるでしょうか?これも結構難しいかなと思います。曲の難易度によるかと思いますが、フラメンコギタリストは楽譜が読めない人がたくさんいます。というか、実際のところの証拠は無いにしても、歴代の天才フラメンコギタリストはほとんど譜面が読めないといわれています。技術的にクラシックギタリスト並みかそれ以上の天才フラメンコギタリストでクラシックの楽曲を弾けてしまう人はいますが、一般的なフラメンコギタリストは、曲の難易度が上がっていけば、指が動くかどうかの前に譜面が読めなくなるんじゃないかなと思います。

次回(多分最終回です)はこれまで何度か出てきた天才フラメンコギタリストについて書きたいと思います。

興味を持っていただいた方は、次回の記事にもおつきあいください。





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