見出し画像

フラメンコについて その5(フラメンコギターの聴き方)

なんだかんだで5回も書いている本記事ですが、そろそろ終わりになります(多分)。過去4回分は量が増えたので記事の最後にまとめていますので、そちらのリンクをたどってください。

今日はフラメンコギターの聴き方について書きたいと思います。前回おススメしたパコデルシアのアルバム「二筋の川/FUENTE Y CAUDAL」を基に説明します。

まず、アルバム(サブスクはSpotifyにはないようです)の裏面を見ると曲名が書いてあると思うのですが、フラメンコの場合、曲名の後ろに()書きや""などで曲の型が記されています。古い作品だったりすると逆に曲の型しか記していないこともあるぐらいフラメンコでは曲の型が重要です。曲の型はコード感よりもまずリズム(フラメンコではコンパスといいます)と強く結びついています。このリズムを軸に説明します。

<タンゴとルンバ>
パコのアルバムでは1曲目の”RUMBA”と7曲目に"TANGOS"とあります。ルンバやタンゴというのは社交ダンスの演目やアルゼンチンタンゴなど音楽ジャンルでもあったりしますが、フラメンコのタンゴとルンバは共に別物です。が、フラメンコの型の中では一番ダンサンブルでノリの良い部類の曲です。リズム的には4拍子系に分類され難しくはないですが、理解するにはこんな感じで考えるとわかりやすいです。(あくまでも雰囲気です)

<タンゴ・ルンバのリズム例>
ウン・タカ・タッ・タッ / ウン・タカ・タッ・タッ

ザクっといえばリズムだけで考えるとタンゴを早くするとルンバになります。もちろん、上に乗っかるメロディやコード感は違います。

ルンバはメロディーもキャッチーになりやすく、他のフラメンコギタリストの曲でもダンサンブルなものが多いです。ただ、パコ以前のギタリストはほとんどルンバはやりませんでした。そんな中パコが積極的にルンバを弾くようになったのは面白いですね。パコはルンバが好きだったんでしょう、恐らく。しかもこのルンバは曲のデキも非常よく、ライブでも大人気だったはずです。イントロの小曲部分が終わった後の2分24秒からのいよいよ曲の本題が始まるというところでの出だしの激しいギターフレーズは特にかっこいい。鳥肌モノです。曲中もパコの弾くギターのグルーブがよくわかるフレーズであふれています。先人の天才達にはない要素だと思います。

フラメンコのタンゴはルンバほどダンサンブルとは思いませんが、ギターのストローク(セコといわれる右手の指数本で強く弦を叩きつける奏法やラスゲアード)を打楽器的にリズムを作っていく感じが聴いていて楽しく、ギター好きには受けが良い曲種だと思います。パコのメインギターリフ(あえてこう言いますが、フラメンコでは使わない単語です)の間に入る細かなファルセッタ(装飾的フレーズや短いソロ)がノリノリかつキレッキレで素晴らしく、じっと聴いていると体がノってくるのが分かります。

3曲目の"GRANAINA"と5曲目の"TARANTA"はフリーテンポでリズムがありません。なので、これはギタリストが好きなように弾けます。ライブなどでは指ならしで1曲目に便利な曲のようです。

グラナイーナスは悲しさの中に明るいコード感や広がりがある雰囲気が特徴です。あと、結構な確率でどこかに、ギターの左手で言うと人差し指・中指・小指の3本で「ミファソファミファソファ・・・(注:キーは色々です)」とハンマリングとプリングで素早く引き倒すところがでてきます。これを聴いて悲しいメロディからちょっと明るいコード感に展開すると「あー、グラナイーナスだなぁ」とファンはなるわけです。パコのここでの演奏は彼独自のコードとメロディが鳴り響く、深さと静けさ、悲しさと希望を感じ取れる素晴らしい演奏です。こんな風にギターを存分に鳴らしてみたいなと思ってしまいます(コードが難しく、フラメンコギター学習者のほとんどの人はこんなにきれいにコードが鳴りません笑)。

タランタは曲調としてかなり中近東アラブっぽい雰囲気を醸し出します。この重苦しさや悲しさと中近東感がタランタの聴かせどころです。ところどころギターをハープを弾くように右手薬指の爪でピラーンと1弦から6弦に一方的にかきあげるコードワークも特徴です。フラメンコがスペイン発祥ではなく、インドや中近東から渡ってきたことがよくわかる曲調です。最初は重々しさと中近東感がとっつきにくいかもしれませんが、こちらも聴きなれてくると、この感じがたまりません。

2曲目の"FANDANGOS DE HUELVA"というのはウエルバ県のファンダンゴスという意味で、ファンダンゴスというこちらもダンス曲です。こちらは3拍子系の曲ですが、リズムに特徴があります。

<ファンダンゴ・デ・ウエルバのリズム例>
タン・タン・タン / タン・タン・ウン ・・・

1小節目は普通の3拍子ですが、2小節目は3拍目が休符。これを繰り返します。6拍でワンセットと考えます。パコの演奏でも後ろに足音が入っているのですが(拍手(パルマ)ではないと思います)、この足音も5拍と1拍(休符)が繰り返されています。Am(ラ)→G(ソ)→F(ファ)→E(ミ)とコードが降りて収束する感じで繰り返される(違ったらごめんなさい)フラメンコの特徴と流れるようなコードワーク、間に挟まれるパコの鋭くそしてよく鳴り響くピカード(速弾き)が素晴らしい曲です。

ここまで書いておいて、皆さんに謝りたいと思います。

今回も書きたいことを書き切れませんでした。長くなりましたので続きは次回です。残りの曲説明やパコの次点のおススメアルバムなどを紹介したいと思います。

興味を持っていただいた方は、次回の記事にもおつきあいください。

以下は過去記事のリンクです。

その4

その3

その2

初回(その1)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?