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フラメンコについて その4(パコ・デ・ルシアのおススメの一枚)

フラメンコギターについて書き続けています。過去の記事はこちらです。

その3

その2

初回(その1)

4回目となる今回は天才フラメンコギタリスト、パコ・デ・ルシアのおススメアルバムを紹介します。

ちなみに、今回は細心の注意を払って記事を書いています。なぜかというと、ポロっとアルバムを紹介して「かっこいいから聴いてください!」とやると、おそらく聴いた人達は「あぁフラメンコギターってこんな感じなんだね」で終わってしまう可能性があるからです。

J-POPやロック(最近はEDMもでしょうか)などは至る所で流れていて、人々の耳もそれ用に最適化されています。そういう状態でフラメンコ音楽を聴くと耳が整理されていないので良さを感じ取ることが難しく、一つの音楽ジャンルや演奏家を知ることで終わってしまいがちです。今回は極力そうならないように注意して書きたいと思います。

なお、ここまででだいぶ字数を使っているので、もう一回ぐらい追加で記事を書くかもしれません笑。

本題。
パコの知名度を一気に上げたアルバムは「フライデイ・ナイト・イン・サンフランシスコ スーパー・ギター・トリオ・ライブ」になります。アル・ディ・メオラやジョン・マクラフリンという当時売れっ子ジャズ・フュージョンギタリストとのガチガチのタイマンライブでポピュラー音楽の世界での名声をモノにしました。

が、個人的にフラメンコを聴くのであればこのアルバムはお勧めしません。というのも、アルバム全体からほとんどフラメンコを感じず、全体的にアル・ディ・メオラとパコとの速弾き合戦ばかりに耳が行きがちだからです(フラメンコギターでは速弾きはピカードと呼ばれ、誰もが練習し取り入れる技術の一つですが、ロックやフュージョンの世界ではテクニカルなものとみなされ、他のプレーヤーから差別化する要素だったりします)。

次に有名なアルバムは「シロッコ」でしょうか。こちらはヤングギターなどロック中心のギター雑誌でパコが取り上げられる際に良く名盤で紹介されます。が、スタジオライブのためなのか、フュージョン的な人気を狙ったのか、音響的にパコのギターのエコー感や広がり感が強すぎるのと(マイクから拾った音をアンプに通して録音しているのかと思うぐらい)、プレースタイルがいわゆる古典的なフラメンコからは離れつつあるので強くはおススメしません。

一つことわっておきますと、この2つのアルバム自体は素晴らしいです。しかもフラメンコっぽくないアルバムも出せるというのはパコ自身の成長や進化の表れであり、アーティストとしての懐の広さやビジョン、技術的な先進性を物語るものでもあります。逆に、アル・ディ・メオラとのギターバトルを楽しみたかったり、モダンなフラメンコを聴きたいのであれば、上記2枚は良いと思います。

私のおススメはあくまでもフラメンコギターとはどういうものかをパコのアルバムから知りたい人向けに1枚だけ選ぶとという前提です。

結論としては「二筋の川 / FUENTE Y CAUDAL」(1973年作)に落ち着きました。おススメの理由は、

・フラメンコの曲の型が幅広く押さえられており、曲中にそれぞれの曲の型に定められているリズム感やフレーズが出てくる(CDジャケット記載の曲名の後ろにある括弧書きが曲の型です)
・タイトル曲の「二筋の川」(1曲目)がルンバでキャッチーで入りやすい
・初期の何作かよりも録音技術が向上しておりギター音も綺麗に録れている
・フラメンコギターの花形の曲の型であるブレリアス(6曲目)が、手拍子(パルマ)や掛け声ありで、古くからのフォーマットを踏襲しつつカッコいい
・国内版ライナーノーツで、日本のスペイン音楽・フラメンコ音楽の大先生(評論家)である(故)濱田滋郎さんも名盤中の名盤と言っているのと笑、世間的にも評価が高い

というところになります。パコのアルバムで1枚しか聴かないならぜひこれを聴いてください。余談ですが、フラメンコギターを習っている人の9割ぐらいの人は、ブレリアスという曲の型をノリノリ、キレッキレのスピードで弾き切ることを夢見ているはずです(多分)。そして、それができているなら、その人はかなりの腕前と考えて間違いないです。

やっぱり、今回も書きたいことを書き終わることができませんでした。まだ書きたいことがあるので次回も続けます。

次回は今回おススメしたパコのアルバムを含め、フラメンコギターの聴きどころ、聴き方、楽しみ方などを説明したいと思います。今回この記事を読んで「よし!おススメのアルバムを聴いてみよう」という方も、ちょっと次回の記事を待ってから聴いてもらっても良いかもしれないです笑。いきなり飛びつくと「フーン」で終わってしまうかもしません。

あと、念のためパコのアルバムを次点として追加でおススメしたいと思います笑

興味を持っていただいた方は、次回の記事にもおつきあいください。

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