不妊治療② 価値観のアップグレード、メンタルを支えたもの
不妊治療を経て、私が精神的な面で一番収穫があったなぁと思うのは、「自分の中にあった偏見に気づき、取り除くことができた」ということです。
不妊治療中の自分は、不幸でダメなのだ
どういうことかというと、私は授かれない自分を「不妊治療までしているのに、子供ができない自分は不幸」だと思っていました。
また、「私は母親になる資格がないんだろうか。女として、ダメなんだろうか」と思っていました。
どんどん周りの夫婦に追い抜かれていくのを横目で見ながら、「結婚してからもう7年くらいになるのに、ずっと子どもがいないのを周りはどう思っているんだろう」と暗い気持ちにもなりました。
悩んで悩んで、そのうち夫婦間のトラブルで一度立ち止まって、まずは自分達の関係から色々見つめ直した頃に、ふと気づいたのです。
私は上記のことを他人に対してもそう感じているから、そういう考え方を自分に対してもしていたんだ、ということに。
つまり、私は「子どもを授かれなくて不妊治療をしている人」に対して「それは不幸なことだなぁ」という目で、それまで見ていたということです。
「子どもを授かれない女性は、母親になる資格がない。女としてダメだ」
「結婚してから結構年月が経っているのに子供がいないなんて、あの夫婦何かあるんじゃない?」
そういう気持ちを、自分が他人に対して無意識に持っているから、実際に自分がその状況になったら、ああいう気持ちになっていたのだと気づいた時には、自分の人間としての浅はかさを猛烈に恥じました。
と同時に、「もし本当に、自分がこういうことを他人から思われているとしたら?」と考えてみた時、「冗談じゃない!」とも思いました。
私が幸せかどうかは、私が決めることだ。
他人がごちゃごちゃと私の幸せを勝手に判断するなんて許せない。
生殖の能力だけで私の価値を他人に決められてたまるものか。
事情も何も知らずに、勝手に変な目で見るなんて失礼極まりない。
そんな怒りのような感情が湧いてきました。
そして、それは自分が周りの人に向けていた目でもあったはずなのだ、ということも思い知らされました。
その反省の経験が、この自分の中に根付いていた偏見たちを払拭してくれたのでした。
もし、私がすんなりと自然妊娠していたら、きっと私の価値観は今でも変わらないままだったと思います。
この価値観は、他のいろんなケースにも当てはまります。
結婚をしている・していない、もしくは離婚をしてシングルになった…etc。
さまざまな場面において、自分の中に歪んだバイアスがないか、少しずつ気をつけることができるようになりました。
湧き上がる黒い感情は単に疲れているサイン
とはいえ、不妊治療中は周りが羨ましく見えたり、恨みがましく思えたり、無能感に襲われたりするのは、人の心の動きとして当たり前だと思います。
私の場合は上記のような価値観が潜んでいることが原因でもあったわけですが、そりゃゴールが見えないトライアスロンを走り続けている人にとって、疲れ切っている時に、軽々と目的を達成している(ように見える)人を見たら、そんな気持ちにならないわけがないと思います。
でも、多分それは単に自分が「疲れている」サインなのです。
不妊治療だけでなく、仕事や子育てや、どんな場面においても。
人間、自分が満たされていれば、周りを見て恨めしく感じたり、イライラしたりしないのです。
目標の難易度が高ければ高いほど、満たされる状態がなかなか達成できないので、不妊治療のような質の事柄においては、「疲れて、満たされていない」状態がずーーっと続きます。
だから、もし不妊治療をしていて黒い感情が湧いても、それを感じるのはごくごく自然なことであって、「そんな風に思ってはいけない」と蓋をしたり、自分を責めたりする必要は全くないのです。
そうではなく、「あぁ、これきっと私いま疲れてるんだな。」と思うだけでいい。
偏見を持っている自分に気づいても、そういう気持ちが時々湧いては疲れていたあの頃の私に、そのことも伝えてあげたいです。
だって不妊治療だもん、疲れて疲れて疲れて、時々ネガティブになるのは仕方ないよ。
子どもを授からなかった場合の人生のプランを立てた
妊活を再開し、地元のクリニックにもう一度通い始めた頃には、「もし今後治療を続けたとしても子どもを授かることができず、夫婦二人で生きることに決めた場合」の人生プランを立ててみました。
もしそうなっても、思いっきり人生を楽しむための選択肢を、できるだけ多く具体的に考えました。
経済的にはかなり余裕ができるはずなので、子どもがいないからこそできることをたくさん挙げて、「もし授かることができなかったとしても、その時はこんな人生を思い切り楽しもう。そのために、今は後悔しないようにベストだけは尽くそう」と自分に希望を持たせました。
そのことは、不妊治療中のメンタルを支えるのに大いに役立ちました。
終わりに
さて、一旦また2人目妊活も振り出しに戻った状態の私たち夫婦ですが、また今後はどうするか、お酒でも飲みながらぼちぼち語り合って、大体の方向性を今週末にでも決めようかなと思います。
初めて、妊活・不妊治療に関する思いや考えをこうやって書き出してみましたが、思ったより長編になってしまいました。
でもやはり、自分の中に長年あったものが整理され、見直すことができて、今はすっきりとした気持ちです。
また何か自分の中で気づきがあったら、この場を借りてアウトプットしてみようと思います。