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愛しの上海 de ロックダウン 回顧録 #13 (最終話)

2022年6月1日にロックダウンが解除されてからも、上海市内の商業施設が突然封鎖される事態は起こっていた。ある有名な大型商店では脱出を試みる買い物客の群衆が閉まりかけた出口の扉をこじ開けて突破する映像を見たり、実際私が訪れた商業施設でも封鎖デマがあり、エスカレーターを猛ダッシュで降りてくる人々を見たり、気が気ではない日々は続いていた。
 
そんな中、近所の床屋の従業員から陽性反応が出て、その従業員が陽性を隠して出勤した数日間に訪れた100人程の顧客が追跡され、たまたまその顧客のうちの1人が我々の小区の住民だった為、48時間のマンション封鎖となった。小区グループチャットでは、誰にでも起こりうる事だと皆その住人を慰めた。そして間もなくしてその住民のみ隔離施設へ連れて行かれた。
 
明るいニュースもあった。6月下旬、6月29日から店内飲食が再開のニュースも飛び込んで来た。今までデリバリー出来るだけでも有難かったが、上げ膳据え膳の店内で飲食出来るのは嬉しい。もちろん健康QRコードが緑なのが入店条件だが。上海が通常生活に近付こうとしていた。
 
そして7月に入り、しばらく会えなかった友人と徐々に再会の場を設けたり、飛行機で中国国内旅行へも行けるまでになった。そんな中でも上海のうだるような暑い日々、夕方でもまで38度ある日もPCR検査に出かけなくてはならないという日常も続いていた。
そしてあれよあれよという間に、8月頭中国を去る日が来た。夫の海外転勤スライドが決まったのだ。コロナ渦で大使館での書類やVISA取得が難航したり、通常時とは違う苦労もあったが、引っ越し作業中にマンション封鎖になる事もなく無事に荷物の搬出が完了した。最後にマンション前に家族で立ち、ここで過ごしたロックダウンの日々の様々な想いを巡らせた。何より家族皆健康に過ごしロックダウンを乗り切れた事に感謝だ。国際線に乗る為に翌日必要なPCR検査と専用書類を作成している病院へ向かい、またその翌日無事陰性証明書類を取得した。
 
上海最終日の夜、ホテルからかすかに見えた夜の上海のドヤ顔、煌びやかな上海の金融センター陆家嘴(ルージャーズイ)を忘れる事はないであろう。今でもそこに全ての上海生活が凝縮されている。上海にまた行く事があれば必ずまたそこを訪れるであろう。そうだ、引っ越し作業で忙殺の日々の間に訪れた超高層階の91階にあるレストランから陆家嘴を上から見た眺めも忘れられない。そして我々はwithコロナ政策を取る国へと旅立った。
 
最後に、「四月之声」という短編動画で当時の上海市民の苦悩や怒りや絶望などの真実の切実な声が日本語字幕付きで聴けます。私はこれを聴いていて真の肉声が響きとても辛くなったが、やはり真実を知ることは重要だ。
長らく長文にお付き合い頂き誠にありがとうございました。
 
写真:上海環球金融中心(通称栓抜きビル、栓抜きのような形をしている為)の91階パークハイアットのレストランから陆家嘴を上から見た眺め

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