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私のちゃんとした恋。

私には彼氏が出来た。
街中インタビューでよく見る、「ノリで付き合って結婚しました」とか「最初はノリだったんですけど…」っていうように
最終的には全部全部綺麗に私もなれると思った。

今まで興味も示した事のなかった野球にも詳しくなったし二人で野球場にいる時が一番幸せだった。
だって野球場にいる時の貴方はとても楽しそうで
私が隣にいる意味を再確認出来るきがしてたから。

でもやっぱりごめんね。
好きになれそうにないや。

最初は彼からの一目惚れだった。
容姿がずば抜けていい訳ではない私は最初の頃は半信半疑だったがの私に対する好意を知って本物だと確信した。
正直私は彼の事なんてなんとも思ってなかった。
でも少しずつ二人の時間が増えていき、私の脳は好きだと勘違いしていたのだろう。


私には好きではないけれどハマって抜け出せない。沼のような人がいた。
その人とは1年ほど両片思いの時期を過ごして
いつの間にか去っていった。
私が大好きだったはずのその人は
純粋な心は薄まり、彼女をコロコロ変えては私にたまに連絡してくる。
そんな感じになった。


沼のような人から抜け出したくて
私にも次が欲しくて
そんな時に勘違いしている。彼が好きだと。
これはまっさらな恋心だと。

だけどそんな訳もなく
付き合えた瞬間私の心は冷えきって凍りきった。

こんなはずじゃなかった。
付き合えた瞬間だなんて幸せ絶頂で
自分に彼氏が出来たという嬉しさ、
好きな人は私のモノになったという実感、
一生愛していきます。そのくらいの気持ち。

こんなものが込み上げてくるんじゃなかったっけ…。


こんなままズルズルと関係は進んで行った。

彼が言ってくれる言葉、好きだと言ってくれる事、
出来るだけ彼の理想に近づく努力をしては自分を塗り替えていた。
だけどそんな事も長く続く訳もなく、
ある日、彼がボブの黒が好きだと言うから髪型を変えた。
長かった髪を切った。

それなのに彼は何とも言ってくれなかった。
デート中、何度も「髪型どう?」とか「髪切ったんだよね」とか言おうとは思った。
だけどなぜか言えなかった。



家に帰って今までの時間は一体何だったのだろう。
そんなことを機関銃のように考えた。
彼といて1度でも彼を愛してる。幸せだ。などと思った事はあるのだろうか。
ましてや結婚したいだなんて。思った事あるのだろうか。

夜中2時を回った頃、
私の今のセンスは剥がれ落ち、私という本物の姿が見えた。まるでネオンのような光が私にすがりついているように。
またズルズルするのは嫌だったからすぐ彼に連絡をした。

「会いたい」
私から会いたいだなんて連絡をするのは初めてだった。

「家行くから待ってて」

そう言われて私は本来好きなメイク、服、インテリアを私の中から引っ張り出して全てを前の私に完璧になおした。

インターホンが鳴り、私は彼の手を引いて部屋に入れた。
彼の前で着たこともない露出度の多い服に少し驚いていた。
見たことも無い服と私の雰囲気とインテリアを見て
「どうしたの、これ、」と呟く。
「これが本来の私なの。
本当は清楚な服よりも露出度の多い服が好きで
薄ピンクのグロスよりも真っ赤なリップの方が好きで
電気をずっと付けるようなシンプルな部屋より私は常に電気を消して薄暗い部屋が好き。
ラベンダーの香りよりもアンバームスクの匂いの方が好きなの。」
彼は驚いていた。当たり前か。

「ごめんね、別れて欲しい、」

彼は表情がなかった。

「じゃあ、今まで俺に合わせてたってこと?」

「うん。どうしても好きになりたくて合わせてたの。最低なの分かってる。でもごめんね。」

「……分かった。今までありがとう。」

靴を履く彼の後ろ姿を見るのももう最後だろう。
最低最悪な私でごめんね。


「あ、それと、私こんなに髪の毛切ったの初めだったんだよね笑」


ドアが閉まりかける直前彼はハッとした様な顔が確かに見えた。
最低最悪な私は当てつけのように最後の最後で髪型の話をした。





別れを告げた事に罪悪感はあった。でも私に全然尽くしてくれなかっただけ私は良かったと思った。私は彼のために買った服もメイク道具も二人の写真も全て捨てた。






野球と縁もゆかりも無いような私へと戻った。

短いようで長い期間、ありがとね。

貴方が一目惚れした理想的な私になれなくてごめんね。

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