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みだれ髪の読書記録:2023年8月1日~8月28日(ミッキーマウスの憂鬱、美術の本、百貨の魔法、アイネクライネナハトムジーク、素敵な日本人)

旅行や美術展の話ばかり書いていたら、読書記録がたまってしまった。
この期間に読んだ本は5冊。
酷暑だったので、比較的軽めの本が多かったかな。

①『ミッキーマウスの憂鬱』 by 松岡圭祐

ディズニーランドの話、ということで興味を持っていたが、慌てて読むこともないか、と後回しになっていた。
2023年の「新潮文庫の100冊」にも入っていたので読んでみることに。ディズニーランドでアルバイトすることになった21歳の青年の3日間の奮闘を描きながら、ディズニーランドのバックステージを描き出す。
華やかで明るいパークと裏側の差異に唖然としつつ、どんどん引き込まれていく。
すごく面白いんだけど、これは実話なのか?実話にしてもフィクションにしても、こんな話書いていいのか、ディズニー本社やオリエンタルランド社からクレーム来ないんだろうか、と心配にもなってくる。

解説を読んで、起こった事件はフィクションだし、悪役?の部署も実際にはない部署ということでほっとするが、裏方さんたちの大変さは本物のようだ。
ディズニーランドという特殊な舞台装置ではあるが、それを取り除けば、会社内での上下関係の問題や、若者が成長していく様子、友情が徐々にはぐくまれていく様子など、どこにでもありそう。
それらをディズニーという舞台に持ち込んだことと、後半の事件解決に向けてのミステリー小説感、うまいな~と思った。

②『世界でいちばん素敵な 西洋美術の教室』 by 永井龍之介

本屋さんで、表紙の美しい本がずらりとならんでいた。
世界でいちばん素敵な **の教室」というシリーズのようである。
タイトルを見るとみんな欲しくなってしまうが、ためしに、一番読みたい「西洋美術」を図書館で借りてみることにしたが、地元の図書館にはなく、リクエストするとほかの図書館から取り寄せてくれた。

有名な作品ばかり、美しいカラー写真で掲載されている。
ギリシャ、ローマから始まり、中世、ゴシック、ルネッサンス、バロック。
新古典主義、ロマン主義、写実主義、ラファエル前派、印象派、ポスト印象派、象徴主義、抽象絵画、アール・ヌーヴォー。
時代順に巨匠の作品を網羅していて、眺めるだけでも楽しいし、読んでもわかりやすい。
作品で見開き2ページ使っていることも多いので、読むところは少なめかな、と思ったが、そうでもない。

1回読んだけど、もう1度と思っているうちに日にちがすぎ、返却日が迫り、慌ててメモを取ったりコピーを取ったり。
まあ、また借りればいいんだけどね。というか買えばいい?(笑)

③『百貨の魔法』by 村山早紀

ほっこりした、でもストーリーのしっかりした小説が読みたくなり、この本を選んでみた。
風早という町に立つ老舗百貨店「星野百貨店」が舞台。
戦後の復興とともに歩み、住民に愛されてきた百貨店も経営が厳しくなっている。
百貨店の構造から店内の様子、創業時からの歴史などを詳細に、でもさりげなく描きながら、百貨店に勤めたり、客として訪れる人々の人生までも盛り込まれている。
こんな百貨店に行ってみたい!いや、もしかして子供のころ、自分もここを訪れたんではないかという錯覚を起こしそうになる。

百貨店には、「願い事をかなえてくれる猫」がいるらしい、という人々のうわさから、ちょっとファンタジーのような要素も楽しめるが、でも、奇跡が起こってすべてうまくいく、という安易な話でもなく、でも、しっかりと生きていれば、夢はかなう、という希望ももたせてくれる。
新しく百貨店に勤めだしたコンシェルジェの結子は何者なのか?ナゾトキ物を読みなれていると、正体は比較的すぐに想像できてしまうが、ミステリー的要素も多少はある。

村山早紀の小説としては、「桜風堂ものがたり」と、その続編「星をつなぐ手-桜風堂ものがたりー」を読んだことがある。
こちらは書店の話だが、主人公は、はじめ「星野百貨店」の中の書店に勤めていた、という設定で、どちらも風早の町シリーズの1つ。
というわけで、また「桜風堂ものがたり」も読み返したくなったし、その最新作「桜風堂夢ものがたり」も読んでみたい。

*この本を読んだ直後くらいに、東京・池袋の老舗デパート西武百貨店の売却に反対するストのニュースが飛び込んできて、複雑な気持ちになった。

④『アイネクライネナハトムジーク』 by 伊坂幸太郎

伊坂幸太郎の本は2冊目。
1冊目に読んだのはSFぽい推理小説だったので、これもそうなのかと思い、また、タイトル(モーツァルトの「小夜曲」)から音楽ものかと思ったら、どちらも全然違った。
恋愛ものといってよい、6つの話からなる短編集で、それぞれの話で共通の人物が登場し、微妙に絡み合っている、青山美智子さんの小説の路線といえなくもない。

6つの話の1つ目(アイネクライネ)は、全体としては面白いのだけど、1人どうしても腹の立つ男性がいて、心底は楽しめず。
2つ目~5つ目は、他の話で登場した人物がまた登場して、時間軸も大きく振れて、その後の展開が推理小説の種明かし的になってきて、どんどん先を読みたくなる。普通の会社員から、学生、教師、美容師さんなど、様々な人が登場して、それぞれに問題に立ち向かっていくのがいい。
最後の話(ナハトムジーク)で、すべてが解決するのかと思いきや、丁寧に描かれているのはボクサーの話だけで、ちょっと拍子抜け。その後を知りたかったのはそっちちゃないんだけどな~、とちょっと消化不良に。

あとがきには、この小説が書かれた特殊な経緯が書かれている。
ほほう、となる方もいらっしゃるのかも、だが、個人的には興味なく。

⑤『短編集 素敵な日本人』 by 東野圭吾

東野圭吾の本は、12冊目。
東野圭吾の本は、人間ドラマを重視した後味のよいミステリー小説が主だが、中には『ナミヤ雑貨店の奇蹟』のような不思議な出来事は起こるけどミステリーではない小説もある。
今回読んだ『素敵な日本人』は9編からなる短編集だが、両方のスタイルのものがあるし、近未来を描いたSFのようなものもある。
短編集でも、最近よくある、同じ人が何度も登場してくるとか、何らかの関連がある、という作りではなく、1編ずつが、全く独立した話である。

短編でも1編ずつの内容は濃い。
1編で、中編くらいの展開や満足感がある。
ミステリーと、そうでないものが混ざっていることにより、ちょっとリラックスして読んでいたところで、いきなり事件が起こったりしてびっくりもする。

タイトルから想像される、日本人の話ばかりではなく、外国人が主役のものもあるし、むしろほとんどの話で、何らかの形で外国のことが出てきているような気もする。
目次を見ただけでもわかるが、前半に「正月」「バレンタインディー」「雛祭り」、後半に「クリスマス」、と四季や行事を意識させる内容が含まれている。ここから、日本特有のストーリー展開になり、タイトルも生まれたのだろうか。
解説もないし、特に検索もしていないので、あくまで想像だが。

最後まで飽きることなく、読み続けられるが、読み終わって、この短編の順番は絶妙だな、と思った。

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