みだれ髪の読書記録:2022年2月13日から4月8日に読み終わった本(バトン、ゴリオ爺さん、洋書天国、世界史もの)
1) 『そして、バトンは渡された』 by 瀬尾まいこ
2019年本屋大賞受賞作、映画化もされている。
本屋でも目立っていたので、ちょっと手に取って解説を読んでみる。
「幼い頃に母親を亡くし、海外赴任する父とも別れ継母を選んだ優子。その後も大人の都合に振り回され、高校生の今は20歳しか離れていない“父”と暮らす。血の繋がらない親の間をリレーされながらも出逢う家族皆に愛情をいっぱい注がれてきた彼女自身が伴侶を持つときー。」
家族愛みたいな話だと嫌だなと思いつつ、まあとりあえず読んでみようかと思って図書館に予約してからだいぶ待った。
読み始めて、まあ面白いけど、漫画チックであり得ない展開から、友達とも行き違いからいじめっぽい方向にもなって、さらに嫌だな~と思いながら読み進めていくと、だんだんとはまっていき、最後はうるうる。後味良く終わった。
2) 『歴史入門』 by フェルナン・ブローデル
勉強会で読んだ英検の問題に出てきた、ブローデルさん。
とりあえず入門編?を読んでみることにしたけど、初めの方だけ読んでも、何が言いたいのかわからない感がすでに満載(笑)
この本は、著者の3日間の講演のテキストで、この後刊行される『物質文明・経済・資本主義』という本(これはかなり厚いらしい)の内容について大まかに紹介されている。
解説を入れても180ページ弱で、この本自体はさほど長くない。前後関係がないと意味をなさないかもしれないけど、返却前に、章のタイトルと気になった部分だけ抜き書きしておく。
ちなみに、英検の問題では、著者の『地中海』(正式なタイトルは、『フェリペ2世の時代における地中海と地中海世界』がとりあげられていた。
有名人や歴史的事件だけを追うという従来の歴史の捉え方でなく、まずは地形に注目、そこに住む人々の暮らしにスポットを当て、といった斬新な手法で書かれている歴史書であることと、地域も時代も興味のあるところなので、読んでみたいな~と思った。
でも、図書館にはないし、自分でそろえるには大変、そもそも全部読めるのか?という感じなので、とりあえず入門編と思ってこの本を読んでみたけど、『地中海』を読もうという気力は失う結果に。(笑)
考えてみれば、最近は歴史的事件や有名人ではないところに注目した歴史の本などはたくさん出ているように思う。歴史学者が書いたのではない新書などは、むしろそちらが主流かも。ブローデルさん以前にはそういう本を出そうという人がいなかったのか、だとしたら覚えておくべき人物なのかもしれない。
3)『ゴリオ爺さん』by バルザック(平岡 篤頼訳 新潮文庫)
名前は知っているけど読んだことのない作家シリーズ。
1819年のパリが舞台。ゴリオ爺さんは事業に成功して大金持ちになったけど、娘に大金を使い貧乏な暮らしに。あまり上等ではない宿屋に住んでいる。
この宿屋には個性的な住人が何人かいる。ゴリオのほかに、出世欲旺盛な貧乏学生ラスティニャックと謎の人物ヴォートランなど個性的な人物が何人か暮らしている。
前半はテンポよくゴリオやラスティニャックの転落模様などが描かれていているし、薄汚い下宿と、華々しいけど裏がある社交界との対比などなかなか楽しめる。
ゴリオ爺さんが亡くなるまでが描かれるが、その最後は読んでいるのが苦しくなり、小説とはいえ、早く安らかに眠らせてあげたいと思ってしまう。
他の人がその後どうなったのか?中途半端だなあ~と思ったが、解説を読むと、この小説の登場人物がまたほかの小説で登場したり、あるいは先に登場していた人物がこの小説に出てきたりしているそうで、いろいろ読めば、ちゃんとその後もわかるらしい。
といっても、今のところこれ以上追うつもりはなく、とりあえずバルザック1冊読んだ、ということでよしとしよう。
4)『物語 カタルーニャの歴史 知られざる地中海帝国の滅亡(増補版)』by 田澤 耕(中公新書)
先日「ミロ」展のお土産物売り場に置いてあるのを見て、そういえばこの本積読していたな、と思い、読み始めた。
カタルーニャとは、現在ではバルセロナを含むスペインの一地方とフランスの一部を指すが、かつてはカタルーニャ・アラゴン連合王国として繁栄し、14~5世紀には広大な地域(シチリア島やサルディーニャ島などのイタリアの一部やギリシャなども)を支配していた。
現代では、共和国としての独立を目指した運動も盛んだが、スペイン政府は住民投票ですら違憲として弾圧するなど、前途多難だ。
今まで「スペインの歴史」に関する本は何冊か読んだし、ずいぶん前に自分で順を追ってまとめたこともある。でも、今まで勉強してきたのは、「スペインの歴史」ではなく、「カスティーヤの歴史」だったことに、この本を読んで気づかされる。
第1章 カタルーニャの誕生
第2章 栄光への助走
第3章「征服王」ジャウマ1世
第4章 地中海の覇者
このあたりは、カタルーニャが発展してく過程が描かれているが、まったく知らない話や人物ばかり。でも、他の「物語」シリーズと同様、事件の羅列ではなく物語として構成されているので人物の輪郭もわかってきて、くじけずに読むことができた。
第5章 停滞、そして凋落
第6章 カスティーリャの隆盛、カタルーニャの衰退
終章 カタルーニャは独立するのか
タイトル通り、カタルーニャが衰退していく状況が描かれているが、皮肉なことに、この辺りは、よく知っている話が多い。
カスティーヤの女王イサベルとアラゴンの王フェルディナンドの結婚により、両国が統一に向かい、2人の孫のカルロスは神聖ローマ皇帝として、ドイツやフランドル、アメリカ大陸までも支配する。世界史的にも有名な時代だ。
カタルーニャは飲み込まれた感じだが、このころは経済も安定していたのでカタルーニャ人も大きな不満を抱いていなかったらしい。
カタルーニャ語などの文化が社会の表面から姿を消していっても、一般庶民や農民たちは生活言語としてカタルーニャ語を使い続け、ガウディ、バルサなども有名になる。
内戦時はカタルーニャ語の使用禁止などの弾圧を受け、今は広く自由が認められてきたものの、完全に解決されたわけではない。
バルセロナオリンピックは、我々が考える以上に、カタルーニャにとっては意味があったようだ。
結構じっくり読めたが、すぐ忘れると思うので(笑)また読み返したい。
5)『洋書天国へようこそ 深読みモダンクラシックス』 by 宮脇孝雄(アルク)
だいぶ前に友人に紹介してもらい、少しずつ楽しみながら読み、最近読み終わった。
261ページで49冊の洋書を紹介している。
1冊あたり5ページほどで作品と作者の紹介のほか、部分的な引用や日本語訳もついているので、実際にちょっと読んだ気にもなれる。
「マガジンアルク」や「ALCOM WORD」で連載されていた「今月のマスターピース」の中から作品を選び、加筆修正、再構成したもの、ということで、なるほど、読んだ覚えのある個所もあった。
49冊のうち英語で読んだことのある本は3冊。
「風に乗ってきたメアリー・ポピンズ(Mary Poppins)」 by P. L. Travers
「ライオンと魔女 ナルニア国ものがたり(The Lion, the Witch, and the Wardrobe)」 by C. S. Lewis
「床下の小人たち(The Borrowers)」 by Mary Norton
日本語では読んだことがあるけど、英語でも読んでみたい本は4冊。
「情事の終わり(The End Of the Affair)」 by Graham Green
「スタイルズ荘の怪事件(The Mysterious Affair at Styles)」 by Agatha Christie
「クリスマスキャロル(A Christmas Carol)」by Charles Dickens
「秘密の花園(The Secret Garden)」 by Frances Hodgson Burnet
映画で見たけど本は読んでいない、英語で読んでみたいものは3冊
「ゴールドフィンガー(Goldfinger)」 by Ian Fleming
「卒業(The Graduate)」 by Charles Webb
「ラブストーリー(Love Story)」 by Erich Segal
まったく読んだことがないけど読んでみたい、のはたくさんあるけど、タイトルを知っていたものだけ挙げると、6冊。
「移動祝祭日(A Movable Feast)」 by Ernest Hemingway
「チップス先生さようなら(Goodbye Mr. Chips)」 by James Hilton
「二十日鼠と人間(Of Mice and Men)」 by John Steinbeck
「ガラスの動物園(The Glass Menagerie)」 by Tennessee Williams
「時計仕掛けのオレンジ(A Clockwork Orange)」 by Anthony Burgess
「アラバマ物語(To Kill Mockingbird)」 by Harper Lea
というわけでいつか英語で読んでみたい作品はだいぶ絞ったつもりだけど、これだけで13冊。いつになるかな~。
この本のように、あらすじなどを簡単に紹介したような本は、いろいろちょっとずつ読めて楽しいのだけど、読みたい本が増えてしまうのが困りものだ。
6)『スペイン史10講』by 立石博高(岩波新書)
中公新書の「物語」シリーズに比べると、岩波新書の「10講」シリーズは堅いイメージがあったが、やはりその通り。
ただ、今回は『物語 カタルーニャの歴史』を読んだ直後ということもあり、該当する部分を両面から見ることができた分、楽しめた気がする。たとえば、『カタルーニャの歴史』で、カタルーニャ・アラゴン連合王国と呼んでいた国をこちらの本ではアラゴン王国と呼んでいたりする。(通常の歴史の本では、アラゴン王国というのが一般的。)
ある程度の知識があって、一度きちんと歴史を追ってみたいという方には、すべての項の初めに簡単な年表もついているし、コンパクトのまとまっていてよい資料となるかも。
そのうちまた読み返すとして(そんな本ばかりたまるな~)、講のタイトルだけ。
第1講「スペイン」の歴史の始まり 黎明期~4世紀
第2講 西ゴート王国からアンダルスへ 5世紀~15世紀
第3講 多様性の中の中世世界 8世紀~15世紀後半
第4講 カトリック両王の統治からスペイン王国へ 15世紀末~16世紀
第5講 スペイン君主国の衰退 17世紀
第6講 カトリック的啓蒙から旧体制の危機へ 18世紀~19世紀初頭
第7講 革命と反革命の時代 19世紀前半~1870年代
第8講 王政復古体制からスペイン内戦まで 1870年代~1930年代
第9講 フランコの独裁体制 1939年~1975年
第10講 民主化の進展と自治州国家体制 1970年代~現在
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