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みだれ髪の読書記録:2023年1月31日~3月30日(なんとなくクリスタル、新ジャンル別洋書ベスト500プラス他)

この期間に読んだ本は、以下の10冊。

①    『レオナルド・ダ・ヴィンチ』(上)(下) by ウォルター・アイザックソン

(土方奈美訳、文春文庫)
これはすでに記事を書いた。

②    『物語で読む国宝の謎100』by かみゆ歴史編集部

(イースト新書Q)

タイトルに惹かれて、つい買ってしまった本。
第1章 知っておきたい国宝の基礎知識 と、第7章 データで見る国宝の謎 で、基本的な説明や、国宝第1号は何か、といった全体的な説明があり、
第2章~第6章で、「絵画」、「彫刻」、「工芸品」、「考古・古文書」、「建造物」にわけて、具体的な国宝の作品などが説明されている。だいたい見開き2ページで1つの作品もしくは2つの作品がカラー写真と説明付きで、どこの博物館が所蔵しているなどもでている。

これこそ見たい、というものの写真が無かったり、なんてこともあるが、概ねわかりやすく、リファレンスにもなる。
正式名称を知らなくて、それだったのか!なんてことも。
たとえば、奈良の大仏は「廬舎那仏像」で、鎌倉の大仏は「阿弥陀如来像」、縄文土器は「縄文雪炎(ゆきほむら)。千体千手観音立像」がある三十三間堂は、妙法院蓮華王院。すぐ忘れるけどね~。

③   『バスが来ましたよ』by 由美村嬉々(文)、松本春野(絵)

(絵本、アリス館)
難病に侵され失明した男性が、地元の小学生に10年以上サポートされ、定年まで働き続けることができた、という実話がもとになった絵本。
難しい小説などより、よほど心にしみる。

④    『木曜日にはココアを』 by 青山美智子

青山美智子さんの本,、3冊目。
これは記事を書いた。

⑤    『なんとなく、クリスタル』by 田中康夫

SNSでの友人の記録を読み(決してお勧めはしていらっしゃらなかったけど)、なんとなく読みたくなり、図書館で借りてきた。
斬新と言えるのは、まずスタイル。右ページに本文、左ページは著者の注釈、この形を最後まで守っている。
注釈の多さは、ダンテの『神曲』並みだが、注釈で説明されているのは、高尚難解なものではなく、ファッションやらレストランやらのブランドが8割くらい。そういうものには興味がないので、注釈を読んだのは1割くらいだ。
別にわからなくても、ストーリー自体は難しくないので理解できる。
1980年6月、主人公の「私」は何となく気分の良いものに囲まれ(だいたいはブランド物)、クリスタルな生活を送っている。大きな事件もなく、この先どうなるかわからないまま終わる、という話だ。

その程度のストーリーでも、この小説が話題になったのは、これだけブランド名が連呼されると、関係者はコマーシャルになるから、なんとかその部分を引用してもらおうと思うはず、そんな企業が無数にあって、話題になったということが大きいのではないか、と想像する。

このような生活を「今時(1980年当時の)の大学生の実態」だと思ってショックを受ける大人たちも多かったかもしれない。中にはそんな人々もいたのかもしれないが、「普通の大学生」は、ここまで裕福でもないし、ここまで自由でもない。
そもそも、主人公の「私」を「大学生」と思ってはいけない。月に40万も稼ぐモデルなのだ。同棲相手の大学5年生も、バンドマン。2人とも経済的に自立していて、かつ結婚しているわけでもないから、誰と付き合おうと不倫ではない。そういう大人の2人が、どんなブランドを好もうと何も非難されることはない。

全体的な文章のうまさは否定しないけど、「濡れ場」の描写になると、女性目線で書いているはずの小説が突然男性目線になってしまう。
その辺を除けば、予想よりは楽しめたかも。
何故かと言えば、地名がほぼ知っている場所ばかりだから、というのは大きい。
六本木や渋谷など、大学生当時ではないけど、よく行った場所ばかりで、道路のイメージまでわいてくるし、関町だの成増だの、マニアックで誰も知らないだろう場所だけど、昔住んでいた場所や週に1度は行く場所などが登場するので、それだけでうれしくなるのだ。

⑥    『洋書コンシェルジュ渡辺由佳里が選ぶ 新ジャンル別洋書ベスト500プラス』by渡辺由佳里

(コスモピア株式会社)

洋書をザクザク読める方には宝の山のような本かもしれないが、年に数冊がやっとの私には紹介されている本が多すぎて手に負えない。

7つのパートに分かれていて、1ページを使って詳しく紹介している本もあれば、タイトルだけ載せているものもあるが、概ね1ページに数冊、簡単なあらすじと、発行年やページ数、読みやすさレベルなどの情報が載っている。
パートは以下の通り。
1. 古典・モダンクラシック
2. 文芸
3. ミステリ
4. SF・ファンタジー・ホラー
5. ラブロマンス
6. ノンフィクション
7. 児童書・YA

1. 古典・モダンクラシックは、191冊が紹介されているが、そのうち日本語ででも読んだ本は40冊、読んでいる途中の本が3冊。このくらいの割合だと、他の本も読んでみたいなあという気になる。
7. 児童書も、81冊中20冊は読んでいて、うち10冊は英語でなので、この辺りも比較的手に取りやすいかな、と思った。

しかし、ほかのパート、というかこの本のメインの部分は、読んだ本がほとんどなく、聞いたこともないものが多数で、説明を読むのも面倒になり、2行くらい読んでパス、みたいなものが多かった。

返却日が迫っていたので、とりあえず、気になったものだけメモ、してたらそれだけでノート9ページ分になってしまった。このリスト使う日が来るんだろうか。(笑)

⑦    『変な家』 by 雨穴

本屋でやけに目立っていたけど、買うほどでもないかな、と思い図書館に予約。
さほど待たずに借りられた。
表紙に家の間取り図がのっているので、何か設計ミスの家でも集めた本なんだろうか、と思いきや、全然違った。
おかしな間取り図から事件を考察する、新手のミステリー小説。
あまり一般的ではない設定だけど、展開がうまいのでどんどん読みたくなってすぐ読み終わった。

⑧    『月曜日の抹茶カフェ』 by 青山美智子

青山美智子さんの本、4冊目。
これは記事を書いた。

⑨   『ただいま神様当番』by 青山美智子

青山美智子さんの本、5冊目。
これも記事を書いた。

⑩    『33年後のなんとなく、クリスタル』 by 田中康夫

(河出書房新社)

なんとなく、クリスタル』の続編があるというので、記憶が新しいうちに、と読んでみた。
なんとなく、クリスタル』で登場する、女子大生の由利の33年後がどうなっているのか、興味深く読み始めた。普通の主婦になっているわけではないが、ある程度成功し、まともな生活をしていることにやや驚かされる。

33年後』の主人公は彼女だけではない。著者の田中康夫氏の私小説といってもよいかもしれないし、様々な女性たち(でも庶民というよりちょっと上流階級かな)も登場する。「ヤスオ」が「ユリ」と共通の友人である「エミコ」とばったり出会うところから話は始まる。その後「エミコ」が幹事の女子会に「ヤスオ」が男一人で参加したり、様々な組み合わせの女性たちと食事をともにしながら過去や現在について語る。

前作と同様、注釈は膨大だが、それは巻末に全部まとまっている。
また、その注釈の内容も、小説の内容自体も、ブランド物の連呼に終わるわけではなく、様々な社会問題も織り込まれていたりする。特に、田中氏の長野県知事時代の「ダム問題」は、当時はよくわからなかったが、そういうことだったのか、と納得。
終盤は、震災時の話や、南アフリカの話なども、盛り込まれていて興味深い。
「ヤスオ」の女性関係だけはいただけないが、女子の微妙な友達関係の描写の鋭さや、全体的にユーモアあふれる雰囲気に免じて許すとしよう。

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