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【連載小説】陽炎の彫刻

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不思議な男との、どこにでもあるような交遊録。全18本。
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2022年6月の記事一覧

【連載小説】『陽炎の彫刻』9

【連載小説】『陽炎の彫刻』9

 僕は、滋賀に向かう電車の中にいる。
 京都駅の新幹線ホームから、在来線の大津の方に向かう電車に乗って、出発を待っていた。電車の遅延に見舞われていた。平日の昼間なので、そんなに乗客は多くない。秋も終盤になって、日差しも枯れていくようだった。電車の中の人工的な温かさに身を浸していると、出発を待つ電車の開けっ放しのドアから入ってくる少し冷たい外気も心地良く感じた。
 僕は梶川君の故郷に向かっていた。梶

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【連載小説】『陽炎の彫刻』終章

梶川雄太君へ

 この手紙を書いているのは、秋の初めの頃で、金木犀が薫るにはまだ早い。君がいなくなって4か月くらい経った頃だ。夏の暑さはもうない。そんな時期だ。
 僕は、手紙を書くというのには慣れていないから、とても困惑している。が、君の携帯電話も警察が預かって、その後君の両親の元に返されたから、こういう形しか連絡をとる方法がないように思えたから。こういうのは最初に、世間話でもするものなのだろうか

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