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外資IT企業 管理部門目線でのカルチャー比較と、転職・取引に役立つヒント

外資IT系企業では規模に関わらずマトリクス型の組織がほとんど。各部門は社長であるカントリーマネージャーの配下にあるわけではなく、海外の組織直属、業務も海外のプロジェクト配下というケースがほとんどです。(カントリーマネージャー職は営業系部門のトップが委任されることが多い)
組織形態は似ていますが、一口に外資IT企業といっても、扱うテクノロジーや企業規模、本社のある国の特性、本社のコントロールが強いかローカルのリーダーシップの影響力が強いかなどから、社内文化は様々です。
私自身の社内経験(大手老舗と小中規模・ベンチャー系)、業界団体での活動や業務などで様々な企業の方からお話を伺い、多くのオフィスを見学させていただいた経験から、私的にカルチャーを大別しました(かなり私的でざっくり、勝手な分類です)。
転職の際や取引業務をする際には、カルチャーを理解してコミュニケーションして行くことが必須ですので、参考までに私見を書いてみます。


大手老舗系

1970年代後半からインターネットバブル期(2000年代初頭)に成長した大手企業群。本社や開発拠点をカリフォルニア州シリコンバレーのサンノゼや、ノースカロライナ州のRTP: Research Triangle Parkに持っているような大手。

大手老舗系企業は日本に根付いて長く規模も大きく、日系企業出身のリーダーやマネージャーも多数、大卒新入社員を多く雇用するため、文化は一番日系企業に近いと感じます。開発部門が国内にあることは稀で(ローカライゼーションのエンジニア部門がある企業はありますが)、取引先も官公庁や地方自治体、大手日系企業が多いため、毎日スーツを着るワーカーも多く必然的に日本的な文化が根付くようです。日本独自の組織やプロセスがあったり、日本独自の組織文化が強いので、日系大手企業からの転職は一番しやすいと思いますが、いわゆる「外資」的な欧米文化を期待している人には物足りないでしょう。IT業界の発達とともに様々な法令に準拠してきた経緯もあってかガイドラインや規定が整備されて(多すぎ?)ガバナンスはしっかりしていますが、その分新興企業に比較しスピード感には劣ります。在宅・リモート・ハイブリッドワーク制度も浸透、残業や社員の健康管理も厳しいためホワイトな文化のところが多く、転職には安心ですが組織が大きいため中間管理職も多く風通しが悪いことも。比較的社内トレーニングがしっかりしているので、基本的なビジネスマナーや業務に必要な基礎的な研修を受けられます。(いずれにしても直属の上司やチーム文化・働き方が実際にはどうなのかは要チェック! 部門の方針で差があるケースも)。こういった企業は取引する際には、コンプライアンス重視のため取引相手企業にも社会的な責任を強く求めるようになっています。

ビッグ・テック系

GAFAに代表される、2000年代後半から台頭し現在も市場を支配、ITプラットフォームビジネスを展開しているような大手企業群を想定しています。

新興企業で歴史が浅いことや、大手老舗に対抗していくクリエイティビティ、スピードを求められてきたビジネスのため、社内規定やガイドラインなどは必要不可欠なところのみを独自のやり方でうまく取り入れ、できるだけシンプルかつフラットな組織体制で事業を営んでいる印象。合理的で各自の業務に集中できそうだと感じます。また企業の組織文化を大切にしているところが多く、入社後に徹底して企業文化を植え付ける育成プログラムが用意されているようです。「グローバルな企業文化の濃度がローカルの国民性や文化の濃度よりも高い」という印象で、日系企業的な文化は薄い気がします。転職の場合、変化に柔軟に順応でき、その企業の企業文化や業務のやり方が自分に合えば幸せですが、合わなかった場合には入社してまもなく自ら去る決断をするケースもあるようですので、その点は慎重にご判断を。
BtoCビジネス、クラウドに対応した新しいテクノロジーを扱う人材が多く、ワーカーの平均年齢も老舗企業に比較し若い傾向があります。その分、やりがいのある仕事を任せて貰える機会は大手老舗よりも早いのでは。取引先もメディアや商業系などマーケティング関連や個人ユーザー相手が多いため服装もそこそこ自由でカジュアルなワーカーがほとんど。企業としての勢いもありますので、他社に比較してワーカーに対しての飲食や健康管理からラーニングまで、多様で楽しいサービスや機会が用意されているようです。ただしオフィスへの出社や会社への強いエンゲージメントを求める傾向が見受けられます。働き方の面では納得できないワーカーの声も耳にしており、グレーなところもありそうだと感じます。
わたしはこういった企業で働く知人からオフィスを見せていただいたり話を伺っていますが、オフレコでも内部のことを教えてもらうことは難しいです。社外に社内情報を開示しない旨の守秘義務契約をワーカーと結んでいる企業も多く、広報が提供する公的な情報以外の詳細はほとんど目にできません。(この企業と取引していても、取引先であるということも開示できない取引条件も含まれていることが多い様子。)

小中規模、ベンチャー系

上記2種以外の、小中規模、BtoB・BtoCや、インフラハード系、ソフト系、クラウド系などのテクノロジー企業を包括しています。(ちなみに、外資小中規模ITにSI分野の企業は存在しませんので、含んでおりません。)

テクノロジー分野等によって文化は異なりますが、上記2タイプの企業との違いを、ざっくりおおまかな私見でお話します。(個人的にはわたしはベンチャー系企業文化が一番好きです。)
日本の業務が小中規模なので、本社やリージョンから直接情報も入って来やすく海外とのミーティングに参加することもしばしば、海外との距離感が近く感じられます。社内言語も英語(または本社機能のある地の言語)のことがほとんど。立場や役割にもよりますが、組織がコンパクトなため日々海外とのやり取りやグローバルなプロジェクトへの参画チャンスが増え、自分の成果や貢献がプロダクトやサービスなどに反映されやすい、組織内での自身の存在意義やモチベーションを実感しやすい、ということがあります。必然的に働く時間帯や場所、働き方もグローバル、フレキシブルになり、「外資」文化が醸成されているので、語学力や異文化コミュニケーション能力、グローバルで通用するテクノロジースキルやビジネススキルが求められます。(ジュニアのポジション、ローカルの顧客窓口業務担当の場合は日本語だけでもなんとかなることも多いですが)
小中規模の企業では大企業との競争に勝つためにも、人材獲得が鍵となります。そのため、即戦力となる能力、グローバルで通用するスキルや知識を持った人材であれば大手企業以上の年俸提示・好条件での転職も期待できます。企業によっては年俸のかわりに充実した教育支援制度があるケースも耳にします。社内には限られた人材しか居ないため、常にワーカーに新しい知識を学んでもらうために外部の教育機関利用が奨励され、会社がその費用を負担するケースは少なくありません。
規模がコンパクトなため、少人数でワーカー同士が仲の良い企業も多いけれど、縦割りな部門ごとに文化が異なり仲が悪いケースもあります(買収された別企業のチームだったりします) 。大手企業以上に組織変更や部門改変、転職する人、会社が買収されたり買収したりする機会が多く、社員数はかなり乱高下します(多くの小中規模の外資企業は社員数を公開していません) 。求められるテクノロジーやサービスの変化、ビジネスの状況によりリストラや日本からの撤退などもありえますし、安定性を期待することはできません。変化に対応できるように常に準備をして置く覚悟は必要になります。日系企業のように部門のアシスタントも充実して居ないため、役職者と言えども様々なことを自分で解決していく必要があり、能動的に自分で手を動かす人でないと務まりません。取引する上でも、プロジェクトの途中で担当が変わることも想定し、承認権限のある人、ステークホルダーを確認しながら取引することを心がける必要があります。

「外資IT株式会社」とLinkedin活用のすすめ

上記のような、組織規模が小さい外資企業内で同じ役職、立場や業務にずっと居続けることはほぼ不可能です。自身の成長や求めるキャリアパス、ライフスタイルの変化に応じて海外拠点への転籍や、転職は自然なことだと思います。わたしにとっては外資企業間で転職することは、大企業の組織異動に相当する感覚で、業界全体を「外資IT株式会社」として捉えてきました。
そこで役立っているのがLinkedinです。そもそもLinkedinを利用し始めたきっかけは退職した人達や海外の同僚と繋がるためで、アラムナイ・ネットワーク用のツールだったのですが、外にもネットワーキングで知り合いになった方とつながり今では自身の仕事用ネットワークと情報収集の重要なツールとなっています。FacebookやInstagramとは異なる、Linkedinでのビジネスを前提としたゆるいつながり、距離感や文化は心地よいと感じます。
実際に外資系企業の転職や取引先企業を探す際にLinkedinはかなり活用されてきました。わたしも業務で会社情報をLinkedin上で検索し、知人が働いていないか、誰か紹介してくれる人が居ないかなどを調べます。実際に転職した際にも情報収集で利用しました。Linkedinを介して、採用したい人材の履歴を確認したり、Messaging機能を介して採用したい人材のリファレンスを知人から求められることもよくあります。
外資企業への転職をしたい、取引相手とつながりを深めたい、というケースではぜひ活用(英語メインで)をお勧めします。


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