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アトピー周辺知識13: ヒートショックプロテイン

 酵素と共に昨今話題になっているものとしてサウナがある。そしてサウナによる効果としては血流促進による疲労回復・安眠・老廃物の排出・交代浴による自律神経の調整・HSP(ヒートショックプロテイン)の生成が挙げられる。また免疫力の向上や肌の保護・修復も期待出来る。

 疲労回復や安眠等の効果は分かり易いものだが、後に挙げたHSP(ヒートショックプロテイン)とはなんだろうか。

・HSP(ヒートショックプロテイン)とは

 HSP(ヒートショックプロテイン=熱ショックタンパク質、以下HSPとのみ表記)とは細胞が様々なストレスに曝された際に細胞を保護する目的で生成されるタンパク質であり、ストレス・タンパク質とも呼ばれる。このHSP生成機能は我々人類からバクテリアまで生物に広く備わっているものであり、20世紀半ば頃には発見され古くから知られている。

 HSPはストレスによるタンパク質合成の失敗やタンパク質の変性により正常に機能しない謂わば不良品タンパク質を修復し、また修復不可能なものについては凝集・隔離して、それらは後に分解される。

 上記不良品タンパク質の細胞内での蓄積は神経変性疾患であるアルツハイマー病やパーキンソン病を引き起こすと考えられている(HSP生成機能は老化により衰えるため、当然に高齢者に多い疾患となる)。また明確な疾患へと繋がらずとも傷の修復が遅くなる、体調不良からの回復が遅れる等の不調に陥りやすくなる。

・HSP療法

 HSP生成機能の低下が様々な疾患へと繋がる一方で、その機能を意図して活性化させる事で治療へと繋げる療法も存在する。有名なものだと専門的なガン温熱療法が挙げられるだろうか(免疫システム細胞に対する制御作用を持つサイトカインであるIL21が関わり、これはがん細胞の破壊のみならずアレルゲン特異的IgE産生およびマスト細胞脱顆粒を制限して皮膚過敏反応を抑制する)。

 そもそも細胞内のタンパク質は温熱ストレスに対する感受性が極めて高い。熱によりタンパク質が容易に変性する事(肉や卵料理を想像すると分かり易い)、そして不良品タンパク質の凝集が熱を伴う事から根本的に温熱ストレスに対し敏感であるべきなのだろう。さらに感染症への発熱反応からくる過度な炎症反応の抑制にもHSPは作用する。それらの性質を利用して意図してHSPを増加生成させることを狙うものである。

 そして付け加えるならば、これはアトピー性皮膚炎に対しても有効な治療法である。特にサウナの使用は抗炎症性(抗酸化作用を持つ)HSPを増加させて慢性炎症を抑えるのに役立ち、私自身グルテンを摂取しながらもサウナを日々利用する事で一時的にアトピー症状をほぼ完全に抑え込む事が出来た。

・HSP療法としての湯治

 何もHSP療法は専門的なガン温熱療法だけではない。始めに挙げたサウナもそうだが、日本伝統の温熱療法として湯治が挙げられる。

 このnoteではすでにミネラルの経皮吸収手段として有用であると紹介したが、それだけではなかった様である。

 具体的には41度前後の湯に10から20分程浸かり、体温を1.5度程上昇させ(体温38度程度を目指す)その後にそれを10分程度維持する事を目標とする(合計の入浴時間40度なら20分、42度なら5分から10分と変化し、入浴剤による血行促進効果にてある程度短縮可、また時間は短くても良いので高い湯温の方が短期的には効果も高い模様)。

 サウナと異なるのは入浴後に水風呂等で体温を下げない点である。高い体温を長く保持して積極的に汗をかく。自身も試してみたが大量に発汗する事になるので(コップ1杯程の汗を入浴中でなく入浴後にかく程)、服を着ずに浴室等で外気浴して過ごし、最後に汗を湯で流してから着衣した方が良いだろう。

 因みに私の場合は42度の湯に全身浴5分強→半身浴や足湯で2・3分休憩→再度全身浴で合計15分程度入浴し、そのまま外気浴を10分程行ない緩やかに体温を下げた。42 度での入浴でスチームサウナと同等とまでは行かないものの、ある程度それに近い効果が得られている様に感じた。

 ヒートショックプロテインとは言え必要なのは温熱刺激のみであり、別のヒートショック(血圧の乱高下に伴う循環器へのダメージ)を引き起こす様な体温の急低下はHSP生成自体には必要無い事に留意する。

 昔から熱い湯(大体は42度以上)に浸かって疲れを取る事は一般的な療養法であったが、そこには確かな根拠が存在した訳である(昨今は余り推奨されなくなっている…)。

 このHSP療法であるが、いざやってみると温泉での湯治が大変に便利だと分かる。先ず温泉成分が血行促進により温熱療法の効果を高め、掛け流しによる湯温の維持により体温調整が容易となる(併せて必須ミネラルの経皮吸収による補給も出来る)。さらに外気浴による緩やかな体温の降下や、浴衣での保温も治療法の効果を高める。将に理に適っているのだ。

 詳細は下部リンクを参考のこと。


・HSP療法と栄養

 HSP療法はその性質上熱がタンパク質を壊し肌の乾燥を招く(直接的に皮膚のセラミド成分が流出する)。勿論それ以上の恩恵があるのだが、やはり頻度は週2日から3日程度に抑えるべきである(明確な治療行為として行う場合はこの限りでない)。

 またタンパク質合成に必要なものとして同じくタンパク質(特に真皮層の形成に必須のコラーゲン)や各種ビタミンやミネラルの摂取をする事が望ましい。加えてHSP生成を増加させるアスパラプロリンを含むアスパラガスを摂取するのも良い様である。

 当然の事だが大量の汗をかくため入浴中から入浴後も水分補給は必須である(体温は下げない様に温い飲み物で行う)。

・消化酵素活用との共通点

 話は変わるが消化酵素の記事にてサプリメントでの摂取に言及した。サプリメントや消化酵素を含む胃腸薬は体質的に弱い人間の補助にも効果的だが、実の所アスリート等の肉体的に頑強でありつつもそれを追い込むように酷使する人間にも有効である。

 この様な対極的な人間に同時に有効であるというのはサウナ含む温熱療法も同様かもしれない(サウナが身体を酷使しがちな人に好まれる一方、温泉は多様な疾患や体調不良の改善に効果的である)。

 …因みにHSP療法の説明にアトピーが含まれる事が少ないのは、一般的過ぎるからなのか注目度が低いからなのか、はたまた皮膚科学軽視の一環なのか…若干興味を惹く所ではある。

 一応HSPに関わる研究はエピジェネティクスと同様に最新の研究に関わりがあり、旧くも新しい分野であると言える。


追記:冷水浴・水シャワーの効果

 「水シャワーには、副腎皮質ホルモンの分泌を活発にする働きもあります。副腎皮質ホルモンは、身体の機能を正常に保ち、炎症を抑えるとともに、身体の免疫力を高める役割を持っています」との事。

 つまりはHSP療法と冷水浴にてHSP生成と副腎皮質ホルモンの分泌を促し、重ねて免疫機能と循環器機能の向上を図るのがサウナ浴という健康法の様である(抗酸化作用を持つHSPと抗炎症作用を持つコルチゾールの相乗効果により、効果的に炎症部に作用し疲労や症状を治める)。


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