好きは希望の種を呼び込む

自由になりたい。

最近そんなことをよく考えている。

子供のころの気持ち

マウンテンバイクが楽しくなって、毎週末トレイルに出かけるのを楽しみにしているのだが、私がマウンテンバイクが好きな最も大きな理由の1つが、マウンテンバイクに乗ってる時間は、子供になれるということだ。子供の時、それも男とか女とかそういう意識に縛られていなかった自由だったあの頃の気持ちだ。

幼稚園の頃は、男とか女とかそういう感覚があまりなくて、男の子と女の子がいるという理解はあったけど、だからなに?って感じだった。幼稚園で夏に簡易プールで遊ぶ日は、男の子も女の子もパンツ一丁で水遊びしてた。幼稚園の制服は男の子はズボンで女の子はスカートだったから、スカートめくりをしてくる男の子がいて嫌だなあ、とか思ってたけど。

遊ぶときは女の子と遊ばなきゃとか思ったこともなかったし、かけっこだって、男の子が早いってわけでもなかった。男の子も女の子もあまり違いはなくて、とても自由だった気がする。

マウンテンバイクのライダーは圧倒的に男性の方が多いけれど、マウンテンバイクに乗るとその人が「どのくらいのスキルレベルでどのくらいのスピードで乗るか」ということが一緒に楽しむための重要な要素だったりするので、あまり男だとか女だとかいうことが関係ない。

マイノリティーの壁を越える?

マウンテンバイクに乗るようになって、グループライドに参加したり、一人でトレイルに行ったりすると、トレイルで会うライダーたちは、だいたい気さくに挨拶してくれる。アメリカで日本人として生活する私にとっては、その気さくさが思いのほかこころに沁みる。

移民の国アメリカといえども、マイノリティーとしての意識が深く根付いてしまっている自分は、どこか人の集まる場所へ行っても部外者、またはみそっかす的な気持ちで存在することに慣れてしまった。学校行事など人の集まる場所へ行っても、わざわざ自分に興味を示すような人はいない。どちらかといえば、見た目や、英語のアクセント、またはよくわからない何らかの理由で、私を相手にしたくなさそうな素振りの人だって少なくない。

だから、そんなことお構いなしに話しかけてくれて、輪に入れてくれるようなオープンさで接してもらうと、本当に本当に嬉しく、心が躍る。マウンテンバイクを通して出会う人たちは、国籍、人種、文化、性別といった枠が良い具合に外れて、「ライダー」として関わってくれる気がする。

自由になった結果?

こうして、「ライダー」として過ごす時間が楽しくて、いろいろな人との出会ったり、話したりする機会に恵まれる中で、今までの自分とは違う、こんな自分が居たんだと気づくこともしばしば。

例えば、バイクに乗っているときは、誰にでも挨拶できてしまう自分。同じライダーだったら、通りすがり誰でも挨拶する。相手が挨拶を返してこなくても全然気にならない。なぜだろう?(笑)

それから、バイクに乗ってるときには知らないライダーに話しかけられても物怖じしないで、世間話ができてしまう。なぜだろう??(笑)

先週の土曜日は、誰も相手が見つからずソロライドに行って、途中で小休憩していたところに、60代くらいのおじさんがやってきた。彼も一人で乗っていて、挨拶されたのをきっかけに話していると、そのトレイルで週2,3回のペースで乗りに来ており、かれこれ30年は乗っているとのこと。そのうち私が行ったことのないセクションをそのおじさんが案内してくれることになり、おじさんのあとを付いて、知らなかった秘密のトレイル(?)を冒険することになった。1時間で終わるはずだったソロライドが、気が付けば3時間超のアドベンチャーライドになっていた(笑)。

おじさん、60代なのに元気いっぱいでエネルギーに満ちている。木の根が張り巡らされた場所や、傾斜を横切るように走る狭いトレイルの道もスイスイと進んでいく。私が道に迷わないよう、所々で止まって待っていてくれるけど、追いついたと思うとすぐ見えなくなる。「マウンテンバイクは体にも脳にも、精神にもすべてにおいてもとっても良いから、君も乗りつづけるといいよ!」と励まされた。最後には記念のセルフィーを一緒に撮影して、電話番号を交換して、また一緒に乗ろうね!と約束して帰ってきた。

暑さもあって、普段は長くても1時間半で終わらせるライドを、その倍の時間、新しいトレイルを冒険して興奮の連続だったのもすごかったけど、トレイルで会ったおじさんと意気投合して、知らなかった秘密のトレイルの冒険して帰ってくるなんて、なんてワイルドな朝だったんだろうって自分でも笑ってしまった。

(もちろん、自分の安全は自分で確保しなければならないし、女性として、大人として責任をとれる行動をとることは大前提だけれど。)

自分のままで

こういった出会いや経験に恵まれるのが、マウンテンバイクを初めて一番嬉しいこと。自分は友達がいないってずっと思っていたけど、何か私に欠陥があったとかでなくて、ただ心から楽しいと思えるものに出会えて、それを楽しんでいるだけで、私は私のままでいいんだ。そう思えるようになってきた。

外国人としてアメリカで暮らし始めていると、どこかで「英語が第一言語のように喋れない」「会話が100%理解できない」「文化や習慣など知らないことがたくさんある」という小さな不安が積み重なって、自分に自信が持てなかったり、「自分なんて」と無意識に思っていたところがある。けれど、そうした殻から少し自由になるきっかけをマウンテンバイクは私に与えてくれたんだ。

一つ一つの出会いが宇宙からの贈り物のように奇跡だと思う。一つ一つの出会いがどんなふうに展開して、どんな結末を迎えるのか誰にもわからない。けれどそれは、今まで何もなかった私のお庭に、希望という名の種がポトポトと降ってきたような、そんな感じがしている。

これからも自分のお庭を、好きや楽しいや優しい気持ちで温かくふわふわの土壌に整えて、たくさんのキラキラした種が降ってくるのを集めていこう。どんなものが育つのか楽しみだ。


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