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【短編小説】異世界:魔法使い(風系)が雇われて・下

■本文
 そして再開直後、一人目のターゲットに狙いを定めます。

「よし! 次はあれだ! ヴァン!」

「は、はい! ・・・ええ“っ!?」

 プラッテ様が指さす相手を見て、私は驚いてしまいます。何故なら、相手はなんと私の幼馴染かつ憧れのルイーゼちゃんではないですか!
 このままスカートめくりをすればきっと嫌われる! ・・・だけど、ルイーゼちゃんのおパンツを見てみたいという欲求が勝り、

(ごめん、ルイーゼちゃん! 僕の本心じゃないんだ!)

そう心の中で謝りつつ、自ら編み出したスカートめくりの風魔法、その名も『舞ッチング』を繰り出しました。

「きゃ~~~~!!」

「「おおっ・・・ え“!?」」

 慌てふためくルイーゼちゃんのパンツを見て、私は絶句してしまいます。
なんと、黒のTバックでした。
 あまりの衝撃に限界を超えた僕は、鼻血を盛大に吹き出し気が遠のいていきました。意識が完全に途切れる前には、

「何すんのよ! この、バカ!!」

という罵倒と、頬への殴打の衝撃とともに、

「教養三十点、気品五十点、性格三十点、情熱、限界突破の百点! 総計 フタヒトマル(二百十点)! 本日の最高点だ~!!」

ベストスコアを告げるプラッテ様の雄叫びが聞こえました。

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暫くして気がつくと、隣でプラット様が覗きこんでいます。

「大丈夫か?」

「ええ・・・ なんとか」

僕が答えると、プラッテ様は、

「まさか、伝説のをこの田舎で拝めるとはな・・・ あの女、さては勇者の末裔だな」

遠い目をして、意味不明な事を呟いていました。

 そうして、来る日も来る日もプラッテ様とスカートめくりに勤しみ、刻が過ぎていきます。すると、初めは嫌々だったのに、いつしか楽しんでいる自分がいることに気付いてしまいました。

(ち、違うんです、師匠! これは無理矢理やらされているだけで、自分の意思ではないんです!)

自分が自分でなくなっていく危険な感覚を、私は慌てて打ち消します。

「お、次はあれだな」

プラッテ様の言葉で我に返った私が目線を追うと・・・
そこには後ろ姿でもきりっとしているのが見て取れる女性がいました。少々、体格が良すぎる気もしますが・・・

「いけ! めくりロボ・ヴァン!」

 いつの間にか便利ロボ扱いになっていますが、さして気にすることなくターゲットの女性にむかって風魔法『舞ッチング』を放ちます。

ふわぁり

「「おお! ・・・お?」」

女性のスカートがめくれたと思ったら、太ももが異様に逞しく・・・

「な、なんだとお!?」

声もやたらと野太い感じで、不思議に感じていると、

「お前らかあ、ごらぁ!」

振り向いたその女性は、青髭を生やしたごついおカマでした(汗)。

「はっはぁ、水色のパンツとはまた・・・ 教養二十点、気品二十点、性格三十・・・」

 さすがはめったな事では動じないプラッテ様。女性、いやおカマのパンツも冷静に評じ、私の尊敬度が大幅に上がります。ところが、

「てめえかぁ! 絞め殺すぞぉ!」

 ごついおカマは姿に似つかわしくないブロンドのサラサラヘアーを振り乱し、プラッテ様にベア・ハッグを極めました。

「う、うげぇ・・・ き、ぎもぢ、いい・・・」

泡を吹き出し、白目をむくプラッテ様。

(これはまずい!)

このままでは英雄が死んでしまう! と、おカマに向かって『エアーニードル』を放ちました。
しかし・・・

「カァーーー!!」

なんと! おカマの気合で、私の渾身の風魔法はかき消されてしまいました!

(え・・・? 熊をも倒す魔法なのに・・・(汗))

「甘いな。世の中には、上には上がいるんだぜ、坊主?」

そのうえ、おカマはドヤ顔まで極めてきます。
私が呆然としている間に、プラッテ様は気を失ってしまいました。

 その後、私が事情を説明すると、おカマは納得してくれたようで、プラッテ様が回復するのを一緒に待ちます。
そうして暫くするとプラッテ様が目を覚ましました。

「おや・・・ ここは? ハッ! そうだ、彼女は?」

目を覚ますと同時に、辺りを見回します。そして、自分を締め落としたおカマを見つけると、

「き・・・ 君だ! あの情熱的なハグ・・・ 君こそ、私の理想の女性だ! ぜひ、私と結婚してくれ!」

いきなりプロポーズしたのですから、私は大いに驚いてしまいました。

「あ、あの・・・ プラッテ様? その人、おカマ・・・」

「ちっ、しょうがねえなあ。魔物さえ絞め殺したこともある『カマ・ハッグ』を褒められちゃあな」

止めようとしたのですが、何故かおカマの方も即承諾。めでたくカップル成立となってしまいました。

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あの衝撃の出来事から三ケ月後。
プラッテ様とおカマ(名前はキャンディという)は周囲の反対を押し切って、ご結婚されました。

 やはり伯爵ともなると、女性の趣味が一般人とはいささか違うのだろうと私は思うことにしました。
結果、私はお役御免となったのですが、何故かスカートめくりの罪は私一人に集中し、街を出る羽目になってしまいました。

 今はこうして、次の雇い主を探す旅の途中です。
できれば次の雇い主も、プラッテ様と同じような変態であって欲しいと密かに願っています。

実は、あのスカートめくりの魔法が癖になってしまいまして・・・

(すみません、師匠。僕、目覚めちゃいました)

心の中で師匠に謝りながら、私は指先を軽く振ります。
すると、少し前を歩いている女性のスカートがふわりと舞い、その女性はスカートを押さえながら何が起きたのかと辺りを見回していました。

おわり


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