『万葉集』の一つの歌(3086)
「なかなかに
人とあらずは
桑子にも
ならましものを
玉の緒ばかり」
作者不明の歌
(訳)
「人として生きてゆくことには、辛いことが多くある。
いっそのこと蚕として生きていきたいものだ。
わずかばかりの命だとしても。」
・・・
10年ほど前のテレビの番組で
毎日万葉集を読むというものがあった。
生物学者の福岡伸一さんが紹介していた歌が
この歌だった。
奈良時代に編集されたという万葉集の中にも
人間関係に悩み苦しみ
いっそのこと蚕にでもなってしまいたい。
逃げ出してしまいたいという気持ちがあり
現代とそれほど悩んでいることに違いがないことが分かって驚いた。
人間の中で生きてゆく際に
その中の人間関係に悩むことは
当然あることだ。
そして
いつの時代においても
私たちは
同じような悩みを抱えていたことが分かり
なぜか
慰められる。
・・・
福岡さんは
動的平衡の観点からも考えて
何事も
一時期には形作られることがあっても
すぐに分解されてしまうという。
つまり
良いことも
悪いと思うことも
それが継続していくことはないのだから
そのことに執着しないようにするという。
良いことも
悪いことも
すぐになくなっていくから
それらに
心を動かされないようにと考えている
と語っていた。
・・・
当時、私は様々な問題を抱えていたので
この話に救われて
毎日毎日
録画していたものを繰り返し見ていた。
自分に言い聞かせるように
見ていた。
・・・
実は、今も時折見ている。
当時の事を辛く思うことなく
思い出せるようになっているので
福岡さんの言う執着から
逃れているということだ。
自信を持っていいと思う。
私はあの時よりも年も取って経験を重ねている。
そして
確実に
成長している。
よろしければサポートをお願いします。