『ネットニュースで世界が良くなるわけがない』第1話、あらすじ

あらすじ

 IT企業に入社した新卒女子の蒼井花は、配属されたネットニュースの部署・ポケットニュースにて早速挫折を味わう。
 ネットニュースで世界を良くしたいと、そんな野望を携えている花。
 にもかかわらず社会の何の役にも立たなそうな芸能人の不倫ネタなど下世話でどうでもいいネタばかりが重宝される業界に嫌気が差していた。
 だが皮肉屋の編集長・玉木修や教育係の上司・中村将生との日々の中で、その感情は少しずつ変化していく。
 ネットニュースの運営現場から送る、社会の役に立ちそうで立たない、でも少し立つかもしれない、そんなお仕事小説。


第1話「ネットニュースで世界が良くなるわけがない」


 それはまるで失恋をした翌日のよう。
 目を覚ますと真っ先に、思い出したくない記憶が脳を支配する。そんな朝がもう2週間も続いている。

「この場所から、世界を良くすることはできない」

 ズンとお腹に響くような低い声が、耳の奥にこびりついている。
 アラームを止めてホーム画面に戻ると、格子状に並ぶアイコンの隙間から袴姿の私が顔を出している。そろそろ卒業式の集合写真も古く感じてきた。それにしてもこの写真、私だけが草履で何だか寂しいな。

 もしも時間を戻せるなら、私に言いたい。
 蒼井花よ、ブーツの方がハイカラで可愛いぞ。
 もっと戻せるのなら、こうも言いたい。
 その会社は、やめておいた方がいいぞ。

 まだ女性専用車両も設定されない時間帯の車内は、数時間後に予定されている大混雑と比べて快適な代わりに、疲弊感が蔓延している。
 最近の通勤時間の日課は、転職サイトの閲覧になっていた。この世には仕事が溢れていると、そんな当たり前の事実を再確認するだけで、心は少しだけ軽くなるのだ。

 ホーム画面で笑っていた頃の私は、まさか入社2週間でこんなルーティンを形成しているとは夢にも思わなかっただろう。いかにも希望に満ち溢れた顔をしている。

 子供の頃から常に、家の中でさえ劣等感を抱き続けてきた私は、社会人になる上でひとつの決意をした。
 社会の為、人の為になる、誇りを持って取り組める仕事をしよう。

「この場所から、世界を良くすることはできない」

 だからこそ入社したその日に告げられたこの言葉で、私の出鼻は根元からくじかれた。
 それが私の配属されたネットニュースチーム、その編集長の台詞なのだから、救いようもない。

      ***

「週刊マイノリティーから、姫宮麗花の不倫報道がキタぞーーーッ!」

 ポケットニュース編集長、玉木修さんのこの叫びに、編集部は沸き立つ。

「マジですかっ、すぐトップに掲載します!」
「SNSもすぐ投稿っ、それとネットの反応、芸能人の反応も逃すなよ!」
「清純派女優で売ってましたからねっ、これは熱いですよ!」
「清純派なんて芸能界にいるわけねえだろ。しかし久々に活きのいいネタがきたな。諸星三郎のクソじじいがコンビニ店員と口論、ってクソネタ以来のスクープだ」

 今日も今日とてポケニューは、人様のプライベートで大盛り上がり。
 芸能人からは嫌われ、ネットの住民からは揶揄されるネットニュース。その主要メディアのひとつがポケットニュースだ。

 ITベンチャー・FLOW株式会社が運営するポータルサイト「ポケット」のニュース部門。検索エンジンの下にズラリと並べられているトピックニュース、その編集を担当しているのが私たちだ。

 ポケニューは、新聞社やWebメディアが発信した記事を契約のもと流用し配信する、いわゆる二次メディアである。
 つまり私たちが記事を執筆しているわけではない。
 では何をしているか。選別と要約だ。

「蒼井さん、調子はどう?」

 姫宮麗花の不倫報道対応がひと通り済んだ頃、声をかけてきたのは上司の中村将生さん。気さくに、しかしメガネの奥に気遣いを忍ばせ、私の様子を窺いにきた。

 中村さんは私に、サイトの運用を一から教えてくれている。
 教育係など通常業務の邪魔でしかない余計な肩書きだろう。それでも、私の質問には必ず手を止めて対応する。
 怪物のような編集長と違い、すべての言動や行動、白シャツにベージュのニットベストというコーデにさえ、人柄の良さが滲み出ていた。

「すみません、なかなかPV数取れなくて」
「大丈夫、大丈夫。まずはユーザーが興味を持つ話題が何なのか、自分で見つけることが大事だからね。色々な記事を試してみてよ」

 ポケニュー編集部の仕事は、大きく分けて2つある。
 1つは記事の取捨選択。
 新聞社やWebメディアなど、契約している一次メディアから提供される記事は、一日数百本にも及ぶ。
 つまり膨大な記事の中から、いかにユーザーが食いつくネタを見つけ出せるかがカギになる。

 そしてもう1つは、記事のリタイトル。
 掲載の際にはサイトの仕様上、見出しは16文字以内でなければならない。記事内容を完全に理解した上で、クリックを誘うタイトルを16文字で考える必要があるのだ。
 たった1文字の違いでも、クリック数は大きく変わることがある。

 そうしてクリックした先のページに掲載されている広告によって、ポケニューは収益を得ている。
 ページが開かれた回数(PV数)が、売り上げに直結するのだ。
 1日の総PV数は、平均で800万回。
 それだけの人がポケニューを見ている。

 この手で投じた一石の記事が世界へ波及すると言っても過言でない。
 だからこそ私は、社会をより良くする為、ネットニュースで少しでも世界を変える為に、ここで働く。

「蒼井くん」

 不自然なほど落ち着いた声が聞こえたのは、退勤時刻を1時間前に控えた夕刻のこと。
 編集長の玉木さんは私のデスクに手をつくと、人差し指でコツコツ叩き始める。

「面談、しよっか?」

 女優の不倫報道であどけなく笑っていた頃が懐かしい。氷のような微笑みがそこにある。


 やたらとコミュニケーションを大切にしたがる社風のFLOW株式会社は、新卒社員に対して1週間に一度という高頻度で上司との面談の場が設けられる。
 この日も私はカフェのような内装のオフィスラウンジで、胸ポケットがタバコとライターで膨らんでいる無地白Tシャツの34歳と対峙する。

「中村、今日蒼井くんが考えた記事の見出し、いくつか言ってみて」

 同席する教育係の中村さんが、申し訳なさそうな視線を私に送りつつ、読み上げていく。

「タイから上野へカバ派遣 3年後」
「いやどうでもいい。どうでもいい上に3年後て」
「剣道家の花田と柔術家の茂木が結婚」
「誰なんだよ。誰と誰なんだコレ」
「パンダのスンスン 前転を覚える」
「平和かよ。めちゃくちゃ平和なのか日本は」

 ことごとくツッコミを入れる玉木さん。
 真剣に考えた記事の見出しが、次々ネタ扱いされていく。漫才の台本を作ったわけではないのだ、私は。

 現在私が担当しているのは国内ページ。
 国内の最新情報、社会問題を取り扱っている。
 ポケニューにはサイトトップの主要ページの他に芸能やスポーツ、経済など様々なジャンルのページがある。
 サイトの顔となるトップのPV数は段違いで、それゆえ責任も重大。なので特に優秀な人だけが運用を任されている。中村さんがそれにあたる。
 そしてトップ以外のページは、私のような研修中の社員が担当していることも珍しくない。

「コンビニに強盗入る 店員は無事」
「これもなぁ。記事のチョイスはいいけど、タイトルが弱いよ。店員が無事かどうか16文字に入れる必要あるかよ」
「玉木さん。若干、というだいぶパウ入ってますよ」

 中村さんの耳打ちに、玉木さんは「おっとまずいまずい」と口に手を当てる。パウ(POW)がパワー、つまりパワハラの隠語だと気づいたのは、ここ最近のことである。

 玉木さんの口調はわざとらしく柔らかくなり、表情もほころぶ。
 だが目は笑っていない。

「蒼井くんねぇ、客観的に見て、この見出しでクリックするぅ?」
「する……と思います」
「するのぉ? カバ派遣クリックするのぉ?」

 柔らかくなったせいで、余計に腹立たしい。

「でもほらっ、今はまだどんな記事が伸びるかって嗅覚を育てている段階ですし……蒼井さんも少しずつ良くなっていると思いますよ」

 中村さんが割って入ると、玉木さんはむうと口をつぐむ。こうして見ると部下の中村さんがうまくコントロールしているようだ。
 まるで性格の違う2人だが、お互いに信頼し合っている空気感は、そこはかとなく伝わってくる。

「蒼井くん、君はどんな気持ちでこの四本の記事、掲載したの?」

 玉木さんのこの質問には、ここまでの会話にはなかった重さが孕んでいる。表情からもわざとらしい柔和な印象は消えていた。
 私はありのまま、答える。

「今日のトップページは心が痛むニュースばかりだったので、少しでもユーザーの心が和らげばと思い、癒される話題やおめでたい記事を優先して選びました。コンビニ強盗の記事も、必要以上にユーザーの不安を煽らないよう、心がけて見出しを考えました」

 今日は朝から会社員の自殺事件、子どもへの虐待、そして不倫した女優の謝罪会見など気持ちの良くないニュースがトップページを占めていた。
 もちろん、それらを掲載することが悪いなどとは思わない。女優の不倫はどうでもいいけれど。

 それでも、暗い話題ばかりが世間を賑わせれば、人々の心も荒んでいくような気がする。
 その悪循環を形成する一端として働くのは、嫌だ。
 社会の為になる発信がしたいのだ。
 しかしこの回答は、玉木さんのお眼鏡にはかなわないようだ。

「蒼井くん、入社した日に言ったこと、覚えてる?」

 この場所から、世界を良くすることはできない。
 忘れるわけがない。
 ここから世界をより良くしたいという私の意見に対して、玉木さんが真っ向から吐いた台詞だ。
 玉木さんは見定めるような目を私に向けると、小さくため息をつく。

「まあいいや。とりあえずコンビニ強盗の記事はチョイスとしては及第点だから、こういう記事を優先して。ただし、リタイトルの意識は変えてくれ。犯行時のセリフとか凶器の種類とか店員の証言とか、ユーザーに恐怖が伝わるような生々しい表現でよろしく」
「でもそれじゃ……」
「1つ言っておくよ」

 私の言葉を遮ると、玉木さんは最後に1つ告げ、返事も待たず席を立った。

「ユーザーが求めているのは知識じゃない、エモーションだ。これを頭に入れて、来週からも頑張ってくれ」

 脳が沸騰するような感覚に襲われたせいで、心配そうな中村さんによるおそらく励ましの言葉さえも、私の鼓膜には届かなかった。

      ***

「エモーションって、横文字使えばカッコいいと思ってんのか!」

 たった2、3週間会っていなかっただけの大学の同級生たち。
 その顔を見ただけで、身体中を縛っていた糸がほろほろとほどけていくようだった。アルコールに理性をほぐされたこともあり、自然発生的に愚痴が湧いて出る。

「あー、なんかIT企業ってそういうイメージだわ」
「プライオリティとか当たり前のように言いそうだよね」
「うちにはフォトショもわからない上司いるけど?」

 同級生らはそんな軽口を交えつつ、それぞれ職場の悪口を言い合う。
「ウチらも社会人だし、港区女子になろうや」との謎のお題目で集合した渋谷区のオシャレなダイニング、その一角が新卒女子たちの悪言に支配されていく。
 しかし私にはそのどれも、自身の現況よりはマシに聞こえた。

「そういや昼にポケニュー見てたけどさ、姫宮麗花が不倫したんだって?」
「あーそれびっくりしたね。うちの職場でも話題になってた」
「いやー何かやると思ってたよ、私は。姫宮って泥棒猫みたいな目してるじゃん」
「見た目かよ」
「絶対嘘だわ」

 いつの間にか話題は、姫宮麗花の不倫へと変わっていた。
 大学時代と変わらない、下世話な芸能ゴシップ話で盛り上がる同級生たち。安心する一方で、玉木さんら編集部の不倫報道到着時のはしゃぎっぷりと重なり、胸がざわめく。

「結局ウチら、社会人になっても変わんないじゃん」
「そらそうよ。社会人になっただけで高尚な人間になれるなんて、おこがましいわ」

 同級生のこんな軽口に、皆が声を上げて笑う。私も合わせて笑顔を作っていた。


 帰宅すると、今度は母親から電話がかかってきた。
 私がポケニューで働き始めた日から、常にポケニューのサイトをチェックするようになったらしい。

「お姉ちゃんはゴールデンウィークに帰ってくるみたいだけど、あんたどうするの?」
「……じゃあ帰らない」
「変わらないねーあんたはホント。ところで姫宮の不倫って本当なの? ヨガ教室のみんなもびっくりしてたわ。あんたが取材したの? 姫宮って美人だった?」

 無邪気に尋ねてくる母。つい語気が荒くなってしまう。

「だから前も言ったけど、ポケニューは他の会社からもらった記事を掲載しているだけで、私たちが取材したり執筆してるわけじゃないの」
「えーそうなの。じゃああんた何やってるの?」
「サイトにあげる記事選んだりとか、タイトル考えたりとか」
「へー、今日どんなのあげたの?」
「パンダのスンスンが前転を覚えたのとか……」
「そんなのあったっけ?」
「もう切るよ! じゃあね!」

 プライベートな時間でさえ、胸にまとわりつく靄は晴れてくれない。

      ***

 ポケニュー編集部での業務において最も辛いのは、運用者の実力が残酷なまでに数値化されてしまうことだ。
 掲載した記事は分単位でPV数が表示され、伸び悩んでいる記事はすぐにでも下げなければならない。一度に掲載される記事は9本と定められているので、下げるとなれば新たな記事を差し替える必要がある。
 そうして毎時間、ページごとの総PV数を集計する。
 ここで力量が明確に示される、というわけだ。

 ユーザーは正直だ。興味のない記事を読むヒマはない。
 1時間で数十回しかクリックされない記事もあれば、たった1本の記事が爆発的な反響を呼び、あげくSNSなどで拡散されることで100万を超えるPV数を記録する場合もある。

「中村さんは常に安定して数字取ってますよね。一日に掲載する記事の本数も、編集部で一番多いですし。やっぱり、センスなんですかね」

 休憩時間、社内のカフェテリアで中村さんとランチ中、運用の極意を聞き出してみる。

 ポケニューは二次メディアの中では比較的有名なサイトだが、それでも大きなトピックがない時期はPV数も落ち込む。
 定期的な繁忙期があるわけでなく、世間の注目を集める事態、良し悪しにかかわらぬ非日常の発生によって収益も左右される。皮肉な業界だ。

 しかし中村さんは、たとえこれといった話題がない日でも安定して優秀な成績を収めている。
 ユーザーの興味を引く記事選びとリタイトルができている証拠だ。

「いやいや、僕はセンスないよ」

 中村さんはそう言ってひたすらサラダを食べる。ベジファーストを心がけているのか、一緒に注文したカレーには目もくれない。箸の持ち方が若干怪しいのが、ちょっと可愛い。
 言動には納得いかず首をかしげるも、彼は更にこんなことを言い出す。

「僕は、つまらない人間だからなぁ」
「ええ、何ですかそれ。そんなことないでしょう」

 即座に否定しても、中村さんは「はは」と笑うだけ。本気でそう思っているようだ。

「僕もここに入ったばかりの頃は苦戦したよ。ユーザーの気持ちがまるでわからなくて。ああ、僕って世間とズレてるんだなぁと思って落ち込んだよ」
「それわかります。私、今まさにです」

 素直に告げると、中村さんは「やっぱり」と言って笑う。

「僕の場合はとにかく上げ続けて、伸びる記事と伸びない記事の情報をインプットして、やっとうまくいくようになったね。そこに行き着くまで1年かかったよ。センスあるっていうのは、そこを1ヶ月足らずでバシッと合わせちゃう人だと思うな。オーランドとか」
「あー……あの人は何か、わかります」
「でしょ。そもそもさっき褒めてくれたけどさ、掲載本数が多いのはけして良いことじゃないからね。伸びなくて下ろした記事がたくさんあるってことだから。本数は少なくても1本1本確実に数字を残す方が効率的でカッコいいと、僕は思うな。玉木さんみたいに」

 玉木さんは編集長という立場もあるので現場で運用する機会は多くない。それでもひとたび運用に入れば、他の人よりも頭ひとつ抜けた成績を記録する。クセは強いが……というよりクセが強いおかげなのか、名実ともにポケニューのトップなのだ。

「玉木さんのリタイトルにはユーモアがあるからなぁ。あれもセンスだね」
「ユーモア、あるんですか……あの人に?」

 私と相対する際には、一片も見られない。

「あの人がバスらせた記事はいくつもあるけど……これなんか玉木さんのタイトルセンスのおかげで拡散されたからね」

 中村さんはスマホで、1つの記事を掲げて見せた。
 地方のとある都市を流れる川にウシガエルが大量発生、との内容。
 被害状況や大量発生の原因が淡々と記述され、最後には駆除に向けた対策案で締められている。一見しただけではユーモアの欠片もないレポ記事だ。

「これ、蒼井さんならどうリタイトルする?」
「ええと……『ウシガエル大量発生 原因は気候?』とかですかね」
「そうだね。僕もたぶん、そんなアプローチになると思う。対して、我らがボスの考えたタイトルはこちら」

 ウシガエル大量発生 鶏肉に近い味

「ええぇ食べるのっ?」
「常軌を逸してるよね。ほんと異次元のセンスだよ」

 確かに記事の終盤、食用に加工するという対策や味の描写が書かれている。私は初見時、その段落は見出しには不必要と考え、読んだそばから記憶の奥にしまっていた。

「ちなみにこれが、掲載後のSNSの反応」
『食う気マンマンじゃねえかw』『食に貪欲w でも一番良い対策かもね』『たった一文で明確な解決策を匂わせる完璧な見出し』

 大好評である。
 一部「気持ち悪い」などの声もあるが、大多数はポジティブな意見だ。

「でもこの見出し、PV数は取れたのでしょうけど……論点がズレているというか、何というか……良いんですかね?」
「うん、言いたいことわかるよ。タイトルと記事内容のテンションに差があって、いわゆるタイトル詐欺っぽくなってるのが気になるんだよね」

 私の中の違和感を、中村さんが見事に言語化してくれた。
 良い反響もあって数字も取れ、ポケニューとしては概ね成功。しかしそのフェアじゃない感じが、どうにも気持ち良くないのだ。

「でもこの記事が拡散されて世間に知れ渡ったことで、この町はカエル食で町おこしする計画を立てて、それも好評だったらしいよ」
「そ、そうなんですか……すごい」
「この1つのタイトルから、すべてが良い方に働いたわけだ。正しくない方法だったかもしれないけど、結果として良い影響が生まれた。正しくなさも時には必要なのかもって、考えさせられるよね」

 正しくなさ。私には少し難しい言葉だ。
 私にはそれがどうしても、利己的な行動を取る為の詭弁のように聞こえてしまう。だって正しい方が絶対に良いじゃないか。

 しかし玉木さんは正しくない方法で、世界をほんの少しだけ良くした。
 そしてそれを否定する私が掲載した記事は、そもそも世界に届いていない。
 世界にとって「正しい」のは、果たしてどちらか。



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