最近読んだ本の話 vol.13
「最近読んだ本の話」もう第13弾です。今年1月から書き始めて4か月目になりました。このnoteが私に与える影響は大きく、読書への集中力や読むペース、何を書こうか考えながら読む、などの恩恵があるのでありがたいです。今週も3冊ご紹介します。
1、彩瀬まる『まだ温かい鍋を抱いておやすみ』
今がどれだけキツくても――
“おいしい"が、きっとあなたの力になる。
ほろ苦く、心に染み入る極上の食べものがたり
「遠くへ行きませんか」
「行くー! 行きましょうぞ! 」
スポーツ用品販売会社に勤める素子は、同じく保育園に通う子供を持つ珠理を誘って、日帰り温泉旅行に出かけることに。ずらりと食卓に並ぶのは、薬味をたっぷり添えた鰹のたたき、きのこと鮭の茶碗蒸し、栗のポタージュスープ。季節の味を堪能するうち、素子は家族を優先して「自分が食べたいもの」を忘れていたこと、母親の好物を知らないまま亡くしてしまったことに思いを巡らせ……(「ポタージュスープの海を越えて」)
――“あのひと口"の記憶が紡ぐ6つの物語。 -Amazonより引用-
ほのぼのだけじゃない深いお話です。そうだよなあ人生って色々あるよなあ、と思うような6つの物語なのですが、感情が丁寧に描かれていて、どのお話も「あ、そういうこと私も思ったことある!」と感じる言葉が出てきました。登場人物と同じような体験をした人に、心が温まる食べ物と一緒にそっと寄り添うようで、悲しみが伝わってきて泣きそうにもなる、さらっとは読めない深い物語でした。
2、村田 沙耶香『コンビニ人間』
「普通」とは何か?
現代の実存を軽やかに問う第155回芥川賞受賞作
36歳未婚、彼氏なし。コンビニのバイト歴18年目の古倉恵子。
日々コンビニ食を食べ、夢の中でもレジを打ち、
「店員」でいるときのみ世界の歯車になれる――。
「いらっしゃいませー!!」
お客様がたてる音に負けじと、今日も声を張り上げる。
ある日、婚活目的の新入り男性・白羽がやってきて、
そんなコンビニ的生き方は恥ずかしい、と突きつけられるが……。
-Amazonより引用-
ずっと気になっていましたが、やっと読めました。主人公の古倉さんは小さい頃の体験から、家族を困らせないよう「普通」になろうと努力します。コンビニの店員でいる時だけは、人から違和感を持たれず「普通」になれる。だけど困ったことに、周りから36歳未婚でコンビニでバイトしている理由を度々聞かれるのですが、バイト先では「親の介護のため」、友人には「体が弱いから」という妹が考えてくれた理由を答えます。読んでいて、その方法いいな!と思いました。あらかじめ周りが納得しそうな嘘の理由を考えておく、という方法です。本当の理由を答えて変な空気になったり、不快な気分を味わうよりいいのではないか。昔は「彼氏がいないと!」とか「○○歳までに結婚しないと!」みたいな価値観に、私は振り回されていた自覚があるので、そういうことに揺らがされずに自分の価値観を貫いている人はカッコいいと思います。独身の人が増えて、恋愛しない人が増えて、これからどう変わっていくのか楽しみだ。
3、長野 まゆみ『カムパネルラ版 銀河鉄道の夜』
長野まゆみデビュー30年記念小説
ジョバンニの旅は終わってもカムパネルラの旅は続く…
あの「銀河鉄道の夜」を今夜、カムパネルラが語りなおします
これまで、ジョバンニこそ作者の化身と考えられてきた物語を、もう一人の主人公であるカンパネルラが語りなおしたのがこの物語だ。
カムパネルラは、ケンタウリ祭の夜、友人ザネリを助けに川に入り、溺死したのだ。
銀河鉄道の乗客がみなさみしいのは、ジョバンニを除いて、誰も片道切符しか持っていないからだ。
本作では、カムパネルラの目から、銀河鉄道の旅を辿り直す。
すると、そこに現れるのは、これまで妹トシに隠れて見えてこなかった、賢治の秘められた恋だ。医師と結婚してアメリカに渡り、異国で早逝した恋人への強い思いがあったのだ。
いつしか物語には賢治自身もあらわれ、少年と対話する。
メビウスの帯の、裏と表のように、けっして交わらない。でも、すぐ近くにいる存在。それがジョバンニとカムパネルラの旅なのだ。
-Amazonより引用-
『カムパネルラ版 銀河鉄道の夜』ってすごく気になる!と思い、思わず手に取りました。『銀河鉄道の夜』の何が悲しいかって、ジョバンニは戻ってこれるのにカムパネルラは戻ってこれないのはかわいそうじゃないか!ということですが、小学生のころ「納得いかんな」と思いました。長野 まゆみさんが「カムパネルラが語る『銀河鉄道の夜』」として色々と検証されています。知らなかったこともたくさん出てきて面白いです。
今週もなんとか書くことができました。本を読むのがなかなか間に合いません。でも書くのも読むのも楽しいです。最後までお読みくださってありがとうございました。