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地域の、地域による、地域のための、地方創生

アクセンチュアが会津若松市で取り組むスマートシティプロジェクトについて書かれた本。地方都市の課題から、取組みのコンセプト、プロジェクトへの取組みについてまとめられており、そのプロジェクトは今も現在進行形で続いている。

この資料にもある会津創生8策で”あるべき姿”を描いたうえで取組みを進めている。アクセンチュアが会津若松市に拠点を設立している点、アクセンチュアの取組みではなく会津若松市の産官学民の自分事としてプロジェクトを推進している点。特に最終的に裨益する対象の一つである”民”をしっかり巻き込んでいる点は非常に素晴らしいと思う。住民を置き去りにしたスマートシティなんて意味がない。

具体的な各種取組み

地域ポータルサービス「会津若松+」

個人が属性情報を提供すれば、それに合わせた情報が提供される。例えば、子育て世代向けの情報、高齢者向けの情報などが出し分けられているようである。
会津に関わる人はここにアクセスして属性を登録すると、適切な情報を手に入れられやすくなっている。

デジタルDMO「VISI+AIZU」

また、「会津若松+」はデジタルを核にした観光周遊の取組みである「VISI+AIZU」でインバウンド観光客向けの情報も包含しており、観光を旅マエから旅ナカ、帰路までサポートする。

IoTヘルスケアプラットフォームプロジェクト

ウェアラブル端末でのデータ取得による見える化。健康データは機微なデータであり、オプトインによる市民からのデータを集めている。

地方創生の7つのプロセス

個人的に一番興味深かったのが第3章。

①現状と将来像、②参考となる成功事例、③実証実験、④設計図・仕様、⑤認定・認証、⑥情報発信・営業、⑦誘致拡大・転入増
という7つのプロセスの解説。

日本の実証実験は③で止まる、もしくは④で一区切りされる事例が多発しているが、会津若松市の場合は2019年の「スマートシティAiCT」設立で、このプロセスがちょうど一巡したのかなと思った。そして一巡して終わりではなく、このサイクルをいつまでも回し続けることが重要だと思う。

以下、メモ代わりの記録

・日本の1000分の1の人工規模の都市
・クラウド バイ デフォルト
・「高付加価値産業の仕事」が地方に力を与える
・実証実験のフィールドとして選ばれる街
・市民を巻き込む「自分ゴト」化の仕掛け
・データ活用による社会的課題の解決と経済発展の両立
・不動産のバリューアップに留まらないマネタイズモデル

本書より、一部要約

この本の出版が2019年5月。
以下の2021年3月の記事によるとデジタル地域通貨などの取組みも視野に入れている模様。

会津地域では、Sumurai MaaSの取組みも行われているが、何らかの形で融合していくのだろうか。

最後に

本書は「会津若松の創成に賭ける人々」と題した対談形式で締めくくられている。
そこでは、AiCTの土地が会津の歴史にまつわる場所であることや、アクセンチュア依存にならない自立意識、「市民中心」の意識を大切にしてること、地元の大学の重要性などが語られている。また、デジタルに拠らず、「現場とのつなげかた」を大事にしていることにも触れられている。

地域によって社会課題は異なるし、解決のために持っている/与えられる武器も違うと思うが、7つのプロセスは汎用的に適用できるアプローチだと思う。民間の発想で行政を(一緒に)運用していくスタイルは、地域に根差した企業がもっと追求すべき形かもしれない。

以上


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