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ガチャガチャを作って売ってみた話

ガチャガチャってロマンがありますよね。

昔からオリジナルのガチャガチャを作ってみたいなと思っていたのですが、今回は実際にガチャガチャを作って販売してみたときの話を書いてみようと思います。

実は僕、あまりにもガチャガチャが好きすぎで、もうすでにガチャマシンの方は持っていたんですよね↓

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これさえあれば、あとはガチャガチャの中身を作るだけだ!って意気込んでいたのですが、ガチャガチャの企画を考えるきっかけがなかなかなくて、宝の持ち腐れ状態になってしまっていたんです。

で、そのことをガチャガチャは全部コンプリートしないと気が済まない会社の同期の嶋元くんに話したら、じゃあ何か作って売ってみようということになり、さっそくガチャ企画のアイデア出しをすることになりました。


まず始めに、お互いが面白いと思うものの共通点を導き出していくことから始めました。

「意外性や違和感といった驚きがあるものがいい」

「まだ誰にもやられていない新しいものがいい」

「実験的なものがいい」

などなど、抽象的なレベルから僕たちが面白いと思うものについての話しをしていきました。すると、「ガチャガチャってカプセルが出てくるまでの一連の体験全体に価値があるよね」という話になっていったんですね。


お金を入れる → ハンドルを回す → カプセルが出てくる → 中身を確認するみたいに、一連の体験の流れがあるからこそガチャガチャは面白いわけじゃないですか。

だから、ガチャガチャにまつわる体験自体を掘り下げていけば、新しいガチャガチャのアイデアが出てくるんじゃないかと思ったんです。

例えばガチャガチャといったら、

「100円玉を入れるよね」とか、

「ガチャが出たときの重さで、どの商品を引いたのかだいたい分かるよね」とか、

「カプセルがテープでとめられてて開けにくいときがあるよね」とか、


それで今度は、掘り下げたガチャガチャにまつわる体験を、企画として落とし込んでみたらどうなるかについて考えました。

100円玉を入れるなら、カプセルの中に10円玉を抱きしめたフィギュアが入ってて、10%還元されるって喜びもあるガチャガチャはどうか?とか

ガチャが出たときの重さなら、カプセルの中にポルシェの車の鍵と同じ重さのおもりとかが入ってて、いろんなワクワクするものの重さだけを楽しめるガチャガチャはどうか?とか

カプセルがテープでとめられていて開けにくいなら、なかなか開けられない体験自体を、そういう試練として楽しめるカプセルはどうか?とか


で、いろいろ話しているうちに嶋元くんが、「見た目が全部同じブタのキーホルダー」のアイデアを思いついたんですね。

見た目は全部同じなんだけど、商品説明紙には「尿意を我慢してるブタ」とか「ご飯を食べてお腹いっぱいになってるブタ」とかいう説明が書かれてて、それを読んだ人が頭で勝手に関係性を補完して、全部違ったブタとして見てくれるんじゃないか?と。

「さ、最高すぎる… しかも見た目が全部同じなら、ダブるっていう概念もない…!!」

企画が決まった瞬間でした。


「尿意を我慢してるブタ」っていう文章を読んだ後に見たブタは、自然と尿意を我慢してるように見えてしまう。

前に書いた架空の虫が潜んでる感を出す装置のときにも紹介しましたが、心理学でいう『文脈効果』ってやつです。


ベースの企画が決まったので、次はブタの絵柄を考えていくことにしました。

「リアルじゃなくてディフォルメしたブタの方が、可愛くて買ってもらえそうだよね」

「表情も、名前によって変わって見えてくる感じにしたいよね」

「ブタに人間味を持たせるために、上半身だけ服着せてみよっか」

というような会話を交わしながら、名前で印象が変わるブタのキャラクター像がどんどん構築されていきました。


そして最終的に完成したブタの絵がこちらです↓

ブタ画像

呆然と立ち尽くしているような佇まい…

何かを伝えようとしている眼差し…

なぜか軽く上げている左手…

なんとも言えない表情や仕草を詰め込んでみました。


しかし、これでブタのキャラクターが完成したわけではありません。

なぜならまだこれは、ブタの形をした感情の入れ物にすぎないからです。

このブタが直面している状況を文章化し、その文字情報と一緒に見てもらって初めて、感情の宿った一匹のブタが生まれるのです。


では次に、このブタが直面している具体的な状況を考えていきます。

日常生活の中で僕たちも、なんとも言えない表情になってしまうときがありますよね?

例えば、『ポケットティッシュをもらおうとして、タイミングを見計らっているとき』とか、『トウモロコシがずっと歯に挟まってるとき』とかです。

そういったなんとも言えない表情になっちゃうシチュエーションをたくさん集めて、それらの文章をブタの絵と組み合わせることで、本当は一種類しか無いブタのガチャガチャに無限の可能性を見出してもらうのです。


で、なんとも言えない表情になっちゃうシチュエーションを厳選してみました↓

・エアコン消したか気になってるとき

・間違えて温泉卵買っちゃったとき

・電車で席を立とうとしてる人を見極めてるとき

・刺身を買ってきたのに、家に醤油がなかったとき

・ポケットティッシュもらうタイミングを見計らってるとき

・いらないレシートを受け取っちゃったとき

・家族での団欒中に、ベッドシーンが流れたとき

・米を炊き忘れていたとき

・トウモロコシが、ずっと歯に挟まってるとき

・俳優の名前をど忘れしたとき

これらの状況をブタの名前にすることで、商品バリエーションを展開していきます。


具体的なコンテンツが決まったので、次は本格的にガチャガチャの中身を作っていく作業です。

pixivFACTORYというサービスを使って、描いたブタの絵をアクリルキーホルダー化します。

発注をして2週間くらいが経ち、やっとキーホルダーが完成しました↓

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なんかもうこれだけで、ワクワクしてきます。


今度は、ガチャガチャのPOPと商品説明紙を作る作業です。

キーホルダーの画像とブタの名前を配置したデータを作り、余ったスペースにそれっぽい情報を入れていきます。

はい!完成しました!


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ちゃんと注意書き風の文言や、公式協会風のマークも作りました↓

注意書き
合格基準


作った画像を印刷して、ガチャマシンにセットするとこんな感じです↓

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おおおっ! すごくガチャガチャっぽい!!


同じ要領で、商品説明紙の方も完成!

ブタ1_01
ブタ2_01

(↑自分が引いたブタがどれか分かるように、名前の周りの色を1つだけ赤くしています)


最後は、amazonで購入した大量のガチャカプセルに、商品説明紙とキーホルダーを梱包していきます。

梱包
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ようやく準備が整いました。


それではいよいよ、実際にガチャガチャを稼働させる段階です。

デザフェスの会場にカプセルを入れたガチャマシンを設置します。

ガチャヘッダー

ぽいな〜…


11時になり、デザフェスが開場!

気になるお客さんの反応はと言うと、


多くの人が素通り…!? なぜ!?


おそらく、見た目があまりにも普通のガチャガチャっぽすぎるせいで、デザフェスで売っているようなハンドメイド感ある作品を求めて来ている人たちには、あまり興味が無いのでしょう…。

ガチャガチャの横で販売していた僕たちの他のグッズは、結構いろんな人に買ってもらえたのですが、その人たちに「よかったらこちらもやっていきませんか?」と言って初めて、ガチャガチャの存在に気づいてもらえたくらいです。

1加工済み


しかし、幼稚園児〜小学生くらいの小さい子どもたちは、近くを通った瞬間にガチャガチャの存在に気づいてくれました。

やはりガチャガチャの魅力はすごいです。


しばらくお客さんの様子を観察しながら待っていると、あるとき通りかかったお子さんが「これ欲しい!」とお母さんにねだってくれました。

ようやくガチャガチャを回してもらえる瞬間が来ました…!


お子さんがコイン投入口にお金を入れて、ハンドルを回します。

ガチャガチャガチャ…

さあ、一体どのブタが出たんだ!?



神の悪戯か、そのときお子さんが引いたのは『家族での団欒中にベッドシーンが流れたブタ』でした。

ベッドシーン

お母さん、苦笑い。(ごめんなさい…)


しかし、その後も諦めずにガチャガチャを見守りつづけた結果、

15回くらい回してもらうことができました!


いやぁ、前回の架空の虫が潜んでる感を出す装置同様、コンセプトは最高だったと思うのですが、今回はガチャガチャを設置した場所が悪かったと反省しています。

次回はもっと普通のガチャガチャがたくさん置いてあるところに置いて、再チャレンジしてみたいと思います!


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