架空の虫が潜んでる感を出す装置
今回は、以前会社の同期の嶋元くんとデザフェスに出展したときに作った『架空の虫が潜んでる感を出す装置』についての話を書いてみようと思います。
というのも実は僕、大学生の頃にありもしない情報を作ることにハマっていた時期があったんですね。
どういうことかというと、
中に誘引剤が入っていない外側だけのゴキブリ駆除用品を学校に持って行って、ゼミの教室にしばらく置いてみたことがあったんです。
そしたらそれを見た同じゼミの仲間たちが、「え、ゴキブリでたの?」って僕や周りの人に案の定聞いてきたんですよ。
そんなみんなの反応を見て、「コレ何かに使えそうだなぁ」ってずっと思っていたわけです。
ゴキブリ駆除用品を置くだけで、その空間にゴキブリが潜んでいるかもしれないという情報を付けることができる。
ちなみにこれは、対象物の印象が前後に触れた情報によって変化してしまう心理学でいう『文脈効果』ってやつなのですが、これを応用すればこの世界には存在していない架空の虫がいる感じも作り出せるのではないか!と思ったんです。
ということでさっそく、架空のゴキブリ駆除用品の製作に取り掛かることにしました。
まずは架空の虫の見た目を決めるところからです。
せっかく架空の虫を作るということなので、できるだけ強そうなフォルムの虫にしようと思いました。
そして導き出したフォルムが↓こちらです。
駆除用品のパッケージに載ってそうな情報量を少なくしたチープな質感を意識しながらも、遭遇したら絶対にヤバそうな色合いと形にしてみました。
さて、次はこの虫の名前です。
強そうな怪獣やデカいモンスターの名前には濁音が使われていることが多いので、濁音を含んだおどろおどろしい名前にすることに決めました。
そしてたどり着いた名前がヴィオドロスです。
どうですか?名前を聞いただけで、毒を持ってそうな危険な感じがしませんか?
音相という考え方があるように、音の響きには印象や雰囲気が宿ると言われています。だから、濁音を2つも含んだヴィオドロスという名前は、もうそれだけでかなり厳つい感じを醸し出しているのです。
さて次はヴィオドロス駆除用品の外側を作る作業です。
それっぽい形のペーパークラフトデータを作り、ヴィオドロスの画像を配置します。
組み立て方や使用方法の説明を加えて、最後にまがまがしい色を施したら完成です!
いやぁ〜、ちゃんと駆除用品ぽくなってきましたね。
組み立てると↓こんな感じです。
(ちなみに右側の石は、ヴィオドロスを引き寄せる誘引剤をイメージして買ってきたものです)
さて、いよいよこれをデザフェスで実演販売するときがやってきました。
出展ブースの地面のところに、さりげなくヴィオドロスフォイフォイをセットして、実演販売スタートです。
(ちなみに↑のは、色違いバージョンのヴィオドロスフィオフォイです)
仕掛けること数時間。
お客さんは来るものの、なかなかヴィオドロスフォイフォイの存在に気づいてもらえません。
ちゃんと「ただいま会場内のヴィオドロス測定中」という注意書きも貼っているのに、なぜでしょう・・・。
これでは実験になりません。
ここで僕たちは奥の手を使うことにしました。
それが、『ヴィオドロスの鳴き声』です。
こんなこともあろうかと、昔作った謎の生物の鳴き声っぽい音声データを持ってきていたので、ヴィオドロスフォイフォイの中にスピーカーをセットして流してみることにしました。
その様子が↓こちらです。
ヴィオドロスが鳴き出すタイミングは、嶋元くんが後ろの方からリモコンでコントロールしています。
何気ない顔で接客をしながら、お客さんの不意をついて鳴き声を再生する。簡単そうに見えますが、意外と難しいです。
ヴィオドロスが鳴き出したおかげで、フォイフォイの存在に気づいてくれるお客さんも増え始めました。
ところが、一瞬驚いたはいいものの、怪訝な顔をしてその場を離れて行ってしまうお客さんが続出。
謎のインスタレーションに巻き込まれるのは御免だ。といった様子で、本当に鳴き声が流れ始めた途端、みんな遠くへ行ってしまうんです。
これではいかんということで、ヴィオドロスの鳴き声は封印することにしました。
その後、2日間の実演販売を終え、なんだかんだでヴィオドロスフォイフォイは4個くらい買っていただけました。
ご購入いただいた皆さま、本当にありがとうございます!
(ちなみに、さっきから写真に写っている↑この人が嶋元くんです)
『架空の虫が潜んでる感を出す装置』というコンセプト自体はとてもよかったと思うのですが、肝心な装置の存在に気づいてもらう部分の設計ができていなかったことが悔やまれます。
今回の反省を生かし、次回はヴィオドロスフォイフォイが一瞬でお客さんの目に入るよう、ゴリゴリの蛍光色を駆使して再チャレンジしたいと思います!
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