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こころの拠り所

 喫茶店に一人でカランカランと音を立てて入るのには勇気がいる。なぜ入りづらいのだろう。小心者で、一人は心細いから。慣れないから。古川誠著『りんどう珈琲』に登場するマスターのような人に憧れているのに、どこかで喫茶店そのものを格式が高いと思い込む。やはり、不思議で複雑な感情。
 僕のマリ著『常識のない喫茶店』を早朝に読んでいると、ふと疑問が湧き上がる。スターバックス然り、喫茶店はどうして繁盛しているのか。喫茶店をどんな拠り所と位置付け、何を求めるのか。
 因みに、スターバックスは喫茶店であって、カフェではない。この2つは営業許可の取得が異なって、アルコール提供と料理の調理法に差がある。おしゃれ感や雰囲気によるものではない。
 さて、あなたにとって、心の拠り所としている人、もの、場所などはあるだろうか。毎日、生きていれば、色々なことが起こる。楽しいこと、嬉しいこと、悲しいこと、辛いこと、さまざまである。気分が揺らいだときに、癒してくれるもの、励みとなるコトバ、頼りにできる人、そして何が起きても帰れる場所があるというのは至極安心感を生む。生きるにあたり、居心地の良さは大切だと思うし、無条件であなたを包み込んでくれるなんて頗る最高ではないか。そんな心の拠り所をいくつも持っていたら、どんなときでも自分を見失わずに進める気がする。
 ところで、我々はなぜ、ここにいるのだろう。どうして生まれたのか。このように“生きる意味”を幾度となく自問したことがある。繰り返しになるが、我々は生きているのではなく、生かされているのである。ドイツ強制収容所を体験し、『夜と霧』を著した心理学者のV.E.フランクル氏は「どんなときにも人生には意味がある。未来で待っている人や何かがあり、そのために今すべきことが必ずある」と語った。待っている人がいるのは無上の強みであり、未来を生きるに値するというわけである。私には家族がいる。愉しみのみならず、悲しみを共有できる、心地の良い、心温まる家族が待っている。それだけでもかけがえのない幸せといえるのではないか。
 毎日をやるべきことを淡々とこなして過ごすのではなく、たくさんのことを経験すれば、それだけ経験値は上がる。たとえば、食べたことのないものの味わいを語ることは甚だ難しい。エベレスト山の素晴らしさは登頂した人にしか味わえない。図説やら解説書を読むことと、経験とは雲泥の差がある。
 とはいえ、「読むことは、書いた者と出会い、対話すること。書くとは、先人の叡智に助けられながら未知の自分に出会うこと」と、若松英輔氏は『現代の超克』で語る。読むことと書くことを疎かにすると、世の中に溢れる情報をすべて真実だと勘違いするような、感性の乏しい、貧しき人になってしまいそうだ。五感豊かに、溢れる感性をもとに、今ここでの体験や知見から何かしら気づきを得たら、物事の充実度が上がり、「今、ここ」を“生きがい”として輝かせられる。
 
深刻な時ほど笑いが必要だ。ユーモアの題材を探し出せ。そこに現状打破の突破口がある。(フランクル)


🎵 人生相談&哲学対話ほのぼのカフェ 🎵
 
【Q25】高校生のうちにしていた方がよいことはありますか。
【A】無論、青春です。高校生を謳歌してください。大人では経験できないことがたくさんあるはずです。まずは文化祭、大いに盛り上がりましょう。どんな文化祭でも良き思い出になります。良いとか悪いとかはありません。愉しみだけでなく、紛糾することもあるでしょうが、どれも大切な経験です。
 
【Q26】最近よく考えるのですが、人間はどうして死ぬのが怖いと感じるのでしょうか。死んでしまったら、自分も自分の感情や意志も消えて何も感じなそうなのに不思議です。
【A】あなたは死を怖いと感じていますか。私は大人になってから、死を恐れるようになりました。恐らく身近な人が亡くなっているからかもしれません。何も感じなくなるのに、火葬されて、その後どうなるのか考えてしまいます。何も感じなくなる、自分の存在がなくなることに怖くなるというか、どうなってしまうのか先が分からないから不安に陥ります。考えても答えはでないので、気にしないようにしていますが、死を免れることはできないからこそ、「今、ここ」で体験できることを何もかも大切にしたいです。その中で色々なことを乗り越えるためにも、様々なジャンルの本を読んでいます。
 
【Q27】進路選択をするとき、何を基準として考えればよいですか。
【A】何を大切にしたらいいかということでしょうか。自分に問いかけてみることです。ようするに、誰かに言われたとか、友だちと同じ道を歩みたいとか、他者ありきで決めるものではありません。ただ、憧れのようなものはあってもいいです。しかし、自分が進んでいきたい道ですから、自分の中にある純粋な気持ちで決めていけばいいのです。やりたいことがあるなら、それを目指せばいい。受験科目や偏差値が基準ではないです。受験という関門があるなら、それを突破すべく無我夢中に勉強します。
 
【Q28】大人になって良かったことはありますか。大人より子どもの方が楽だし、嫌なこととか世の中のことを考えなくていいから大人より子どもの方が幸せで楽しいと思いますか。
【A】大人に任せたり、与えてもらったりすることが多く、色々な煩わしさや世間の柵を考えると、子どもの方が楽だなと思うことはあります。でも、与えられることより、自ら与えることができる方がより幸せだと思います。それに、幸せかどうかはその時点で感じることなので、子どもか大人かは関係ないのです。やっていることを純粋に楽しめたらそれだけで幸せではないでしょうか。
 
【Q29】外見に対する基準(かっこいい、かわいい)は誰が定めているのでしょうか。
【A】そのような一律の基準なんて勿論ありません。もしかしたら、友だち同士なら同調することはあるかもしれませんが、それがその人の真意とは限りません。自分がその人を素敵だなと思うかどうかだけのことですから、他者と同じ基準にはなり得ませんよね。他者をどう思うかは個々の感情(思考)です。逆に、誰にどう見られて(思われて)もいいのです。それで何かが変わるわけではありません。そのような他者の感情に振り回されてしまう人生では勿体ない気がします。あなたはあなたらしく生きていけばいいのです。あなたは今、生きて、ここにいるだけで、本当に素敵なのです。これは紛れもない真実です。

2022.6.3

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