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サブカル大蔵経280朝日新聞社編『コロナ後の世界を語る』(朝日新書)

緊急事態にお話を聞きたい方々。特に斎藤環の「会うことは暴力」は新鮮だった。

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【養老孟司】今の私の人生自体が思えば不要不急である。/解剖学の意味を尋ねるのは、普通は解剖学とはみなされないからである。p.17.20

 今の自分の生命の意味を考える。

【福岡伸一】ウィルスはもともと私たちのものだった。それが家出し、また優しく迎えています。なぜそんなことをするのか。それはおそらく、ウィルスこそが進化を加速してくれるからだ。p.30

 無駄な抵抗はやめよ、とのことです。

【角幡唯介】世界でただ一人というレベルで浮いていたのだった。(中略)いつの間にやら、この位相は逆転し、未来予測のできない時間を求めていた私が実はコロナ以前の予定のまま旅に出発して、逆に日常に生きていた他の全ての人々が、今目の前で何が起きるか分からないと言う未知なる現実に直面している。「あなたは今、世界で1番安全な場所にいる」とも妻は言った。p.43

 どんなSFよりSF的。

【五味太郎】「心」っていう漢字って、バラバラしてていいと思わない?心は乱れて当たり前。常に揺れ動いて変わる。不安定だからこそよく考える。もっと言えば、不安とか不安定こそが生きてるってことじゃないかな。p.52

 五味太郎さんのことばの感覚有り難い。

【ユヴァル・ノア・ハラリ】独裁の場合は、誰にも相談をせずに決断し、早く行動することができる。しかし、間違った判断をした場合、独裁者は誤りを認めたくありません。p.57

 誤りを認めない人のわかりやすさ。認める独裁者も怖いが。

【大澤真幸】人間は「まだ何とかなる」と思っているうちは、従来の行動パターンを破れない。p.89

 自分のことのようだ。

【斎藤環】非常事態で誰もが気づいた「会うことは暴力」。会議も、人と人が会うと、やっぱり話が早いし、効率が良い。何故かと言えば、暴力だから。この暴力の存在を私はコロナ禍の中で改めて自覚しました。私が日々している会議、授業、診察。それもまた暴力なのだなと。p.142

 本書の愁眉。会うこと、って本当にすべてチャラになるくらいいいことになりそうだけど、喜ぶ人の影で嫌だった人もいるはず、という視点は大事にしたい。〈暴力〉ということばの範囲が広がった。

【鎌田實】感染者に対し常に「ご苦労様」と言う姿勢で臨むことが大切です。そうすれば感染者は「退院した暁には、地域のために頑張ろう」と言う気持ちになってくれるでしょう。p.172

 至言だと思いたいが、実際の現場で、私は何を言ってしまっていただろう。

【坂本龍一】危機は権力に利用されやすい。最近、亡くなった清志郎が言っていた言葉をよく思い出すんですよ。「地震の後には戦争が来る」って。「気をつけろ」と彼は警告を発していた。すごいなと。p.186

 今の日本、これからの日本。

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