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Jリーグ最強のマーケティングコンテンツはこいつだ!

ご存知の通りnoteには有料無料問わず、サッカー特にJリーグ・クラスタの方が多く寄稿されています。中でも個人的に面白く拝読させてもらっているのがJリーグや各クラブのマーケティングに関するものです。実際に「中の人」の記事もあったり、とても興味深いです。今回は、それらのマーケティング談義にほとんど登場したことがなく、かつ、超強力なマーケティングコンテンツを、紹介したいと思います。

それが↑↑↑こいつです。写真左のイルカこと「ふろん太」くんではなく、右にいる白い物体「カブレラ」です。自分は熱心な川崎フロンターレのサポーターですが、フロンターレが好きな人以外はふろん太はまぁ見たことあっても、このマシュマロみたいなやつの存在すら知らないでしょう。

実は元々はこいつ、フロンターレのスポンサー企業であった日興コーディアル証券のキャラクターでした。当時は、頭の先っぽの水色の部分が黄緑色で「ピーカブー」という名前でした。「株式」の「カブ」を根菜の「蕪(カブ)」とかけたキャラクターです。頭の先が黄緑の葉っぱであれば、カブにも見えてきませんか?ピーカブーはスポンサー企業を代表して、ふろん太とともにホームゲームでフロンターレを応援してくれていましたが、日興コーディアル証券がSMBC日興証券に変わりキャンペーンも終了、キャラクターも消滅することになりました。とは言っても特別な思い入れこそなくても、毎試合いっしょに応援していた「仲間」がある日いなくはるのは寂しいものです。

そこがフロンターレのすごいところ。なんとクラブと企業とで交渉の結果、キャラクターの権利がフロンターレに譲渡されることになりました。その際に頭の先の黄緑の葉っぱ部分がフロンターレカラーの水色になり(蕪感は失われました)公募により新しい名前が「カブレラ」となったのです。ちなみにカブレラで検索しても、元西武ライオンズのカブレラ選手ばっかり出てきて、まだまだ知名度の低さがうかがえます。

そんな低知名度のカブレラのどこがマーケティング・コンテンツとして最強なのか?ですが、それは彼の投稿するInstagramがファンエンゲージメントのツールとして強力過ぎるのです。

↑↑↑がインスタのアカウントです。基本的にはKawasaki Frontaleのクラブオフィシャルのアカウントの運営をカブレラが担っているという形になっています。あまりに素晴らしい内容(もちろん川崎サポ視線ですが)なので、少し長くなりますが紹介させてください。

↑↑↑が「お初でーす」とある、記念すべき第一回目の投稿です。2014年の8月ですが、この頃はいわゆるクラブの裏側紹介的な、毒にも薬にもならない「他クラブでよくある」レベルの内容です。写真もマスコットの日常が中心になります。この時はハッシュタグも「#frontale」と1つだけ。

そのうちふと気がつくと、このアカウントが当時流行っていたハッシュタグ芸(今もまだある?)を完全に、そして絶妙に使いこなしていました。いわゆるハッシュタグを文章のようにとにかく大量につけまくるあれですね。こういうのって公式アカウントでは苦手なことが多いので「やるなぁ!中の人」と思っていました。

その頃、クラブのオンライン施策の中心にあったのはオフィシャルFacebookでした。ちなみにFacebookアカウントの開設はInstagramよりやや遅れて2015年の6月。週末の試合が終ると翌週のはじめに、その試合のハイライトとともに試合を振り返る長文のコメントがついていました。その試合で活躍した選手が影で苦労していた姿や、負けてしまった試合後の選手たちの悔しそうな様子など、スタッフの視点から見たバックグラウンドストーリーが素晴らしい文章で語られました。ただリザルトを紹介するだけでも、広告的な煽りコメントでもない、1試合1試合気持ちのこもった温かみのある文章で、試合後の楽しみの1つにしていました。

そして、ある日気がつくと、、、これは個人的な推測ですが、現在ではこのFacebookがカブレラのインスタに吸収合併されたような形になっています。現状、Facebookは淡々とオフィシャルな情報やDAZNのハイライト映像へのリンクを配信するのシンプルな形になり、カブレラがインスタを通じてエモーショナルな文章を投稿するようになりました。おそらくSNSの各メディアの特性による使い分けなどの理由から結果論として生まれたカブレラのインスタ投稿ですが、これが実に見事にはまっているのです。

内容は各試合で活躍した1人のプレイヤーをピックアップ。別にカブのキャラの写真を次々アップする需要が少ないことに気が付いたのでしょう、オフィシャルカメラマンの撮影した選手のかっこいい写真が選ばれています(最近ではほぼカブレラくんの姿はインスタ上にはありません)。そして、そのプレイヤーのその試合での活躍の様子や、日々の人となりなどのエピソードがカブレラによって紹介されるのですが、これがエモい。無理に説明するより実際に見てみてください。例えば↓↓↓に去年、キャプテン小林悠について書かれた投稿を引用します。

kawasaki_frontale☀︎
直近で2度のPK失敗を経験したユウくん( •́__ก̀ )ぼくは「2度あることは3度ある」って考えるより「3度目の正直」って捉え方をする。基本的にポジティブ思考だから一切気にしてなかったよっ(構造上、下を向きづらいということもあってね😎👌)もちろん「こういう時に限ってPKになったりするんだよなぁ〜」なんて知った口きいてたタイミングで、本当にPKになるとは驚いたし、さすがに緊張はした(o˘◡˘o)蹴る直前にアキくんに話をしたら「お前がうちのエースなんだから、お前が蹴れ」って言われたって話聞いたけど、そうなんだよね😊✊
ユウくんがぼく達みんなの思いがつまった川崎フロンターレのエースなんだもんねっ✨何でも一人でやれちゃう人なんてこの世にいないはず、それぞれちゃんと与えられた役割だったり、得意な分野ってのがあるはずっ。
そりゃ不得意なところだってあるけど、それこそみんなで支え合って、気付かないところでたくさんの人に助けてもらいながらやってるはずで(•̀ᴗ•́)و
フロンターレもそう💡選手だけじゃなく、相手を丸裸にするくらい分析しちゃうコーチくんがいたり、身体のケアをしてくれるトレーナー陣がいたり、周りにはすごい数のサポーターのみんながいてくれる( ˆОˆ )✨
その中でユウくんは、ゴールを決めるっていう仕事を担当してる訳で💪最後の仕上げのところだけに、外してしまったら目立って批判もされるかもだけど、それがエースなんだとぼく思う☺︎
ユウくんが外したなら仕方がない。ぼくはそう思ってたから✊
フロンターレでゴールをたくさん決めてくれた歴代のエース達もみんなそうだったってぼく聞いたことある!ものすごいプレッシャーをあえて自分にかけて、それに応えるために毎日毎日コツコツ練習してたんだって😌✨
決めたら大喜びして、外したら涙して。そういう姿をいつも見てるからぼく達は勝手に一緒に戦っている気にさせてもらってるんだなっ☺︎☆
ユウくんのゴール数が伸びれば伸びるほどフロンターレの勝点は積み上がっていく。今15得点。どこまで伸ばしてくれるか楽しみでしかないっ(๑˃̵ᴗ˂̵)و
先月の誕生日の時の投稿に書いたけど、J1リーグ通算100ゴールのお祝いはぼく勝手に準備進めてるからねっ✊🎉
ユウくん、これ見てるかわからないけど、小声で言っとくねっ💡「100ゴール達成、今シーズンでいいよっ(😎)」byカブレラ
☀︎
#小林悠 #丸顔仲間
#日本代表にもよく選ばれるようになって他クラブのサポーターからも注目されることが増えた
#PKを外した時も色々と言われてたかもしれない
#それだけ注目されてる証拠
#そんな時は今までもそうしてきたように毎試合ベストを尽くしていこう
#そんなユウくんをみんなで支えていこう
#副キャプテンのショウゴくんやリョウタくんやソンリョンくん達も居る 💪
#丸顔仲間のあべちゃんくんや神戸戦のように声かけしてくれるアキくんだっている 😊
#去年同様チーム全員の力で戦っていこうねっ !
#frontale #フロンターレ #kawasaki #川崎 #⚽️
#soccer #サッカー #jleague #Jリーグ #等々力

長い!けど熱い!サポーターなら、これを見て涙を流した人だって多いはずだ。自分はいつもカブレラに感動をもらっている。

このカブレラのインスタの何がすごいのかを考えてみたのですが、勝因は公式マスコットが書いているというところだと思うのです。これが普通のクラブの公式インスタだと、1スタッフの個人的な想いが強過ぎると「だれ?おまえ?」となるところが、カブレラの意見だと、個人的な想いや感想で許されてしまう。また、公式マスコットということはサポーターと同じクラブを応援する立場。視線が同じだから「そう!分かる!それ!」と共感性が高い。かわいらしいキャラクターゆえに顔文字や「ぼく」で始まるどこか子供っぽい言い回しも違和感がない。そしてもちろん「へー!そんなことがあったんだ?」って裏話も当然いろいろ知っている。時には「ふろん太に聞くところによると」なんてクラブの古い歴史の話もスムーズに引用できたりもする。

このノートを書いていて当たり前のことに気がついたが、スタッフたちはサポーターよりもっとコアな存在だ。プレイヤーとは違う形で、彼らもそのチームに所属している。自分たちの代表として戦う選手1人1人に思い入れは強くあるだろうし、勝敗は何より大事だ。ぶっちゃけそこに生活だってかかってるはずだ。運営スタッフという立場上表現できない気持ちが、カブレラの口を通すことで世の中にスムーズに出せる。なんとも、絶妙な立ち位置なんだと思うのです。当然、クラブスタッフもみんな読んでいるだろうから、このカブレラのインスタはインナーモチベーションのアップにも繋がっているだろう。連覇の影の立役者の部分だってあるのかも知れない。

ぶっちゃけスタジアムで手を振っているカブレラくんと、この文章を書いている「中の人」が同一人物なのかどうかも分からない。そして、うまくいってるのは文才とSNSの使いこなし術による部分が大きいとも思う。でも、いわゆる「中の人」が主催するファン・エンゲージメントツールとしてマスコットキャラの口を借りるというのは、フロンターレのようにうまくやることが出来れば、最強なんじゃないでしょうか?2019年1月現在、カブレラのインスタのフォロワーは55,000人。フロンターレの後援会の人数とほぼいっしょだ。しかし、毎回の「いいね」の数はまだ5000〜7000くらい。ブランディングツールとしてまだ使える余地もあるだろう。

内容はフロンターレ愛満載なので、他クラブのサポーターの方にはおもしろくもない話かも知れません。でも、それでも是非、いちど読んでみてほしい。

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