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川柳

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2022年1月の記事一覧

なけなし

少数の妙な砂炒めた数秒

出入りして差出人へ差し入れを

奇跡とか綺麗な椅子に寄りかかる

投げやりに投げかけた なけなしの声

佇んでただ澄んでいた町灯り

山径を経験 軽く怪力に

可能なら何かを歌う奇数たち

停まる町 汀に灯り佇んで

山径を経て軽快にする怪談

流転

お嬢様言葉を使うお嬢様

ひとごとのひとことことり ひとりごと

球体と雫が崩し解いた雪
きゅーたいとしずくがくずしといたゆき

サラリーマン川柳を書くサラリーマン

書き手から抜けていく街 手紙の手

ソファー見れど

酔いどれ身 不安な空を始動する

そら踊れ 素知らぬ顔で諳んじて

白ソファー見れど知らんぞファミレスなど

そして空見ればどれもが霙みたい

揺らした夕焼け

ゆるゆると柚子が湯舟でゆれている

ユーラシア大陸と言うらしい島

まざまざとさまざまなサンマ浮かべてる

人間に成れない人と慣れる人

伽藍堂 からんと鳴らす音がした

畦道の蛙の街に帰る道

天国

水面下 存在したいひとの影

夕陽を閉じてさくさくと歩いてく

達筆で耽美的に書くダンボール

地下鉄は天国みたいに眩しくて

全部なくなったあとに降る雪の音

ではないけど

短歌ではないけど短歌として読む

俳句ではないけど俳句として詠む

川柳じゃないけど川柳として書く

電話には出んわを電話越しで言う

人間じゃないけど人間として出る

言葉ではないけど言葉として聴く

生物じゃないけど生物として呼ぶ

生きていた

私達みんな日向のそばにいた

がらんどう からっとした空 茶道する

町並みにきみが夕日を差している

けろけろと帰る けろっとした顔で

僕らの指先で生きていた言葉

机の下

凩が机上に吹いて肌ざむい

プラネタリウムは地球で出来ている

お膳立てされ善い月に酔う宵よ

人の光 心は一人火を秘める

充電式

不幸中の幸い中の辛いこと

テレパシー 電信柱にシンパシー

曇天を飛んでん電動自転車で

ワンワンのお椀を追わんと終わんねぇ

身体のなかの電気を消して寝る

一月一日

ワンワンと走る一月一日に

ドーナッツ どうなったって 遠い夏

ドレミは逸らし 奴隷の身はソラらしい

文末の先で生まれる未来の木