新入社員所感2

 先日、先輩と営業外回りに出かけた。うちの会社でOJTの制度が出来たのが今年からだから、先輩たちも慣れない様子だ。何となく、気を使わせてしまっているようで居心地が悪い。俺は助手席で居たたまれない気持ちになっていたが、そんな俺を先輩は、他愛もない世間話を振っては和ませてくれた。そこで先輩からこんな話を聞いた。うちの会社には、社長曰く、姉妹のような会社がある。しかし、先輩からすると、そう思っているのは役員だけで、うちの会社はほぼ格下の扱いらしい。先輩は、その姉妹のような、格上のような、S会社と連携した業務を、ある年に任されることになった。組まされたS会社の社員はどこかボーッとしていたらしい。更に、S会社は車を使っていけないという規則があり、毎日の家までの送り迎えは、先輩が自分の車で行っていたのだ。何故自分はこんなことをしなければいけないのか。このボーッとしているS会社社員を毎日送り迎えする中、先輩は悔しさを滲ませた。S会社だけでない。先輩は言う。何の労いもなく、ゴミのように扱ってくるお得意様は他にもあると。だから響凱くんよ。俺たちこそは下請けに優しくしよう。下請けだからと言って、無下にしていいわけでは決してない。彼らがいなければ俺たちの仕事は回らないのだ。むしろ、普段から真心を込めて接していけば、いざとなったら彼らのほうで俺たちを助けてくれる。下請けには優しくしなければならない。
 俺は助手席に座りながら、背筋をシャンと伸ばす気持ちで、先輩の話を聞いていた。


 6月にWebの研修があった。俺と一緒に受けていたOさんは、中途で入った社員の方で、しかし俺より20も歳上である。なかなかガタイの良い人で、はじめこそ気圧されたものの、話し込んでみると穏やかな人柄であった。研修を経て仲良くなり、ある昼休みの時間に、彼についているという部下の方々を紹介してもらえた。以下、記す。
 1人はDさん。彼は元自衛隊で、長く勤めていたが、最近は色んな会社を転々と回っているらしい。彼は「色んな会社を見てきたから分かるよ。この会社は変な会社だよね。皆、他人の視線を気にしないんだよ」と言っていた。確かにそうだ。そういえば俺のOJTの先輩も身だしなみに気を使う人ではない。Dさんはフランクな人だが、時折元自衛隊員らしい眼光の鋭さを見せる。語り口調も、人生の悲哀を味わい尽くした、年の功を感じさせる。もう1人のMさんは大人しい人で、自己紹介をした後、黙って弁当にパクついていた。Oさんは「早くコロナが収まって君の歓迎会を開けたらいいね。いっぱい酒が飲めるなあ」と言った。

 ところで、先輩とOさんたちの紹介は済んだが、肝心の同じ課の仲間たちについてはこれといった説明をしていない。まだ会話をろくに交わしたことない人もいるが、補足として記しておく。
・I課長
 ダンディな課長である。俺のOJTの先輩Nさんと仲が良く、たまに一緒に帰っている。医者の奥さんがいて、高級住宅街に住んでいる。アラフォーだが、あまり歳を感じさせない若々しさがある。

・Yさん
 俺より一つ歳上の先輩。博士課程出身。俺より一個上だからまだまだ新入社員のはずなのだが、とても落ち着いている。仕事をしながら論文を書いているらしい。

・Jさん
 可愛い女の子。俺とは一言も会話を交わしたことがない。

・Tさん
 会社の中堅メンバー。よく出張をしている。すれ違っても挨拶を返してくれない。俺のことが嫌いなのだろうか。

・H所長
 事務所のトップ…のはずだが、影が薄い。余生を待つ身と言うと言い方が悪いが、あまり情熱を持って仕事に挑んでいる気がしない。大人しい。笑うと目尻に穏やかさが滲み出る。

・TT部長
 N先輩によると、めちゃめちゃやり手のキャリアウーマン。旧帝大出身。本について話しかけてくれたが、頭の回転が早いので、鈍い俺は彼女の会話のスピードについていくことができない。

だいたいこんな感じである。俺のいる福岡支社はもう1つ研修で一緒だったOさんたちのいる課があるのだが、そちらはあまり節点が無いので割愛しておく。

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