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私の中の温泉
会社に行けなくなってから8ヶ月経った。未だに辛い。未だに自分を責める時がある。でも、休み始めた時と比べて考えが変わっている。私はもう少しで回復出来るのかもしれない。
「頑張った。頑張りすぎた。」ふとそう思った。
今まで私はこうなった原因を作った私の行動や人物を全て責めていたけど、休んでいる期間じわじわ心が回復してきたみたいだ。責めに責めた。いじめの中心だったあいつも、それにくっついてたあいつも、それに踊らされてパワハラをしてきたあいつも、分かっていながら何もしてくれなかった会社も。全てを責めた。夢の中で何度も殴った。刃物で刺した。椅子で殴った。泣き叫びながらも自分は悪くないと、夢の中ですら謝らないあいつを何度も死ぬ寸前まで追いやった。
想像の中であいつは苦しい思いを何度もしているけど、現実では一切していない。そのギャップにまた怒りが湧いてくる。かけ流しもいい所だ。かけ流しでふと思ったのだけど、感情は温泉みたいなものなのかも知れない。私の中に湧き出た怒りと復讐の湯。熱くて入れたものじゃない。私は温泉が好きなものだから入りたくていつまでもそこにいたのだと思う。入りたいのに入れない。どうにもならないのにそこでじっとしていた。
休職をして8ヶ月。いい加減その温泉から離れようと思って歩き出した。フラフラと、進んでいるのかどうかも分からない途方も無い時間を過ごした。なぜあんな所でじっとしていたのか分からなくなった頃、新しい温泉を見つけた。何の湯か分からない。けどどうやら入れそうだ。入ってみた。少し涙が出た。
「頑張った。あの時すごく頑張った。」
自然に言葉が浮かんできた。そうだよ。私あの時頑張ったよ。いつの間にか夜寝られなくなって。明日が来るのが怖くなった。いつの間にか(明日はどんな陰口やいじめがあるんだろう)と毎日考えていた。通勤時毎日車の中で死に方を考えていた。会社に着くと呼吸が浅くなる。目が開かなくなる、表情筋は固まって笑顔がでない。ロッカールームで縮こまって静かに泣いた事も何度もある。インターバルの短い時間に罵られて泣いても、生徒に悟られないように笑顔で仕事をした気がする。何も無くても泣いた。帰り道は勝手に泣いてた。突然過呼吸も起こした。でもチャイムが鳴ったら指導員になった。一個人としての私ではなく指導員を演じた。毎日生きた。演じていた。会社の人達ですら私を責められる位、私がそんな状況と分からない位演じた。生徒が求めてくれた指導員の私を演じた。いじめられる位だ、それすら出来ない私に価値がないと思ってた。その私を、私が受け入れて癒す時が来た。
私の中で新しく見つけた温泉は癒しの湯だった。
頑張った。頑張れたんだ。すごい頑張りだったよ。もっと早くそこから居なくなって良かった。すごい頑張り屋さんだもん、そこまで出来る人だもん。すごい価値がある人だったよ自分。しかもいじめられる前は好きで指導員やってたよ。勉強するのも成長するのも大好きだったよ。めっちゃすごいじゃん。教育者になるべくしてなったんだよ。そりゃあ嫉妬されるよ。頑張ったよ。
なんて思ったのつい昨日なんですけどね。良かった。生きてていいみたいだ。
怒りと復讐の湯は未だにある。けどどこかにある。今はもうそこには行かないから分からない。それに戻りたくても戻れないと思う。フラフラしている時、友達や先輩達がいつの間にか導いてくれていたから。私は足を右、左、右…って交互に出していただけでどっちに向かってるかなんて分からなかったけど、周りの人達が背中を押してくれたり、身体を支えてくれたりしたから辿りついた。
もし同じ思いをしている人がいたら、とりあえず生きて。毎日死なないで。それだけでいつか癒される時が来るから。周りにそういう人がいないと思ってもそんな事はないし、いなかったら私がなる。とりあえず生きてください。
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