【小説】奔波の先に ~聞多と俊輔~ #5
2 出会い(3) 翌朝聞多が誰と行くのか気になった俊輔は、門の脇の木陰に身を潜めた。そこに現れたのは山縣小輔だった。少し遅れて聞多がやってきた。
「待ったか」
「いえ、ここにはさきほど。それに時間があればちょっと頭を捻ってつくるのも楽しいですから」
「世の中はなにか常なるあすか川昨日の淵ぞ今日は瀬になる」
「それは?」
「古今集じゃ。お主まだよう知らんのじゃな。貸してやる。ここで待ってろ。良いものじゃ」
山縣は自分が歌詠みだと言った手前、古今集を知らないといけないことは