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【小説】奔波の先に〜聞多と俊輔〜幕末編

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小説 奔波の先に〜聞多と俊輔〜幕末編 をまとめました
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記事一覧

【小説】奔波の先に ~聞多と俊輔~#34

7 黒船と砲台(5)  世子定広は、船木で講和の指揮を取ることになった。講和交渉組に杉も合流…

瑞野明青
2年前
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【ライナーノーツ】奔波の先に ~聞多と俊輔~幕末編完結に

ある時の聞多と俊輔の会話 聞多  俊輔、あんなにわしのこと怒ったりしとったのか 俊輔  …

瑞野明青
2年前
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【小説】「奔波の先に」の先にはどこに行くんだろう(参考文献リスト) 

 井上馨に興味を持って、とりあえずこれだけ読みました。 どこに向かうかどこまで続けられる…

瑞野明青
2年前
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【小説】奔波の先に~聞多と俊輔~ #1

プロローグ(1) 麻痺をして足腰に力が入らず、あんなに重かった体が軽い。なにしろここは暗…

瑞野明青
2年前
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【小説】奔波の先に~聞多と俊輔~ #2

プロローグ(2) 久しぶりの萩は懐かしかった。とは言ってもここに住んでいたといえるのは明…

瑞野明青
2年前
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【小説】奔波の先に~聞多と俊輔~ #3

2 出会い(1)「まずは僕から」  俊輔は続けて言った。 「初めの事は聞多覚えていないから…

瑞野明青
2年前
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【小説】奔波の先に ~聞多と俊輔~ #4

2 出会い(2)  その頃わしは志道家へ婿養子にいき、洋式の兵錬の披露の際お褒めに預かり、江戸への遊学を勝ち取った。江戸にて蘭学を学んでいたが、桜田門外の変の後、殿である敬親公のお小姓に抜擢され、名乗りも志道聞多と改めた。聞多という名は殿からいただいた。多くを聞いて多くを知るとか何とからしい。  江戸は刺激が多く心がはずんだ。ここ最近は浅草まで行って芝居を見るのが楽しみだ。たまにはと来た品川宿は下屋敷から比較的近く、花街もあって猥雑さにも華やかさにも満ちていた。今までは煩い大

【小説】奔波の先に ~聞多と俊輔~ #5

2 出会い(3) 翌朝聞多が誰と行くのか気になった俊輔は、門の脇の木陰に身を潜めた。そこ…

瑞野明青
2年前
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【小説】奔波の先に ~聞多と俊輔~ #6

出会い(4) 夕刻、俊輔は桂の部屋に呼ばれた。襖の前で「伊藤俊輔参りました」と声をかけた…

瑞野明青
2年前
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【小説】奔波の先に ~聞多と俊輔~#7

尊皇攘夷への道(1) 「時代は僕らをのんびり過ごさせてはくれなかったんだ。」  俊輔は説…

瑞野明青
2年前
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【小説】奔波の先に ~聞多と俊輔~ #8

尊王攘夷への道(2)  その頃聞多は自室で大の字になっていた。手元には航海遠略策、床の上…

瑞野明青
2年前
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【小説】奔波の先に ~聞多と俊輔~♯9

尊王攘夷の道(3) そんな中で聞多は殿の御小姓から、世子様(お世継ぎの養子)の御小姓にお…

瑞野明青
2年前
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【小説】奔波の先に ~聞多と俊輔~♯10

尊王攘夷への道(4)  こちらの二人は苦笑しながら、もう一組を見ていた。しだいに高杉も聞…

瑞野明青
2年前
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【小説】奔波の先に ~聞多と俊輔~♯11

尊王攘夷への道(5)  そんな話をしてしばらくたったころ、高杉は同士と承認する者たちを土蔵相模に集めた。聞多もその中に入っていた。  京から江戸に来ていた久坂玄瑞や品川弥二郎などとは一連の連絡会合などで親しくなっており、立派に同士と認め合うようになっていた。逆に俊輔は京に行っていてこの企みには参加していない。 「ようし、我々もいよいよ攘夷を決行する。薩摩に遅れるのは遺憾だが、やらねば長州の攘夷の旗は偽物となってしまう」  高杉が高らかに、熱っぽく演説を始めた。 「鎌倉に横