【小説】奔波の先に ~聞多と俊輔~ #6
出会い(4) 夕刻、俊輔は桂の部屋に呼ばれた。襖の前で「伊藤俊輔参りました」と声をかけた。入れと声がかかり、襖を開けてなかにはいった。そこにはくつろいだ桂がいて、笑いながら酒を勧めた。
「桂さん、もう飲んでいるんですか」
ため息を付きながら俊輔は桂の前に座った。
「面白い話が来てるんじゃけど、俊輔、断っておいたぞ」
「酒はいいです、飲みたい気分じゃないんです。えっちょっと待って下さい。面白い話を断ったって。どういうことですか」
「あぁ君が気に食わん相手からの申し出じゃった